インタビュー/長谷川 誠
2016年の岸谷香の音楽活動はめざましかった。3月に仙台と東京でPRINCESS PRINCESS再結成の活動の大きな区切りとなるライブを行い、5月には10年ぶりのオリジナル・アルバム『PIECE of BRIGHT』リリース、6月~7月にはキャリア初となる1人弾き語りツアーを敢行、10月にはバンドスタイルのツアー、さらに12月には年末スペシャルと名付けられたステージを東名阪で行っている。様々なスタイルのステージを観ることができたのだが、どれもが音楽に対する情熱が形となった素晴らしいものだった。2016年はシンガー、ソングライター、プレイヤー、ライブパフォーマー、様々な角度でフル稼働した年であり、音楽家としてさらなる覚醒を遂げた年と言えそうだ。しかも音楽と家庭とを両立させているというところも素晴らしい。2016年の活動の総括と50代の幕開けとなる2017年の展望を聞いていく。
──2016年は充実した音楽活動を展開した年になりました。相当の手応えがあったのではないですか?
ザッツ現役って感じでした。やりたい放題やらせてもらったので、まずは家族に感謝ですね。今年の夏のツアーは金土日、金土日と組まれたスケジュールが多くて、木曜日に家を出て、月曜に帰るパターンで、家を空けている期間がかなり長かったんですが、家族の理解、協力もあり、なんとかなっちゃいました(笑)。
新譜を出すってこういうことなんだなって。意欲がさらなる意欲を呼んで、いろんなことがどんどん広がっていきました。
──10年ぶりのオリジナル・アルバム『PIECE of BRIGHT』をリリースしたことが、今年の音楽活動のエンジンになっていたのではないですか?
新譜を出すってこういうことなんだなって思い知らされました。ただ新しいものが出る、新曲が増えるというだけではないんだな、もっといろんな意味があるんだなと思いました。
──というと?
せっかくアルバムを作るんだったら、一緒に楽曲を作ってみたいと思っていた人たちとやってみようって思って、TRICERATOPSやヒイズミ君(H ZETT M)とコラボレーションしたり、せっかく新譜を作ったんだから、アルバムを中心としたライブをやりたいな、じゃあバンド・ツアーをやっちゃおうって、意欲がさらなる意欲を呼んで、いろんなことがどんどん広がっていきました。
──バンド・ツアー最終日、10月29日の豊洲PITも熱狂的な盛り上がりでした。岸谷さんとバンドとの一体感も見事でした。
なんだったんでしょうね、アレ(笑)。自分でもびっくりしましたけど、お客さんもびっくりしてたんじゃないかな。私自身、自然に体からエネルギーがみなぎってくる感じでした。バンドもかなりタイトなスケジュールの中、集中してリハーサルにのぞんでくれて。メンバーにとっては初めて演奏する新曲も結構あったんですが、“数回でできるようになれ!”“本番では譜面は見ちゃダメッ!”ってかなり無理強いしたんですよ。結構な試練だったと思うんですが、そんな要素も集中力、爆発力に変えてくれて、“一丸”という言葉どおりのステージになりました。私とバンドがひとつの塊という感覚があった。これまでと何が違っていたんだろうって、あとからじっくり考えたら、やっぱりアルバムが大きかったんだなっていう結論に達しました。