HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL
2026年1月25日(日)大宮ソニックシティ 大ホール
1月から自身5年ぶりとなるオーケストラツアー<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>を開催中のHYDE。本ツアーはHYDEの1stアルバム『ROENTGEN』の流れを受け継ぎ、3月11日(水)に配信リリース、CDアルバム発売を5月に予定しているニューアルバム『JEKYLL』を掲げたツアーとなっている。1月25日、そのツアーの前半戦となる公演を埼玉・大宮ソニックシティ 大ホールで観た。
ライヴは<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>の延長かと思いきや、想像していた以上に別物だった。HYDEといえば、<HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR>のように、ラウドでヘヴィなサウンドに合わせてみんなで激しくはっちゃけて、カオスな空間を作り上げていくライヴがおなじみだが、今回のHYDEはそれとは真逆。静へとシフトしたHYDEが観られる公演となっている。オーケストラをバックに、シックかつ、ジャジーでエレガントでゴシックな音楽、歌に没入していく今回のJEKYLL公演。HYDEとJEKYLL、その二面性が対となって露わになっていったときにやってくるスペクタクルな瞬間の破壊力は、ロックでしかなかった。本公演はまさに、HYDEがやりたかった精神的なロックを可視化した衝撃作! オーケストラ音楽というイメージを遙かに超え、HYDEの美学を貫いたこの公演は、なんとしてでも激しいHYDEのライヴを知っている人たちに観てもらいたい。そんな気持ちを込めて、本レポートはHYDE自身がインタビューで触れていた楽曲以外は、なるべく“ネタバレ”にならないような形でお届けしたいと思う。
普段は行かないような土地や場所、ホールに、いつもは観られないオーケストラ仕様の静かなHYDEがやってくるということで、本ツアーはこの日の大宮を始め、チケットは初日から軒並みSOLD OUT。会場では、おなじみのツアートラックが来場者を出迎えてくれる。真っ白いHYDEが大写しになったJEKYLL仕様のトラックを見てテンションを上げたあとは、場内へ。いつものライヴハウス公演とは違って、観客たちは席に座って開演を待つ。ファンの装いもラフなTシャツ姿ではなく、よそゆきのファッションや和装でおめかしした人々が多く見受けられた。HYDEはインタビューで「着席なのでおじいちゃん、おばあちゃんにも来てほしい」と年配の方々にも呼びかけていたが、実際会場にはライヴハウスでは見かけないようなシニア層や少・中学生のキッズたちも来場していた。開演前の場内には、いつものHYDEのライヴとは違う、落ち着いた時間が静かに流れていく。
開演時間を少し過ぎた頃、場内が暗闇に包まれ、舞台の緞帳がゆっくりと上がっていくと、ステージ後方に3段のひな壇があり、そこに弦楽器、管楽器、パーカッション、コーラス、バンドメンバーからなるJEKYLLオーケストラがスタンバイ。演奏が始まっても、闇の帳で覆われたステージ。目が暗闇にやっと慣れてきた頃、鳥かごライトの薄明かりに照らされ、ハット、衣装、全身ブラックできめたHYDEが目の前に現れ、『JEKYLL』に収録されるジャジーな新曲を歌い出す。“ROENTGEN”のときとは違って、新曲でも歌詞や翻訳は映し出されないので、観客たちは曲が始まったら、座ったままステージの演奏に没入。そうして、HYDEの一挙手一投足。今回のツアーから登場した有線マイクのケーブルの扱い方や、歌に至っては、細やかな息づかいや地声とファルセットのミックス具合、口の開け方、声量コントロール、フェイクの細部に至るまで事細かに観察しようと、全神経を舞台へと集中させていく。
「“JEKYLL”へようこそ。HYDEです。今日はみんな椅子に座っててかわいい。いい子ちゃんですね。ちょっと緊張してる? オープニングで拍手が無かったのはここだけです(笑)。大丈夫よ、遠慮しなくて」
冒頭からそんな挨拶で場内を和ませ、拍手を促すと、観客たちは一斉にステージに向かって拍手を送る。そうして、静かなHYDEの始まりとなった彼の1stソロアルバム『ROENTGEN』、その流れを汲んだ作品として現在制作しているニューアルバム『JEKYLL』が「春に出るんじゃないかという噂です」と伝えたあと、そのアルバム収録曲をこのツアーでは「全曲先取り」で演奏することを告知。「そのアルバムのなかに“かわいい曲”があるんですけど。僕がレストランのシェフになった気持ちで、1年ぶりに来たお客さんを歓迎する。そんなイメージで作った曲です」という曲解説に続いて、新曲「SO DREAMY」を披露。こちらは、クリスマスの夜のディナーを演出してくれそうな楽曲だった。HYDEの歌はラグジュアリーな存在感を放ちながら、聴き手を温かく包み込んで、心地よくスイングしていった。
今回の“JEKYLL”公演はHYDEがインタビューで語っていた通り「ジャジーな雰囲気」というのが全体を通してのサウンドのキーワードとなっている。ジャジーなのに楽曲はエレガントで、グラマラスで、デカダンなテイストも。そんな楽曲たちを、HYDEはヴォーカリストとして喉を細かく使い分け、ハイやロー、ウィスパーやフェイクやファルセット、ほんのちょっとしたブレス音などを効果的に使ったハイレベルの歌唱法で次々と表現していく。さらに驚いたのは、ある新曲を歌うときに披露した口笛。たっぷり時間をかけ、口笛でメロディーを奏でていったところは、場内が息を呑むような緊張感に包まれた。“ROENTGEN”のツアーからさらにレベルアップした歌唱、そこに新たなパフォーマンスも加え、様々な喉を使った表現で、楽曲を彩り、演出して、歌を見せていくHYDE。歌の上手さに加え、彼の歌の見せ方、そのバリエーションをじっくり堪能できるのは、このツアーの醍醐味だ。
