岸谷香 感謝祭2026
2026年2月23日(月・祝)EX THEATER ROPPONGI
出演者 : 岸谷香 / Unlock the girls
ゲスト:BONNIE PINK / 吉岡聖恵(いきものがかり)
関東地方に春一番が吹いたこの日、出かけるのに上着はいらないような陽気だったから、ただでさえ浮き立っている気持ちがさらに軽くなる。そして、最寄りの駅を出て会場に向かう道すがら、“今日はどんなふうに始まるんだろう?”と考えてしまう。岸谷の“感謝祭”は今年で数えて7回目だけれど、もてなしの効果をいつも隅々まで考えて、ともに過ごす時間が最大限に輝くように、そして終わってみれば、“あのオープニングが見事に全体を照らし出していたね”と思わせる段取りがちゃんと整えられているから。
果たして、定刻になると会場は暗転し、低音のアタックがゆっくり刻まれる。何かが滞って深いところに溜まっていくようなイメージにとらわれた刹那、その停滞を突き破るように岸谷のシャウトが響いて、この日のステージは始まった。
Unlock the girlsの4人でまず2曲披露すると、早くも最初のゲスト、吉岡聖恵(いきものがかり)が登場。岸谷の表現を借りれば「いきなりのトップギア」で会場をヒートアップさせていく。本人もその具合は心得ているようで、「うるさくてすみません(笑)」と言いながら、それでも気持ちが昂るのは抑えられないようだ。しかも、登場して最初に歌った「ブルーバード」ですでに明らかだったが、穏やかな馴染みやすさが行き届いたいきものがかりのサウンドに比べると、岸谷もギターを弾くキーボードレスのバンド・サウンドはかなりエッジの立った印象で、だから吉岡だけでなく会場全体がいよいよドライブしていくことになった。その上で、いきものがかりのファンにも大いに新鮮に響いたであろうと思われるのは、吉岡のボーカルに岸谷をはじめメンバーの声が重ねられる場面が何度もあったことで、特にいきものがかりのヒット曲をオリジナル構成でまとめた「グレイテストヒッツメドレー」のなかの「ありがとう」で、最初の1コーラスをバンド4人のアカペラ・コーラスに乗って吉岡が歌ったアレンジは出色。吉岡のボーカルの魅力をいきものがかりサウンドとは違う発想で際立たせると同時にバンドの音楽的な個性をアピールした岸谷のプロデュースはさすがと思わせた。
それにしても、一人でのイベント出演はこの日が初だった吉岡のパフォーマンスが「嵐のよう」(by岸谷)だったから、彼女を送り出した後に始まった「世界でいちばん熱い夏」のイントロのベースの刻みに乗っかってくるオーディエンスの手拍子はかなり前のめり。言わば吉岡のパフォーマンスの“余熱”でいつにも増して熱い演奏になったが、そうした展開も岸谷は予想していたのか、ここでひと区切りつけるかのように、プリンセス プリンセスの名曲「ONE」をじっくり聴かせ、そしてBONNIE PINKを迎え入れた。
そこからの“BONNIE SIDE”の演奏は“吉岡SIDE”とは好対照で、前のめりな気持ちを後ろにゆったり落ち着かせるような、あるいは左右に揺らすようなグルーヴで、岸谷が何度も「洋楽的」と評したBONNIE PINK音楽の魅力を十分に味わわせてくれた。自身のライブでもほとんど歌ったことがないとBONNIE PINKが語った「鐘を鳴らして」の英語版「Ring A Bell」を披露したのも、彼女のファンには大きなトピックだったろう。
ただ、この日のライブ全体の流れを振り返ったとき、BONNIE PINKとの交友の始まりがママ友つながりだったことを話したのに続いて、女性アーティストがキャリアを重ねていく上で男性アーティストはおそらく感じることが少ないであろう思いについて岸谷が語った場面はひとつのポイントで、だからその後で披露した無邪気な「Diamonds<ダイアモンド>」と愛の深みに想いが及ぶ「Like Gravity」のコントラストが印象的だった。
岸谷が語ったのは「男性アーティストは少年のままでやっていけるけど、女性アーティストは人生が進んでいくなかで歌うことも変わっていく」という話で、つまりは女性アーティストがキャリアを重ねていくには女の子のままではいられないということだ。だからこそ、この日の本編最後に「この曲を出して10年になります。こんな曲をカッコよく演奏できるギャルバンになるといいなと思って作りました」と話して披露した「Signs」の堂々たる演奏は間違いなくこの日のクライマックスのひとつだった。女の子のままではいられないと承知しているからこそ♪何にだってなれると少女のように夢を見る♪というフレーズがいっそう心に残るし、この日のステージを♪終わらないから ah この輝きは♪と歌う「STAY BLUE」から始めたことがあらためて意識された。
アンコールは、ゲストの2人も加わって、6人ギャルバンのステージ。吉岡聖恵とBONNIE PINK、それぞれのボーカルの個性をしっかり味わえる「M」という曲の懐の深さを再確認し、「GET CRAZY!」のオーソドックスなロックンロールの楽しさを満喫してステージは幕を閉じた。
いつものようにエンターテイメント・ショーとしてのよく練られた趣向をたっぷり楽しませてもらうと同時に、バンドのメンバーも含め、様々な世代の女性が音楽と向き合うなかで湧き上がる感情の機微に触れて、そこにまた音楽の素晴らしさを実感することにもなったステージだった。
SET LIST
01. STAY BLUE
02. Unlocked
w/吉岡聖恵
03. ブルーバード
04. キミがいる
05. いきものがかりグレイテストヒッツメドレー(気まぐれロマンティック~ありがとう~コイスルオトメ~風が吹いている~YELL~じょいふる)
06. 世界でいちばん熱い夏
07. ONE
w/BONNIE PINK
08. A Perfect Sky
09. Ring A Bell
10. Heaven's Kitchen
11. Diamonds<ダイアモンド>
12. Like Gravity
13. レミニセンス
14. ボディガード
15. GUITAR MAN
16. Signs
<ENCORE>
w/BONNIE PINK & 吉岡聖恵
17. M
18. GET CRAZY!















