筋肉少女帯、めくるめく楽曲世界に陶酔!『筋肉少女帯小説化計画』出版記念ツアーファイナル公演をレポート

ライブレポート | 2025.07.11 20:00

筋肉少女帯ツアー2025春!筋肉少女帯小説化計画
2025年6月13日(金)東京国際フォーラム ホールC

「どこのロックバンドに本が出て、“出版記念”でツアーやるバンドがいますか!?」

最初のMCで観客に問う大槻ケンヂ(Vo)だったが、確かにそんなロックバンドは聞いたことがない。だがしかし、逆に問うと“バンドを題材とした小説”という無茶なお題に、著名作家がこぞって参加して。一冊の本を作り上げるなんてことが出来てしまうロックバンドが、筋少のほかにいるだろうか!?

5月に発売された小説集『筋肉少女帯小説化計画』の出版を記念して全国4箇所を回った、筋肉少女帯のツアー2025春!『筋肉少女帯小説化計画ツアー』ファイナル公演が、東京国際フォーラム ホールCで行われた。「バンドブームじゃないんだから!」とオーケンも驚いていたが、大会場での開催となったこの日のライブもソールドアウト(他公演もすべてソールドアウトだった)。

そんな事象を見るだけで、他のロックバンドと一線を画す筋少の活動や作品たちが、ブームや時代に関係なく、長く深く愛されてることがよく分かるが。小説集に参加した作家陣の愛に応えるべく、それぞれの作家さんが題材とした楽曲を軸に構成されたこの日のライブを見て、筋少の多面的な魅力や奥深さ、長く深く愛される所以に改めて気付かされた。

「週替わりの奇跡の神話」をSEに、超満員の観客のペンライトの光と歓声に迎えられて登場したメンバー。ファンファーレのようなイントロが高らかに鳴り、「サンフランシスコ」でライブの幕が開くと、疾走感と切迫感のある曲調とドラマチックな展開が気持ちを高ぶらせ、ど頭から会場の盛り上がりは最高潮!

大槻ケンヂ(Vo)

橘高文彦(Gt)

内田雄一郎(Ba)

本城聡章(Gt)

MCではツアーファイナルをこんな大きな会場で迎えられること、小説集が出版されたことの喜びと、この日のライブが2曲まで動画撮影OKであることを告げたオーケン。綺麗で大きな会場に終始ごきげんでお喋りすると、小説集では藤田和日郎の表紙装画のモチーフとなった「あのコは夏フェス焼け」へ。仮面を剥ぎ取り不敵な笑みを浮かべる、セーラー服姿の少女。この日のライブのバックドロップにも使用されていたイラストや歌と演奏から、さまざまな物語を想像させるこの曲が、この特異なライブの入口に最適。

続いて、盟友である人間椅子の和嶋慎治が題材とした「福耳の子供」。妖しく不思議な楽曲世界に包まれてると、悲鳴とも泣き声ともとれる橘高文彦(Gt)のギターがおどろおどろしさを増幅。さらに滝本竜彦が題材とした「レティクル座行超特急」と続き、遥かなる銀河へ向かう超特急に乗車。列車が突き進むような力強く推進力のあるビート、敬礼ポーズで車内アナウンスするオーケン。楽曲ごとにガラリと変わる世界観も、不思議とスッと入り込めて。まさに短編集を読むように、めくるめく楽曲世界に陶酔出来るのも筋少ライブの面白さ。

MCでは広い会場を改めて見回して、「筋肉少女帯、人気ロックバンドになった気がする。筋少、キテる? いや、キテないと思うけどなァ。どこでも聞かないよ!?」と嬉々として話すオーケン。上機嫌でツアーを振り返り、余計なお喋りもたくさんして。「OASISの“Don't Look Back in Anger“みたいに、みんなで歌おう!」という無茶振りから、「香菜、頭をよくしてあげよう」へ。小説集では、オーケン自らが題材にして短編小説を書いたこの曲。小説を読んだ後というのもあって、香菜の姿が頭の中にいつも以上に鮮明に映り、微笑みかけてくるからたまらない。<香菜、君の頭僕がよくしてあげよう>のフレーズにニヤリとしながら、小説集の“読んでから聴くか、聞いてから読むか――”の煽り文の意味も理解する。

大槻ケンヂ(Vo)

続いて、<キミがサンフランシスコに行くなら>とオーケンの語りで始まった曲は、「SAN FRANCISCO(エピローグ)」。1998年リリース、筋少のベスト盤『SAN FRANCISCO』収録。「サンフランシスコ10イヤーズ アフター」に続くラストナンバーとして収録された幻の名曲だ。小説集で題材にされている「サンフランシスコ10イヤーズ アフター」は演るだろうと期待しつつ、1曲目の「サンフランシスコ」がその伏線になっていることは察していたが、まさかこの曲まで聴けるとは! 橘高の切なく胸を締め付けるギターがリードする、インストナンバー。あれから年を重ね、ギタリストとしての風格や重みと深みを増した橘高のギタープレイは圧巻のひと言。

橘高文彦(Gt)

そして、前半戦ラストは、辻村深月が題材とした「中2病の神ドロシー」。アップテンポな曲調に乗せて歌うのは、“25年見てたそのバンドはいなかったのさ”という不可思議な物語。客席にヘドバンが波打つのを見ながら、「この演奏を終えた筋少が、そのままドロンと消えてしまったら!?」と思わず妄想してしまう。あと、オーケンの歌がやけに調子良さそうに見え、声がよく出てるのは、広い会場で気分良く歌えてるからだろうか?

