LIVE TOUR 『地平線、そこで会えたら』
2025年8月2日(土)下北沢シャングリラ
シンガーソングライターのさとう。が8月2日(土)に東京・下北沢シャングリラで東名阪ライブツアー「地平線、そこで会えたら」のファイナル公演を行った。今年3月に初のバンド編成で東名阪を回った「朗朗、その声だけを頼りに」から5ヶ月ぶりとなるライブツアーで、今回もバンド編成を中心に彼女の代名詞であるアコギ弾き語りやチャレンジとなるピアノ弾き語りを混ぜ込んだセットリストとなっており、アーティストとしてのポテンシャルの高さを見せつけたライブとなっていた。
バンドメンバーに続き、アコギを脇に抱えてステージに登場したさとう。は弾き語りで歌い始めた即興曲に続き、「マイク前」で、歌詞通りにマイクの前に立つ覚悟を提示。「待ってろ!地平線!」というこぶしを利かせた言葉とともにドラムとベースが合流し、観客もクラップを打ち鳴らしながら<ああああ>とマイク前での声出しに全力で参加。高揚感に溢れたバンドサウンドが広がる「夕陽になった人」では観客のクラップのボリュームがさらに上がり、「バチバチに楽しくやっていきたいと思います」という挨拶に続くカントリーロック「Saturday park friend」では裏打ちに変化したリズムにも対応し、場内は穏やかで温かい空気で包み込まれていった。
ラテンのソカのような独特の心地いいビートと日々の暮らしの葛藤や不安が交錯する「明日」から「ステージの上から雲の上のステージに向けて」という言葉を添えた「ステージ」へ。さとう。は<背伸びをしない等身大のさとう。で、どこかの誰かのノンフィクションを歌う>と語っている。つまり、実体験を元にしたフィクションを歌詞にすることが多いのだが、「ステージ」は病に侵されて先に旅立ってしまったアーティストに向けた、理不尽な出来事に対する自身の怒りや悲しみが込められた楽曲。サビでは観客によるシンガロングが発生し、まるでレクイエムのように場内で響いていた。
ここでバンドメンバーがステージを降り、「食卓」からはマイク一本、ギター一本の時間となった。前回のツアーでも感じたのだが、弾き語りで心に残るのは、現時点ではいつも「細胞」だ。変わっていく街と変わらない僕を対比させながら、<待望><細胞><才能>と韻を踏みながらアタックを強めていき、<今に見てろよ>というフレーズに辿り着く。物語はフィクションかもしれないが、自身のリアルな感情を刻み込んだ楽曲をステージで全力で解き放つ姿にはいつも圧倒される。
ライブハウスの企画の一環として、曲名縛りで書き下ろしたバラードでほのかな痛みや悲しみを湛えた歌声が印象的だった「ピアス」の後のMCでは、自身の楽曲を振り返り、「強く背中を押してあげる曲はあんまり多くはなくて。内側を向いてる曲が多いんですけど、それでもこうして出会ってくれた人たちがたくさん集まってくれたことが、お守りのような温かい気持ちになります。さとう。の音楽をそばにおいてくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えた。そして、「誰かのせいにして泣けない優しいあなたが、どうか涙を流せる夜があったらいいなという祈りを込めて」と語りかけ、「泣いているのは」では、まさに観客一人一人の背中を優しく撫でるように歌い、許されない恋愛の終わりを綴った「アマレット」では歌詞にあるような波がたゆたう海の風景を引き連れながら確かなエモーションを込めてしっかりと歌い上げた。
「どうか帰り道に夜空を見上げてくれたらいいなと思います。東京の空は星は見えませんが、その空の向こう側で皆さんの顔を伺ってる人がいるかもしれません」という言葉を挟み、7月からスタートした6ヶ月連続配信リリースの第1弾で、大人になり、夜空を見上げることを忘れてしまったウェンディに宛てたピーターパンからの手紙でもある「ネバーランドより」をドラマチックにパフォーマンス。手紙と祈りというのは、さとう。の音楽の本質的なテーマだと再認識させられる思いがした。そして、夏に咲く儚い花をモチーフにした<花火にも似た恋の歌>と解説した「夏椿」をピアノの弾き語りで歌うと、春という季節に対する怒りと寂しさを込めた「春一番」ではバンドメンバーが戻り、ピアノトリオの編成で演奏。アコギの弾き語りという印象が強いさとう。の新しい一面を見せるシーンが続いた。
