Digital EP「願い」release TOUR 2025「願ったり叶ったり」FINAL&生誕祭
2025年3月15日(土) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
「初めの一歩」では晴れやかな力強さ溢れる演奏と観客の溌溂としたクラップとシンガロングが混ざり合い、「サニーデイ」のイントロでLOVE大石(Dr)が「俺ら誕生日やねん!」と結成記念日に触れると、PON(Vo/Gt)は歌詞の一部を“誕生日”に変えたり、たく(Ba)とikoma(Gt)のプレイを立てるなどして会場の熱量をさらに上げる。自然体でありながらも引き締まったしなやかなライブ運びは、これまでの経験に裏付けられるものだ。
PON(Vo/Gt)
LOVE大石(Dr)
テンポのいいMCで会場を沸かすと、「Naru」「Believe」とバンドの信念が凝縮された楽曲をドラマチックにつないでいく。パワフルでありながらもきめ細やかで、ポジティブでありながらも感傷的な音色だからこそ、ラックライフの音楽はPONの言うように“心に刺さって抜けない歌”になるのだろう。迫力あるドラムソロからメンバー紹介をして「Hand」に入ると、雄大な音色に乗せて「声と手拍子をください」と高らかに叫ぶ。彼らが観客に行う呼びかけは、ライブを盛り上げるためではなく、心を通わせるためのコミュニケーションだ。その後も2014年にリリースされたフルアルバム収録曲「雨空」、フレッシュかつエモーショナルな「風が吹く街」と、フロアとの結束をさらに強めていった。
たく(Ba)
ikoma(Gt)
「嘘みたいに楽しい」とこの日を迎えた喜びをあらわにし、メンバー全員で和気あいあいとMCを展開する。その流れに乗って大石がドラムを鳴らすと観客もクラップを重ね、メンバーは「ROLL」のイントロへとつないだ。軽やかなサウンドに乗せて情熱的な歌声を響かせるPONの様子からも、この曲に込めた気持ちをできる限り届けたいという強い思いが感じられる。「リフレイン」でその緊迫感を研ぎ澄ますと、静寂のなかに少しずつ音を重ね、最新作『願い』で最もシリアスな「あなたがあなたで」へ。PONは透き通るファルセット、強く訴えかけるボーカルで内観的なムードを高めながらも、目の前の観客=あなたにそれをまっすぐ差し出した。メンバー3人も楽曲にじっくり入り込み、曲に込められた思いを音で表す。その空気感をまとったままなだれ込んだ「軌跡」は鋭くも優しい音色で、楽曲そのものがバンドに力を与えると同時に、今この瞬間に鳴り響く演奏がバンドのエネルギーになっているようにも感じられた。ラストにメンバーと観客で歌うシーンは隅々まで清らかで、彼らが17年間真摯に音楽やリスナーと向き合ってきたことを象徴する、とても美しい一幕だった。
PONは「あなたを思い浮かべながら作った歌をあなたに歌えることが俺らにとっては願ったり叶ったり」「こんなにおもろいことはないから、あなたにとっても俺らの歌を受け取ることが人生のプラスになっているといいな」とバンド活動への思いを言葉にする。話しているうちに彼の眼からは涙がこぼれ、照れ隠しのように観客を笑わせながらも素直に観客へとその気持ちを伝えた。その直後に披露された「願い」は初披露された「QUATTRO TOUR 2024」時よりもさらに深みや説得力が生まれ、一言一言と一音一音が胸の奥まで響く。ラックライフが活動を積み重ねるほどに、同曲の強度や味わいが増していくことを予感させた。
PON(Vo/Gt)
ギターロックナンバー「Lily」、スイーティーなミドルナンバー「アイトユウ」、つんのめるような疾走感が青々と響く「変わらない空」と異なるカラーの楽曲をたたみ掛けると、PONは再び丁寧に観客へと感謝を告げ、「課題を持って心を燃やしてツアーを回ることができた」と充実を言葉にする。とはいえ考えすぎてしまう性分の彼は、ツアーファイナルであるこの公演を目前にして心が潰れそうになったそうだが、「その不安はあなたが吹き飛ばしてくれた」と目を輝かせた。「あなたが幸せになってほしいと心の底から思っている」「俺もあなたに寄りかからせてもらうから、あなたに助けてもらうから、そこにいてください」と喉を嗄らしながら訴え、「あなたがいつでも帰って来れるように」と告げて本編ラストに届けたのは「Home」。大切な場所を守るだけでなく、さらに広げていきたいという頼もしさを感じる歌と演奏だった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、ikomaはこのツアーでどんなバンドになっていきたいかをメンバーでじっくり話し合ったと語り「まだまだバンドは良くなるし、やりたいことも明確になった」と前向きな言葉を伝え、たくもツアーが楽しかったと感慨に浸り「あと80年バンドをやる」と意欲を見せた。大石は新しいことにたくさん挑戦したツアーであったと振り返り、お互いが自分の主張ができるからこそバンドが続けてこれたと話す。そして10年以上にわたり毎年地元大阪で開催してきた「GOOD LUCK」を休止するなどの選択はラックライフがしっかりと次のステージに進むためであることを涙ながらに語り「(コピーバンド時代を含め)20年続けてきてまだまだできると思うし、メンバーも変わらずこれだけ自由にできてるバンドはあんまおらんのとちゃうかな。俺らはある程度自由にやっていくし、でも目標は見失わないように頑張っていきたい」と強い眼差しを浮かべた。
思いをふんだんに込めてロックバラード「名前を呼ぶよ」とエネルギーが漲る「ファンファーレ」を演奏してツアーファイナルと17周年記念日の締めくくりを彩ると、再び笑いの絶えない朗らかな空気のなか写真撮影を行い、PONは笑顔で「こんなバンドですけど末永くよろしくお願いいたします。いつか武道館でこんなことをやってみたいですね」と呼びかける。彼の口から具体的な目標が出たことに、観客も大きな歓声を上げた。「その日までみんなしんどいこともたくさんあると思うけど、なんとか踏ん張って音楽にしがみついていきますので、元気いっぱいに生きてまた会えたら最高やなと思っています!」と明るいムードで観客へと感謝を告げ、メンバーはステージを後にした。
『願い』に収録された4曲は、ソングライターであるPONが足りない部分や劣等感をたくさん感じながら生きていること、それでも少しでも望みがあるならば諦めたくはないという譲れない意志がありありと綴られていた。このライブにも、同様の気持ちが表れていたように思う。どれだけ誠実に懸命に努力をしたとしても、必ずしも想定通りに進むわけではない。人生とはそういうものだとは頭で理解しつつも、心が傷ついてしまうこと、塞ぎ込んでしまうことは多々あるだろう。悲喜こもごもなラックライフの音楽は、そんな傷に痛いほどに染みてくる。だがその痛みは、これまでに全力を尽くしてきたからこそ感じられるものだ。傷を舐め合うのではなく傷を称え合えるからこそ、ラックライフのライブはステージも客席も愛情に満ちている。その光景は凛々しく、ひたすらに眩しかった。
SET LIST
01.僕らはそれでも
02.初めの一歩
03.サニーデイ
04.Naru
05.Believe
06.Hand
07.雨空
08.風が吹く街
09.ROLL
10.リフレイン
11.あなたがあなたで
12.軌跡
13.願い
14. Lily
15.アイトユウ
16.変わらない空
17.Home
ENCORE
01.名前を呼ぶよ
02.ファンファーレ