ラックライフ、PON(Vo/Gt)が語る“エネルギーの矛先”の変化。2月よりデジタルEP『願い』リリースツアーがスタート

インタビュー | 2025.01.16 21:00

ラックライフというバンドは絶妙だ。正統派ギターロックバンドと言うにはパンクバンド並みに熱量が高く、熱量が高いのにどこか4人とも冷静かつ淡白で、15年以上のキャリアを持ちながらも4人の放つ音色は今も軽音楽部の高校生のようにフレッシュで、同時に落ち着いた円熟味も持ち合わせる。この絶妙なバランスが成り立つのは、それが4人の等身大だからに他ならない。
そんな彼らがリリースする4曲入りの新作デジタルEP『願い』は、ソングライターのPON(Vo/Gt)の痛みや悲しみまでもが切々と伝わってくるのが印象的だった。『願い』の4曲が生まれた背景、2月から開催されるリリースツアー「願ったり叶ったり」に懸ける思いに、彼のソロインタビューで迫る。

目の前にいてくれる人に届けたい、歌いたいという気持ちは、すげえでかくなってます

──デジタルEP『願い』の4曲、ソングライターでありフロントマンであるPONさんの人間性が生々しく表れた作品だと感じました。
PONこの4曲が完成して、自分は足りない部分や劣等感をたくさん感じながら生きているんやなと思わされましたね。日々ハッピーに生きてるつもりなんですけど、そういう部分をちゃんと持ってるんやなと。
──これまでPONさんがそういう面を克明に曲にすることはあまりありませんでしたよね。悲しみや痛みを乗り越えた後、生まれた気持ちを曲になさっていることが多い印象があったので、少し意外でもありました。
PONそうかもしれない。昔はもっと「こうなりたい」という明確なゴールがあって、「そこに向かうためにはこの状況からどうする?」みたいなところを曲にしていたけれど、この4曲はそういう気持ちに至った過程を書いてるな……と今初めて気づきました。年齢を重ねてきて、バンドも長いこと続けてきて、いろんなことがわかるようになり始めてきた頃にコロナ禍があって。理想と現実のギャップがものすごく大きいことは日々感じていて、漠然とした不安はすげえでかいと思います……ってめっちゃ重いこと言うてるけど大丈夫ですか!?(笑)
──大丈夫です(笑)。10年以上同じことに打ち込むなかで30代半ばを迎えると、自分の天井だとは信じたくない天井が見えてくるなとは思います。
PONほんまそれやと思います。今も昔も同じくらいエネルギーは満ち溢れてるけど、現実が見えてくるようになってその矛先が変わってきたようにも思うんですよね。「願い」でも書いているように、目の前にいてくれる人に届けたい、歌いたいという気持ちは、すげえでかくなってます。
──「願い」を初披露なさった2024年11月開催の「QUATTRO TOUR 2024」は、それをとても強く感じられるライブでした。
PON「QUATTRO TOUR 2024」は周年ライブでもリリースツアーでもない、とにかくラックライフの音楽を愛してくれている人に会いに行って、言葉や思いを伝えるためだけのツアーやったから、なおさらそういう面が出ましたね。でも根本は良くも悪くも全然変わってないんですよ。コピーバンドを始めた高校時代からずっと、生きているなかで一番好きなことは歌うことで、それを受け取ってもらえたり、感情が動いてもらえることが幸せなんですよね。他にもっと楽しいことが出てきても不思議じゃないのに、音楽はずっとダントツトップで楽しいを更新し続けている。すごく自分でも誇らしいです。
──EPの1曲目「僕らはそれでも」はラックライフのバンドとしてのスタンスが表れているのと、PONさんのリアリストで強がりなところがギミックになっているのがポイントだと思いました。
PON何をするにもいろいろと考えてしまうんですよね。大怪我や失敗をしないように保険掛けまくってて、バンドに関してだけそれがまったく発動していないっていう(笑)。結構分析癖があって、誰かと話してても「今この人はこういう気持ちかな」「ならこうしておいたほうがいいな」みたいに考えて立ち回ることがほとんどで。
──PONさんって熱い部分も淡白な部分も、どちらも持ってらっしゃいますよね。
PONこれね、ほんまにおとんとおかんなんです(笑)。おかんが絵に描いたようにすっごいサバサバしてて、おとんはいろんな人に騙されるくらいすっごい優しくてお人よしで、俺はほんまそのふたりの子やなって感じ。人のこと大好きやし、力になりたい、応援したいと心から思うけど、無謀な夢を追いかけてる人に「もうちょっと時間掛けて考えたら?」「仕事をしながら始めてみたら?」みたいに冷静にストップを掛けてしまうんです。夢を叶えることだけが幸せというわけではないから、背中を押したいけど無責任に押せない。こんなに「大丈夫」と歌っているバンドやけど、根拠なく「大丈夫」と歌ってる曲がほとんどない(笑)。
──そういう人柄がどちらもクリアに出た楽曲だと思います。それが実現できるのも、ラックライフの楽曲が文章だけでストレートに伝わる全部日本語の歌詞で、さらにちゃんとメロディに聴き心地良く乗っていて、一言一句ちゃんと聴こえるからだろうなと。
PONうれしい~!歌詞は言葉として存在してほしい、歌詞がメロディに振り回されたくない、自分が普段使う話し言葉で歌詞を書きたいとはずっと昔から思っていて。英語が出てこないのは僕が英語苦手やからやし、比喩が少ないのも普段からそういう喋り方をするからなんですよね。曲は手紙を書くような気持ちで書いているので、ほんまに強く思ったことしか曲にならへんし、なんとなく聴き心地がいいだけで曲作れないし、苦しくてもう無理~!と泣きながら曲作ってるし、この取材の前日も朝5時までギター弾いててもなんも出てこんくて絶賛苦しみ中(笑)。でも完成すると自分が救われるし、それを聴いてくれた誰かが救われたり、感情が動いてくれたらそれまでの苦しみも全部報われるんですよね。ミュージシャン、アーティスト感がないというか、ヒューマン感が強すぎるんです。