ここでバンドに戻り、宇宙規模のラブソング「小惑星移住計画」ではローファイなヒップホップのビート感で観客の身体を心地よく揺らし、6ヶ月連続配信リリースの第2弾「逃避行ハイウェイ」は「皆さんとどこまでもどこまでも逃げて行けますように」という祈りと願いを込めて高らかに歌いあげ、どんな時でも君を一人にしないという約束も交わした。
満員で熱気に溢れたフロアを見渡し、「こんなにたくさんの人がさとう。と同じ地平線を目指してくれて。今、ここが、目指した地平線なんだって思うと、歩みを止めずに歌い続けてよかったって心の底から思います」と語ると場内からは温かく大きな拍手が上がった。「地平線にたどり着いてみると、まだ向こう側にはいろんな景色が待っていて。きっとそれは、歩みを止めなければ辿り着ける。でも、さとう。はそんなに強い人間ではないから、一人ではきっと行けない場所だと思っております。また、そこで皆さんと待ち合わせができるのだったら、何度でも何度でも、歩みを止めずに地平線を目指していけるなと思ってます」と語り、本ツアーのために書き下ろした新曲「地平線」を披露。未来に対する決意を込めたロックナンバーで観客の熱気とボルテージを一気に引き上げると、最後に、TVアニメ「花は咲く、修羅の如く」のエンディング主題歌として書き下ろした「朗朗」に「さとう。の音楽が皆さんの人生のBGMになりますように」という思いを込めて歌い、出会えた喜びに満ちた雰囲気が広がる中で本編はエンディングを迎えた。
アンコールでは昨年、SNSでバイラルヒットを記録した「3%」をアコギの弾き語りでパフォーマンス。「ライブハウスでライブを始めたのが、忘れもしない2019年11月19日。生まれて初めてオリジナルで弾き語りをして。ちょっとずつライブ楽しいなって思い始めた矢先に、コロナで決まってたライブが全部キャンセルになって。専門学校の授業も無くなって、バイト先も休業して。そんな時に伊豆の母に『帰ってきたら?』と言われたんですけど、まだ帰れないなと意地を張って。その時の自分はもう誰にもさとう。の歌は届かないって本気で感じていたけど、こうして歌うことをやめずに、受け取ってくださるみんなと出会えたよかった」と語り、「楽屋」へ。線路沿い1Kの部屋で作ったドキュメントでもある楽曲は、弾き語りライブを始めてから今に至る彼女の6年間の歩みとも重なって胸に響いた。
ここで、キャリア最大規模となる全27公演に及ぶ初の全国ツアー「この芽の色を知る人へ」の開催に加え、ファイナルが初のホールワンマンとなることを報告。「新たなる地平線は大手町三井ホールです!」と声を上げると、会場からは大きな拍手が送られた。そして、最後は、マイクから離れてアカペラで歌い始め、再びバンド編成となった「Aini」で私とあなたの間に歌があってよかったという最大級の感謝を愛を歌い上げると、最後は<出会いたいな あなたに>というフレーズでシンガロングが起こり、「何度でも出会えますように。また必ず会いましょう」という再会の約束と共にライブはエンディングを迎えた。次は花を咲かすための種まきツアーだ。新たなる地平線で芽吹いた色が果たして何色なのかをこの目で確認したいと思っている。
2025/08/02
さとう。LIVE TOUR
『#地平線そこで会えたら 』
ツアーファイナル
下北沢Shangri-La公演
終演いたしました!なんかもう、すんごい、
溢れて溢れて止まらない夜だった!
あなたと目指した地平線、
ここに立ててよかった、
また会いましょう!
ありがとうございましたー!!#SSWさとう。 pic.twitter.com/YZWpfpFffm— さとう。SSW (@Sato_darari) August 2, 2025
SET LIST
01. マイク前
02. 夕陽になった人
03. Saturday park friend
04. 明日
05. ステージ
06. 食卓
07. 細胞
08. ピアス
09. 泣いているのは
10. アマレット
11. ネバーランドより
12. 夏椿
13. 春一番
14. 小惑星移住計画
15. 逃避行ハイウェイ
16. 地平線
17. 朗朗
ENCORE
18. 3%
19. 楽屋
20. Aini