——昨年は初のワンマンツアーも成功させて、多数のフェスに出演。今年は自身最大規模のワンマンツアーを控えたなきごとですが。なきごととしての初ステージって覚えてますか?
水上 えみり(Vo, Gt)始動ライブは2018年10月4日、新代田FEVERでやった自主企画だったんですが。すっごい覚えてるのは、次の日にぎっくり腰になったことで(笑)。気合い入れすぎて頭ブンブン振って、腰から折りたたんでノッてたら、ぎっくり腰になっちゃいました。
——そんだけ全力でやり切れたってことですよね。岡田さんはいかがでした?
岡田 安未(Gt , Cho)思ったよりたくさんの人が来てくれて嬉しかったというのが、率直な感想でした。私はあんま緊張しないので、「たくさんの人がいるから見せつけてやる!」って気持ちで挑んで。お客さんの目や表情を見て、「良いスタート切れたな」と思ったのを覚えてます。
水上 あと若かったのもあって、いまより少しトガってて。もちろん、ライブに来てくれることに「ありがとう」って気持ちはあるんですけど。当時は「好きだから来てるんでしょ? お互い好きに楽しもうよ」みたいな、生意気な感じでした(笑)。新しいバンドを始めたての頃って、フロアの床が見えるくらいお客さんが少なかったりして。みんな私たちのことを認知してないし、曲も知らないし、全員がノッてるって状態なんてないのに、なぜか生意気で。あれはあれで経験しておいて良かったなと思うんですけど、自分たちのやりたいことだけやって、やり逃げみたいなライブをやってました。みんながライブを見に来るというより、曲を聴きに来てるってイメージだったので。わざわざライブハウスに来てくれるということを信じすぎてるというか、生音を信じすぎてるというか。
──その後、コロナ禍が訪れて、ライブが出来ることが当たり前じゃないことに気付いて。
水上 そうですね。私、コロナでライブへの考えが大きく変わったところがあって。「ライブが出来ることが当たり前じゃない」って気持ちも、もちろんあったんですけど。ライブハウスが叩かれたりして、演る側も観る側も不安がある中で、それでも足を運んでくれる人たちに対して、それまで以上に対価を与えたいという気持ちが芽生えて。それまではお客さん放任型だったんですけど、みんなと一緒に作るライブというか。「あなたが来てくれたから、今日は成り立ってる」ってライブにしていきたい気持ちがどんどん強くなっていって。ライブをみんなと一緒に楽しむスタイルに変わっていってる感じはします。
──そして、そこで思ったことを、コロナが明けた現在も思えていて。
水上 コロナが明けてからは、ライブの客層がガラッと変わった気がしていて。サーキットとかフェスに出演させてもらった時、「コロナが明けたから、やっとライブに来れました!」みたいな子もたくさんいて。あの時に行かない選択をしたことも、私は正解だと思うので。ライブを一緒に楽しむスタイルを現在もやれてることで、そういった子たちのあの頃を正解にしてあげたいと思っているんです。
──なるほど。水上さんの現在のライブへの向き合い方が、すごく良く分かりましたし。コロナ禍も諦めずにライブをやり続けた成果が、いま実を結んでいるんだと思います。
水上 私たちの場合、活動を始めてから1年弱でコロナが来たっていうのもあるんで。諦めるって選択肢は、そもそも自分の中になくて。いま5周年を迎えて、6年目に入ったんですけど。自分のやりたいこともそうだし、伝えたいこともそうだし、バンドとして見たい夢もまだまだたくさんあって。例えば、コロナがまた来たとしても、きっと私たちは諦めないし。「この状況で、どうもがいていくか?」ってことを考えると思います。
──なきごとはコロナ禍でも楽曲を作り続けて、ライブもやり続けて。昨年の1月には、ひとつの集大成となるアルバム『NAKIGOTO,』をリリース。アルバムリリース以降というのは、なきごとにとってどんな期間でしたか?
水上前回のフルアルバムのタイトルが“NAKIGOTO”の後に“,(カンマ)”が付いていて。「このフルアルバムをひとつの区切りにしたい」という、私達の意思を表示していたんですが。その後、曲を作る時に初めてアレンジャーさんを迎えたりとか、それ以前にいままでにない、なきごとの曲がどんどん出来ているかな?と思ってて。