──FLOWはアニメのテーマソングを書き続けていくロックバンドのパイオニアだと思います。前例がないところへ飛び込んでいけたのはなぜでしょう?
KEIGOやっぱりそれはうちのバンドの性質ですね。昔から基本的に「まずはやってみよう」精神が強くて。
KOHSHI「贈る言葉」のカバーを提案されたら、断るバンドは多いと思うんです。僕らはゴリゴリのミクスチャーバンドをやっていたとはいえ、それも「じゃあ自分たちなりにやってみよう」と素直に思えるんですよね。最初にアニメタイアップの話をもらったのは『NARUTO -ナルト-』で(※オープニングテーマ「GO!!!」。2004年リリース。)、おっしゃっていただいたようにその当時はロックバンドがアニメを担当する時代じゃなかったんです。
熊谷へえ~! 今は当たり前すぎるくらい当たり前なのに。
PONほんまやなあ。アニメの主題歌書き下ろしとか、バンドを続けていくなかの夢のひとつになってるのに。
──当時はまだロックバンドがアニメのために主題歌を書き下ろす文化がなかったんですよね。そういう主題歌はアニソンシンガーさんか声優さんが歌っていることが大半で、ソロアーティストでちょこちょこという時代でした。
KOHSHIそうですね。でも、うちらは書き下ろしを打診されて、「やってみよう」が先に来て。やってみてから考えようと思ったんです。
PONてことはFLOWが時代を変えたってことじゃないですか?
KOHSHIじゃなくて時代が変わっただけだよ(笑)。
KEIGO当時はまだアニメというコンテンツを軽んじている人も多かったんだよね。だから当時はFLOWのファンからも「ロックバンドのFLOWが好きなので、アニソンバンドにならないでください」と言われることも多くて、もやっとしたりもしたんです。でも海外や日本のアニメのフェスに出演して打ちのめされて。とんでもない人たちがとんでもないライブをするんですよ。「アニソンだとかロックだとか関係ないんだな。そんなことを気にしていた自分が間違ってたな」とつくづく思ったんですよね。
PONあ~。それわかるな~。どの世界でもすごい人はめっちゃすごいっすもんね。
KEIGO海外は「アニメだとかロックだとか、なんでそんなこと気にしてるの?」「ロックもアニメもヒップホップも好きだけど?」というスタンスの人が多くて、自分たちもそうだよな、FLOWはFLOWだよなと思うようになっていきました。だからいろんな経験をさせてもらうなかで、出会う人たちからいろんなことを教えてもらったんですよね。
熊谷実際、アニメに書き下ろした曲はいい曲になりますよね。書くほうも気合いが入る。PONさんはどうですか?
PON俺は原作を読んで「このときのこのキャラクターの気持ちを歌にしたいな」と思ったら、その気持ちが生まれたシチュエーションを自分の人生で探すようにしていて。それが見つかったら、原作のことを忘れて自分のことだけを歌うスタンスを取ってます。だからアニメの曲の書き下ろしとはいっても、いつも通り自分のことを曲にしてるかなあ。原作からヒントをもらうのか、自分で自分の人生から探すのかの違いというか。だからアニメソングを作ってるという感覚ではないかも。でもそういう曲をアニメに当てはめて受け取ってくれるって、めっちゃ素敵やと思うんですよね。
KEIGO&KOHSHI&熊谷うんうん。
PON僕は僕の人生を歌ってるけど、その人はアニメや登場キャラクターに当てはめて聴いている。その構図がすごく面白い。音楽は聴き手が自分の気持ちを乗せて聴くものやと思ってたけど、それ以外の聴き方もあるんや! 何倍にもおもろなるやん! て感動しました。
──熊谷さんはPONさんとは真逆の制作ですよね。
熊谷そうですね。あんまり自分のことを歌いたくないので。
PONへえ~!
熊谷お題があったほうがやりやすいです。「この作品に対して書き下ろすならこういう曲が合うかな」とか「この作品のファンを楽しませるためにどうする?」みたいに考えるのが好きだし、曲の焦点を合わせやすい。だからアニソンを作るのは楽しいんです。そういう焦点の合わせ方はアニメソングを書き下ろす人なら持っている気がしていて……。PONさんも自分のことを歌ってたとしても、アニメソングの書き下ろしだと作り方のスタートは若干変わってくるということですよね?