また、本公演では『ROENTGEN』の代表曲はもちろん、先にTOMORROW X TOGETHERが歌い、1月26日にfeat.HYDEの形でデジタルシングルとして彼らがリリースした「SSS(Sending Secret Signals)」やL'Arc-en-Cielのあのヒット曲、激しいHYDEのほうでも歌っている中島美嘉への提供楽曲やCö shu Nieとのコラボ曲、MY FIRST STORYとのコラボ曲はHYDEのときとは歌うパートを変えて披露し、さらにはアルバム『HYDE [INSIDE]』収録のヘヴィなあの曲も歌唱。艶っぽくしっとりしたものから激エモーショナルなナンバーまで、今回の“JEKYLL”ツアーは、幅広いオーケストラアレンジで音楽を楽しませてくれるところも大きな特徴といえる。
公演中、マイクのケーブルを鞭のようにしならせて床に叩きつけ、シャウトしたかと思えば、両方に羽が生えたゴシックなデザインの椅子に腰掛けて妖艶な歌声と表情を届けたり、本編で白い衣装にお着替えもするシーンもあった。鳥かごライトの横に置かれたテーブルにはガラスの水差しがあり、そこからグラスにドリンクを注ぎ、喉を潤したあと、HYDEが「今日は人に押されたり、頭の上を人が転がることもないので(笑)、安心してしっとり、じっくりと音を楽しんでいって下さいね」と観客に話しかける。そのあと「最前列、近いね~」といって、“大宮~”と即興で作った歌を楽しそうに歌いながら舞台の前まで歩いてき、HYDEがそこにちょこんと座り込むと客席からは悲鳴が上がる。そうして「十万石まんじゅう!」と手に持ったお菓子を掲げたあと、そのお饅頭をみんなの目の前でパクリ(笑)。食べた後は「おいしいっ! 大好きなんです、こしあん」と食レポを届ける。こんなHYDEは他では見られない。今回のツアーでは、こうしてHYDEが各地の名産品を食べる“もぐもぐタイム”が恒例となってきている。さらに、今回ケーブルマイクを使っていることにも触れ「僕、イヤモニをしてないんですよ。だから、みんなの咳払いまで聞こえるんですけど。マイクはケーブルのほうが音がいいっていうことでそうしたんですが、めっちゃ邪魔なんです」といって、赤色のケーブルをブンブン床に叩きつける。そのあとに「みんなと赤い糸で繋がってます」と甘い言葉をつぶやくと、そんなチャーミングなHYDEに観客はメロメロになり、客席からは盛大な歓声が湧き上がった。
『JEKYLL』のなかから、“ROENTGEN”ツアーでも披露していた「SMILING」を披露したあと、ニューアルバムについて触れ「“SMILING”は傷ついた心に雪が降ってきて癒やしてくれるというせつないお話しなんですけど。人生、なかなか上手くはいかないですよね。そういうものを背負って…、前作が25年も前ですから。30歳ぐらいからいろいろ山あり谷ありじゃないですか。人生って。そういうものが詰め込まれてて、深い感じがします」とアルバムの手応えを話した。続けて、自身の誕生日である1月29日に新曲「THE ABYSS」をシングルとしてリリースするという話題へ。「誕生日に発売する曲が“THE ABYSS”、奈落の底。C/Wは“LAST SONG”。僕のソロの始まりは“EVERGREEN(初回限定盤CD )”の棺桶ジャケット(笑)。そういうのが多いんです」とデカダンスずくめのHYDEの美学に触れたあと、コンサートは「EVERGREEN」の歌唱から後半戦へ。
照明を浴びたミラーボールの煌びやかな細い光が場内を包み込んでいったところから、ライヴはHYDEの独壇場だった。そうして、<HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR>で血まみれになりながら壮絶なパフォーマンスを届け、あのツアーの象徴となっていた「LAST SONG」を“JEKYLL”ツアーでも披露していたのには驚愕! HYDEとJEKYLL、表と裏となる作品、二面性。それを形を変えながらも、ものすごい熱量で表現していったパフォーマンスはまさに衝撃。体中がしびれるほど圧巻のひと言だった。凄絶な歌とパフォーマンス、HYDEの美学で、静かなるHYDE。その精神的なロックを可視化して、オーケストラツアーをとびきりのエンタテインメントなショーへと昇華してみせたHYDEに大感動。曲が終わると、客席にはスタンディングオベーションが湧き起こった。
「最高のステージができたと思います。誕生日に向けていいスタートがきれたのはみなさんのおかげです」
終演の挨拶を届けたあとは、舞台の上手、下手の花道まで移動して観客にたっぷり手を振り、投げキッスを飛ばして舞台を後にしたHYDE。
本ツアーはこの後も各地を巡り、国内ツアーは3月31日、4月1日の神奈川・ぴあアリーナMMでの2days公演まで。そこからさらに、5月25日にはHYDEが観光大使を務めるオーストリア・ウィーンへと飛び立ち、日本のロック・アーティストとして初めてウィーンのオーケストラと共演する特別公演まで続いていくので、静にシフトしたHYDEの今回の“JEKYLL”ツアーを絶対に見逃さないで欲しい。
また、HYDEの誕生日である1月29日の東京・ガーデンシアター公演、さらには3月31日、4月1日の神奈川・ぴあアリーナMM公演は特別に、EBISU FLOWER PARKがお花の表現を使ったフォトブースで、会場に彩りを添えるので、来場する方々はこちらもぜひ楽しんでもらいたいと思う。