休憩を挟んでのライブ終盤は、楽器を置いたメンバーが椅子に腰掛けて、のほほんと話す長尺MCから、橘高&本城聡章(Gt)がアコギを抱えて、アコースティックコーナーへ。オーケン&内田雄一郎(Ba)のツインボーカルで「ベティー・ブルーって呼んでよね」を仲睦まじく歌うと、「悲しきダメ人間」を披露。会場が温かい空気に包まれたところで、再びバンド編成に戻り、後半戦が本格スタートする。

本城聡章(Gt)

内田雄一郎(Ba)

ライブ後半戦、一瞬の静寂から始まった曲は、柴田勝家が題材とした「サンフランシスコ10イヤーズ アフター」。発表から27年、なんと今ツアーでライブ初披露となったこの曲。美しく丁寧な演奏が鮮やかな風景を描くと、たっぷり感情を込めたオーケンの歌と語りが主人公の様々な表情を見せ、会場を包み込む壮大な楽曲世界を構築したこの曲。楽曲後半、物語のクライマックスを描く熱の入った歌と演奏に興奮と感動が押し寄せ、心と身体が震えると同時にツーッと涙がこぼれた。こんな名曲がライブで披露されていなかったこと、この楽曲にまつわる物語、そして現在の筋少だからこその表現力や説得力――。ライブで初めて観るこの曲に、筋少をずっと追い続けてた人には万感の想いがあっただろうし、感慨もひとしおだったことだろう。

そしてライブもクライマックス。「イワンのばか」でアグレッシブなパフォーマンスを見せると「踊るダメ人間」のダメジャンプで一体感を生んで。ペンライトの光がフロアを埋める中、「50を過ぎたらバンドはアイドル」を披露という鉄板の流れから、本編ラストは、空木春宵が題材とした「ディオネア・フューチャー」。“ディオネア=ハエトリグサ”をモチーフに愛を歌うこの曲が未来に仄かな光を灯し、ツアーを激しく美しく締めくくった。

アンコールは「秋のツアーで会いましょう」と告げ、「釈迦」で再びブチアゲて、大団円でフィニッシュ。この日、次のアクションとなる10月7日(火)神奈川・川崎 CLUB CITTA' から始まる、秋ツアー『筋肉少女帯ツアー2025秋! 医者にオカルトを止められた男がサーチライトを照らす!』の開催も発表した筋肉少女帯。東京公演は、10月25日(土)豊洲PITにて。28年ぶりという仙台ワンマンも含む、秋のツアーも楽しみだ。

SET LIST

01. サンフランシスコ
02. あのコは夏フェス焼け
03. 福耳の子供
04. レティクル座行超特急
05. 香菜、頭をよくしてあげよう
06. SAN FRANCISCO(エピローグ)
07. 中2病の神ドロシー
08. ベティー・ブルーって呼んでよね
09. 悲しきダメ人間
10. サンフランシスコ10イヤーズ アフター
11. イワンのばか
12. 踊るダメ人間
13. 50を過ぎたらバンドはアイドル
14. ディオネア・フューチャー

ENCORE
01. 釈迦

公演情報

DISK GARAGE公演

筋肉少女帯ツアー2025秋! 
医者にオカルトを止められた男がサーチライトを照らす!

2025年10月7日(火)神奈川・川崎 CLUB CITTA’
2025年10月13日(月祝)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
2025年10月18日(土)大阪・なんば Hatch
2025年10月25日(土)東京・豊洲 PIT
2025年11月1日(土)宮城・仙台 PIT

Support member Pf.三柴理 / Dr.長谷川浩二

全席指定¥8,800(税込・ドリンク代別)※名古屋公演は指定席・1F後方スタンディング

■プレイガイド先行受付
2025年7月12日(土)12:00~2025年7月27日(日)23:59まで
e+(イープラス)
チケットぴあ
ローソンチケット

 

■チケット一般発売日
2025年8月2日(土)

INFO

小説集『筋肉少女帯小説化計画』
KADOKAWAより2025年5月16日発売

 

【執筆陣】
大槻ケンヂ「香菜、頭をよくしてあげよう」
辻村深月「中2病の神ドロシー」
和嶋慎治「福耳の子供」
滝本竜彦「レティクル座行超特急」
柴田勝家「サンフランシスコ10イヤーズ アフター」
空木春宵「ディオネア・フューチャー」

 

【表紙装画】
藤田和日郎

 

定価:¥2,090(税込)

  • フジジュン

    取材・文

    フジジュン

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  • 撮影

    宮家秀明

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