PONうん。そうやなあ。具体的なイメージがあったうえで作るから、そこを目掛けての制作になっていくよね。
──FLOWは常に作品の世界観とバンドのストーリーがしっかりリンクした楽曲を制作している印象があります。
KOHSHI書き下ろし初期の頃はラックライフ以上に自分の人生を歌うようにしていましたね。自分の気持ちを歌詞にしていないと絶対伝わらないと思っていたし、ファンだって歌詞に気持ちがこもってなかったらすぐにわかる。何よりもFLOWの曲であることは大事にしていました。でも、年齢やキャリアを重ねるごとに、作品とシンクロすることでファンがいろんな素敵な捉え方をしてくれて、楽曲が何倍にも大きくなることを実感して。自分の今感じていることとアニメの世界をどちらも歌詞に反映するようになっていきましたね。
KEIGOうちは作曲担当のTAKE(FLOW/Gt.)がアニメ大好きなので、作品を掘って掘って掘りまくって、その世界観から音を連想させていくんです。だからKOHSHIが自分のことを歌詞にしていても、アニメの世界を歌っているように聴いてもらえるところも大きいと思う。
KOHSHIそうそう。TAKEは熊谷くんと同じで、お題がないと宙ぶらりんになっちゃう。すっごいロジカルだから、俺みたいに「いびつだけど面白いじゃん」みたいな大雑把なことがすごく気になるみたいで(笑)。
KEIGOそのTAKEの作曲のロジカルと、KOHSHIの作詞の感覚的なところのコントラストが面白いんですよね。それがFLOWのカラーなんだろうなと感じることはすごく多いです。だから、おっしゃっていただいたように作品の色も、FLOWの歩んできた道も感じてもらえるんじゃないかな。
熊谷FLOWはメンバーさんそれぞれ全然キャラクターが違って、個性を潰し合ってないし、誰かが自分を殺して誰かに寄せるようなことも一切していないのがすごいですよね。BURNOUT SYNDROMESは私がひとりで作るから、ある意味ラクなんですよ。だから5人がそれぞれの個性でぶつかり合いながら作るってすげえ大変だろうなと思ったりもします。FLOWさんは今も全員しっかり尖ってるから(笑)。
KOHSHI5人全員、譲るところは譲って譲らないところは譲らないっていうのを暗黙の了解的な感じでやってるんだけど、たまにTAKEと俺がバチバチになるね(笑)。
KEIGOそうなるとほかの3人は何も口を挟めなくなります(笑)。どっちも折れなくて埒が明かないから、最終的にじゃんけんで決めたことが何回かある(笑)。
PON制作にじゃんけん出てくることあるんすか!?(笑)
KOHSHIだから負けるとめちゃくちゃ悔しいんだよ。「この曲だけは売れんな! 失敗しろ!」とか思うくらい悔しい(笑)。
熊谷その様子が容易に想像できます(笑)。FLOWさんは奇跡のバランスのバンド。だから現場がめちゃくちゃ面白かったんですよ。
──実はFLOWとBURNOUT SYNDROMESは、コラボ曲「I Don’t Wanna Die In The Paradise」をリリースするんですよね。
PONえっ、そうなんですか!?(※取材日時点では情報未解禁)
熊谷そうなんですよ。PONさんすみません(笑)。
PONちょっとー!(笑) でもめっちゃいいっすね! 早よ聴きたい!
ディスクガレージ高尾コラボシングルを出すからFLOWとBURNOUT SYNDROMESを呼んだわけじゃないんです(笑)。本当にたまたまで。
KOHSHI対バンではわからない熊谷くんのクリエイティビティに触れることができましたね。すごく細かいところまでいろいろ考えていて、めちゃくちゃ才能あるなと感じました。しかも引き出しもめちゃくちゃ多い。ラップのとことか抜けとかもすごくいいし、BURNOUT SYNDROMESの可能性を感じました。
熊谷FLOWさんはTAKEさんが全部しっかり曲を作って、そこにメンバーの皆さんが好みをぶち込んでいくスタイルだったので、コラボ曲ではそういう制作ができてよかったです。私が渡したデモをTAKEさんが返してくれたんですけど、TAKEさん好みのものすごく歪んだ音になって返ってきて。それでキャンプ中のTAKEさんに「私、ディストーションギターが大嫌いなんです」と連絡を入れまして(笑)。
KOHSHIそれでまずバチバチが始まったよね(笑)。ずっとメールのCCで見てたけど(笑)。
KEIGOTAKEが「全然歪んでねーよ!」って(笑)。
──先輩相手にそれを言えちゃう熊谷さん、肝が据わってますね。
熊谷そこは妥協せず。
KOHSHIまあ、TAKEが古い男だからね(笑)。
熊谷そしたらTAKEさんが「今ディストーションギターを使っているのは日本くらいだから、日本らしい音なんだよ。それをうまく使うと世界に提案するサウンドになるんだ」と完全に論破されました(笑)。FLOWさんは海外のアニメファンにはレジェンド的な存在なので、FLOWさんとBURNOUT SYNDROMESで海外の人に刺さるような曲を作りたかったんです。それでリズミカルにしてシンセと馴染ませて、空間を開けて現代的にしました。
KOHSHIFLOWもコラボはいろいろやらせてもらってきたんですけど、こんなに意見をぶつけ合うようなセッションは割と初めてだったから、すごく得るものがありましたね。バンド同士のコラボなのに、全然バンドじゃない。FLOWでもBURNOUT SYNDROMESでもない曲ができました。
熊谷音楽が好きなので、音楽に対して貢献したいんです。だからアニソンを日本から世界に提案していきたい。だから今回FLOWさんとご一緒できて、すごく勉強になったんです。「日本ってすげえだろ!」というのをアニソンを通して見せたいと常日頃思っているんですよね。
PON……熊ちゃん(熊谷)はこんな熱くて真面目なことを打ち上げでも話すんすよ。
KOHSHI話しそう!! そのへんもTAKEと一緒!(笑)
KEIGO「共鳴レンサツアー」も打ち上げは熊谷くんとTAKEの2人席を用意して、俺らは次の日にはすっかり忘れてるようなアホで中身のない話をしよう(笑)。
熊谷いや、そこにはTAKEさんと私も入れてくださいよ(笑)。