本気をまっすぐ伝えたほうが絶対ええわ!と思うんです。そういうボーカリストでありたい

──そういうPONさんのピュアさが色濃く出ているのが「あなたがあなたで」だと思います。「死にたいなんて言わないで」というストレートな言葉が、まっすぐ入ってくる。
PON「死にたい」と言われてどうすればよかったんかな……とめっちゃ考えることがあって。言われた側からすると結構きついというのが正直なところで、「なに言うてんねん」ぐらいしか言えへんかったな、とふとしたときに思い出してそのたびに泣きそうになる。というか今話してても泣きそうなんですけど(※目頭を押さえる)。
──どういう返答が最適解なのか、すごく難しいですよね。
PON僕も「ふっといなくなれたらな」と考えることはあるけれど、死にたいと思ったことはほとんどなくて。なんなら去年病気になったとき「死ぬんめっちゃ嫌やな」と思ったんです。「死にたい」と言う人は僕では想像できないレベルの重い気持ちを抱えてるし、だったらなおさらもっとちゃんと言葉にできることがあったんちゃうかな、今の自分やったらどう言うかなと考えることがあって。その状況をバッと変えたり、救ったりできるわけじゃないという無力感もあるし、それでも「ちゃんと俺がおることを忘れるなよ」とすごく思うんです。
──はい。
PON人間はその気になればすぐ自分の人生も終わらせられるし、そういうことがよぎる瞬間もあるのに、その決断に至ってない時点ですごいんですよ。頑張ってる。でも頑張らんでもいいから生きてほしい。言い方むずいんですけど……。どんな状況でも、どんな気持ちでもいいから、そこにおることだけはやめないでくれ。じゃないとこっちは、そばにおることすらできんくなるやん。あなたの状況を激変させられるようなことは言えへんけど、「そばにおれるで」って言ってんのに、そばにもおらしてくれへんかったら困っちゃうから。
──そうですね。
PONもうだいぶ前の話でもふとしたときに思い出すっていうのはまだ消化しきれてないし、多分一生忘れへん気持ちなんでしょうね。「死にたいなんて言わないで」と30半ばで歌うって、なかなか重いんですよ。何年か前に若いアーティストのなかで死を歌うことが流行りになったけれど、そういうのとは違うのがほんまに重い。
──30代半ばになると親も老いて、自分の体力の衰えも感じてきて、生きたくても生きられなかった同年代を見送ることも少しずつ増えてきますものね。死がおとぎ話ではなく現実味を帯びてくる。
PON大人になると、生きてきて思ったことそのまま書いたらこんなに重いものになるんですよね。ほんまに死にたい人は「こっちの気も知らないで」って思うかもしれへんけど、死んでほしくないですもん。相手に遠慮して言わへんなら、こっちがほんまに思っている本気をまっすぐ伝えたほうが絶対ええわ!と思うんです。俺も頑張ってるから「頑張れ」って言うし、全然大丈夫じゃない状況でも大丈夫な気になれたら勝ちやなと思うから俺は「大丈夫やで」って言う。そういうボーカリストでありたいですね。

公演情報

DISK GARAGE公演

Digital EP「願い」release TOUR 2025「願ったり叶ったり」

2025年2月2日(日)愛知・名古屋Electric Lady Land
2025年2月9日(日)福岡・福岡BEAT STATION
2025年2月11日(火祝)岡山・岡山IMAGE
2025年2月15日(土)台湾・Corner House 角落文創
2025年2月22日(土)宮城・仙台MACANA
2025年2月24日(月祝)北海道・札幌BESSIE HALL
2025年2月28日(金)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2025年3月8日(土)韓国・musinsa garage
2025年3月15日(土)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)〈FINAL&17th 生誕祭〉

チケット一般発売日:2025年1月15日(水)12:00
海外公演チケット一般発売日:
〈台湾公演〉2024年12月25日(水)18:00
〈韓国公演〉2024年12月26日(木)12:00

RELEASE

「願い」

Digital EP

「願い」

2025年1月15日(水)SALE

配信先URL
  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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