アルバム『NAKIGOTO,』をリリース後からの変化とは
──言葉にするのは難しいと思いますが、具体的にはどんなところが変わってきました?
水上自分はやっぱり曲を作ってるので、歌詞の話になっちゃうんですけど。前までは内向的な歌詞が多かったのが、ちょっとずつ外に向いてるところがあって。詞的な表現でいうと、ちょっと分かりづらい表現をしていた節があるんですけど。最近は分かりやすく分かりづらい表現をできるようになってきているというか……分かりますかね?(笑) この言葉、掛かってるのかな? とかが、歌詞を見て分かったり。このメロディと歌詞から、こういう表現になってるんだって分かるような。そんな作品に段々なってる実感があります。自分自身のスタイルとして、分かりやすすぎる言葉とか、直接的な表現が苦手なんですが。その分、自分なりにいろんな人に聴いてもらうため、下手くそなりに色々工夫をしてて。分かりづらくなりすぎず、ちょっと深掘りしたら理解してもらえるような、いい塩梅を取れるようになってきてる感はあります。
──それはたくさん曲を作っていく中、初めて見る人の前でライブをしていく中で、曲を届ける人、届けたい人が明確になっていって。より伝わる方法を模索していった結果だったんですかね。
水上ライブに足を運んでくれた人と、音源を聴いてくれてる人、歌詞をしっかり読んでくれる人って、届くフェーズが違うと思ってて。そのどれもに対して、少しずつでもちゃんと届けられているのかな?と思うんですけど。ひとつ挙げるとしたら、ワンマンをやったことが大きいかも知れないですね。去年の4月30日に初めてのワンマンをやって、パンパンの渋谷クラブクアトロで、なきごとが好きな人しかいないっていう空間を体感してしまったら、「なきごとってすごく愛されてるし、こういう人が聴いてくれてるんだ」っていうのが目に見えて分かったし、あの経験はすごく大きかったと思います。
──岡田さんは、フルアルバム以降の進化変化を感じるところはいかがですか?
岡田曲作りの仕方やレコーディングの仕方がガラッと変わって、新しいことに挑戦する日々でした。あと、私も4月30日に初めてワンマンをやったことが、自分の気持ち的にすごく大きくて。力強い味方の記憶が出来たことによって、自分の気持ちを保っていられるというか。ちょっと落ち込んだ時にも、「こういう人たちが待ってくれているんだ」と思えるし。すごく楽しかったから、「こういうライブをずっとやっていきたいな」って気持ちを日々、思い出させてくれています。
──“力強い味方の記憶”ってすごく良いですね。ここからのモチベーションにもなるだろうし、心が折れそうになった時に力になってくれるだろうし、すごく心強いですね。そんな期間を経て完成した最新EP「素直になりたい」は、どんな気持ちで臨みましたか?
水上前回の7枚目のシングル「君と暮らしの真ん中で」を作った時、「ヤベエやつ作っちゃった!」と思ったんですよ(笑)。自分の中で表現したいこともすごく入ってるし、だんだん素直になってきている節があるなと思ってて。さっき言ったみたいな、分かりやすくしたくない自分はいるんですけど、自分の素直な気持ちを伝える言葉はちゃんと伝えたい。特にステージの上にいる時は、ありのままの自分でいたいと思っているので。「書く曲に対しても、素直でありたい」というのは思っているんです。だからこそ、7枚目を書いた時、「それが出来てきているな」という実感がちょっとあったし、「やばい、8枚目はどうしよう!?」とも思ったんです。
──良いのが出来すぎちゃったから、その先を考えてドキドキしちゃって(笑)。
水上でも一度、原点に立ち返ることが大事だとも思ってて。今回、構成というか、内容の濃さが1stシングルの「nakigao」にちょっと近い感じになってるんですよね。なので、それはそういうことだと思っていて。なきごとが7枚目、8枚目を経て、どんどん変わっていくけど。根底にある伝えたいこととか、自分の中にあるものとか、ライブハウスを信じて欲しい気持ちとか、そういうのは変わらずにある。だからこそ、8枚目はこういう形になったんだろうなと思ってます。
──経験を重ねて、歌や演奏や作詞作曲のスキルも上がって。表現方法も変わってきているけど、根幹のところは変わっていなんだということを、自分でも改めて気付かされたと。
水上そうですね。秋口からワンマンツアーを回ってたんですけど、そこでより一層、自分の伝えたいことを強く伝えられたというのもあって。それが5周年を迎えたツアーだったので、「なきごとをいままで愛してくれてありがとう」って気持ちを込めながらツアーを回る中で、再認識していったところもありますね。「なきごとって、そもそもどういうバンドなんだろう?」とか、「私はなきごとのなにが好きなんだろう?」とか、改めて考え直したし、言語化出来ていなかったところを言語化しようとして。
──ワンマンをやることで、自分たちともう一度向き合うタイミングにもなったんですね。
水上はい。だから、このタイミングでワンマンをやれたことはすごく大きかったですね。それまでは「ワンマンはまだ早いかな?」って言ってたんですけど、ワンマンをやるたび、「もう、ワンマンしかやりたくない!」って言ってます(笑)。ワンマンの良さを堪能しちゃいました。
岡田私はワンマンだと、リハーサルをやった後にすぐ本番なんで、忙しいなっていうのもあるんですけど。人見知りなので、会場内にお客さん含めて、私たちのチームの知ってる人しかいないワンマンは、すごく安心して一日過ごせるのが本当に嬉しくて。私もワンマンしかやりたくないです(笑)。仲良いバンドと対バンしたり、興味あるバンドと対バンして仲良くなりたいって気持ちもあるんですけどね。あまのじゃくなんです。