銀杏BOYZ、完全覚醒!7年ぶりのバンド編成で見せた進化と爆発力、大熱狂の東京ツアーファイナルをレポート

ライブレポート | 2025.07.17 19:00

銀杏BOYZ 昭和100年宇宙の旅
2025年7月8日(火) Zepp DiverCity(TOKYO)

銀杏BOYZ、完全覚醒である。

それを物語るように、峯田和伸(Vo/Gt)はライヴ序盤にこんなMCを挟む。「念願叶って、この5人ででっかい音でバーン! 客席グチャグチャグチャ、ヴェーッ!みたいな。やっとそういうライヴができるようになって、本当にこの1か月間はこのために音楽やって良かったなと」

念願叶った、というのはコロナ前と変わらない、非日常のライヴができるようになったことを意味している。振り返れば、銀杏BOYZはコロナ禍の2020年10月に最新4thアルバム『ねえみんな大好きだよ』発表後、全国ツアーに出るはずだった。それが叶わず、2022年にアコースティックライヴツアーを行うなど、一寸先の見えない社会情勢に神経を擦り減らしながら、粛々と音楽活動に励む日々が続いた。

そして、銀杏BOYZが2018年以来、7年ぶりにバンド編成によるワンマンツアー「昭和100年宇宙の旅」を実施。ここではツアーファイナルにあたるZepp DiverCity(TOKYO)公演の模様をお伝えする。開演前BGMはツアー名に引っ掛け、峯田所有のレコードからスマホで直録りした昭和曲が流れ、18時33分に暗転した後、「アーメン・ザーメン・メリーチェイン Remix ver.」でライヴは始まった。山本幹宗(Gt)、加藤綾太(Gt/Cho)、藤原寛(Ba/Cho)、岡山健二(Dr/Cho)がステージに揃い、ダンサブルかつドリーミーにアレンジされた同曲でフロアを揺さぶる。「銀杏BOYZ、お台場をぶっ壊します!」と峯田が宣言すると、「若者たち」、「NO FUTURE NO CRY」、「大人全滅」、「SKOOL PILL」と凄まじい熱量で襲いかかる。感情ぐちゃぐちゃの峯田のシャウトは観る者の心にナイフを突き立てる狂気を発揮。また、ノイズもパンクも飲み込んだ演奏は誤解を恐れずに言えば、ラウド・ロックにも引けを取らない破壊力でド頭からぶっ飛ばされた。

加藤綾太(Gt/Cho)
山本幹宗(Gt)
藤原寛(Ba/Cho)
岡山健二(Dr/Cho)

ご存知のように、銀杏BOYZは初のアメリカ西海岸6ヶ所を回るツアーを今年3月から4月にかけて行った。そこで得た経験がかなり大きかったのではないか。日本語が通じない国で言葉を超えて届けられるものは、演者のエモーションしかない。そこに焦点を当てた振り切れ具合は、過去のライヴと比較してもズバ抜けたものを感じた。次の「エンジェルベイビー」からテンポを落とし、メロディに重きを置いた楽曲が並ぶ。「夢で逢えたら」に入ると、フロアをしっかり見つめて歌う峯田の姿が印象に残った。「恋は永遠」で甘酸っぱい美メロを振り撒くと、第一部のラストに「夜王子と月の姫」を披露。アコギを持ち、峯田が歌い始めた瞬間に歓声が沸く。少年のようにキラキラした声色が心に沁み入る。GOING STEADY時代の楽曲だが、いい曲は微塵も風化しない。

ステージに紗幕がかかると、スクリーンにアメリカツアーのドキュメンタリー映像が差し込まれる。NIRVANAのカート・コバーン自宅の隣にあるヴィレッタ・パークで、お墓代わりとなっているベンチに峯田が訪れたり、ライヴ後に映画評論家・町山智浩氏とハグするシーンなどが流れ、第二部へ。「二回戦」が始まるや、UCARY & THE VALENTINEがキーボード兼コーラスとして参加する。「漂流教室」を経て、未発表の新曲をプレイ。打ち込み色が強く、女性コーラスも映え渡り、過去曲とはまた質感の違うナンバーとして響く。割とストレートに歌う峯田の声も新鮮であった。それからインダストリアルかつサイケな雰囲気を放つ「金輪際」に繋ぐ流れにも引き込まれる。

UCARY & THE VALENTINE

ここで、大阪で音楽イベントを企画制作していた落合氏(峯田の古くからの友人)が不慮の事故で亡くなったことに触れ、「一番ビックリしたのは落合くんだもんね。」「俺は曲を作り始めたのは10代だけど、聴いてくれる人がいるから、自分の歌が跳ね返ってくるわけで。何年もかかったけど、ようやくあなたたちお客さんを掴むことができた。歌いたい人はどんどん歌ってください」と告げ、「ナイトライダー」を披露。「キミはぼくのうた〜♪」と優しく歌い出すと、観客もそれに続き、曲が進むにつれ、峯田の目には光るものが滲み出る。さらに「新訳 銀河鉄道の夜」に移ると、満杯のフロアからすすり泣く声が筆者には聴こえた気がした。この2曲の流れはあまりにも感動的だったから。

後半戦に入り、「人間」を挟んで、峯田は「ロックはあっさり殺された、1994年シアトルのヴィレッタ・パークで。銀杏BOYZのこのライヴは殺されたロックを蘇らせる儀式、(忌野)清志郎、ジョン・レノン、ジョージ・ハリソン、ジェリー・ガルシア、山口冨士夫を蘇らせる儀式」と語り、「GOD SAVE THE わーるど」へ。「すべてのことが起こりますように」と祈りを捧げるような歌詞に心を揺さぶられ、気付けばフロアには無数の拳が上がり、ピースフルな一体感に包まれていった。続けて「BABY BABY」、「ぽあだむ」で観客をブチ上げ、本編ラストは「僕たちは世界を変えることができない」で美しく締め括る。

アンコールで「少年少女」、「DO YOU LIKE ME」の2曲を追加し、全22曲約2時間半に及ぶライヴを駆け抜けた銀杏BOYZ。ライヴ中のMCによると、今年のライヴは残り2本しかなく、その代わりに新曲をたくさん作り、現在はハードルを高く設定してレコーディングにも励んでいるらしい。また、ニューアルバム&全国ツアーの予定にも触れ、多くのファンが喜んでいた。それ以上に、ライヴを通して銀杏BOYZの野獣めいた爆発力が完全復活を遂げたことが何よりも嬉しかった。それと同時に温かく、柔らかな人間臭さも1ミリも忘れていない。バンド本来の姿を取り戻し、硬軟自在に大暴れするこの日のパフォーマンスを何年待ったことだろう。これからさらにギアを上げ、“心温まる阿鼻叫喚地獄”を何度でも味わいたい。そんな稀有な体験ができるのは、銀杏BOYZのライヴを除いて他にないのだから。

SET LIST

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01. アーメン・ザーメン・メリーチェイン Remix ver. 
02. 若者たち
03. NO FUTURE NO CRY
04. 大人全滅
05. SKOOL PILL
06. エンジェルベイビー
07. 夢で逢えたら
08. 恋は永遠
09. 夜王子と月の姫
10. 二回戦
11. 漂流教室
12. <新曲>
13. 金輪際
14. ナイトライダー
15. 新訳 銀河鉄道の夜
16. 人間
17. GOD SAVE THE わーるど
18. BABY BABY
19. ぽあだむ
20. 僕たちは世界を変えることができない

ENCORE
01. 少年少女
02. DO YOU LIKE ME

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