──今年8月12日にアーティストデビュー10周年を迎える心境から聞かせてください。
早見沙織(以下早見)あっという間だったなぁって思いますね。最初のシングル「やさしい希望」をリリースした当時のことを思うと、すごく前のようにも感じますけど、10年やってきたよっていう数字だけ見ると、本当にあっという間だったなと思います。
──ご自身にとってはどんな10年間でしたか?
早見声優さんの声のお仕事とは違う、自分にとってのもう1つの軸みたいなものができた10年でした。2015年8月に種を植えて、お水をあげながら、どんどん育てていって。いろんな栄養をもらいながら大きくしていった10年だったなと思います。
──この10年間を振り返って、特に印象的な出来事や転機になったことはありますか?
早見5〜6年目ぐらいのときにコロナがあって、音楽ももちろん、自分のお仕事の全部がストップして。そこで、音楽に関して言うと、自分がどんな表現をこれから積み重ねていきたいかっていうのを改めて考えるきっかけが生まれた。それ以降、活動テーマを文字にして表してきて。
──2021年から『孤独や生きづらさを感じる人の心に寄り添い、光となる音楽を届ける』という明確なテーマを掲げてきました。そして、2023年5月に3枚目のアルバム『白と花束』をリリースして、全国ツアーも開催しました。
早見アルバム『白と花束』を引っ提げてライブツアーをしたっていうのは、自分にとってもすごく大きな経験と財産になっていて。その時、地方にもいっぱい行かせていただいたし、ファイナルの東京国際フォーラム ホールA公演は、2017年の『JUNCTION』以来2度目の、自分史上最大の規模だったんですね。生で見てくださる各地のお客さんに、ライブという場を通じてコミュニケーションするっていう機会は……大きなツアーとしては、結構、久しぶりだったんです。だから、ここ数年は、今、ここにいて聞いてくださる方と、どうやってこの瞬間により良い音楽を作り上げていけるかっていうことをすごく考えてたんですね。
──「光の集合体である白」を表現し切った後の2年間の音楽活動が気になっていました。リリースはそんなにしてないですが、ライブに意識がいってたんですね。
早見そうですね。私にとっては、怒涛の2年間で、曲自体はいろいろと制作していたんですよ。結果的に2025年はライブが多い年になっているんですけど、まず、1月にオーケストラのコンサートがあって。3月に『セメLive Vol.1』って銘打って、既存の曲をたくさんアレンジするような、割と攻めたチャレンジをするライブがあって。その『セメLive Vol.1』の時に新曲を何曲か歌わせていただいてて。ちょっと区分けが難しいんですけど、過去に自分が作っていたデモをこのライブ用に編曲してもらってお届けする未発表曲を2曲作って。完全新曲として準備した1曲と計3曲をツアーを巡る中で育てていくっていうのがあって。だから、2024年は2025年のライブに向けてずっと制作していた1年だったんですね。