神はサイコロを振らない Live Tour 2023「心海パラドックス」
2023年12月17日(日)東京国際フォーラム ホールA
神はサイコロを振らないの「Live Tour 2023『心海パラドックス』」が、12月17日(日)東京国際フォーラム ホールAでファイナルを迎えた。
ニューアルバム『心海』を携えて、大阪・札幌・福岡・仙台・岡山・新潟・名古屋を回ってこの日に辿り着いた、初のホールツアーの最終日。東京国際フォーラム ホールAは、このバンドのワンマンとしては過去最大規模である。
BGMの「Champagne Supernova」(Oasis)が止まり、客電が落ちる。SE的なインストゥルメンタルの「Into the deep」が鳴り始め、ステージに張られたスクリーンに月夜の海が映し出され、その視点が水中に入って行き、水疱が立ち込めると、曲がスッと「What’s a Pop?」に切り替わる──。
という、『心海』と同じオープニングから、「修羅の巷」で本編が終わるまで15曲、プラス、アンコール2曲の全17曲(頭の「Into the deep」もカウントすると全18曲)。13曲が収められた『心海』から11曲、それ以前の作品から7曲。5,000人キャパの東京国際フォーラムに集まったオーディエンスを、神はサイコロを振らないは、1時間50分にわたって魅了し続けた。
「Into the deep」が「What’s a Pop?」に切り替わるのを待たずして叫んだ「ずいぶん待たせたな!跳べるよな東京!」が、この日の柳田周作(Vo.)の第一声。
2曲目の「LOVE」が終わるとすぐSEが出る段取りだったが、突然PCが止まる。というハプニングにも慌てず、「トラブルメーカー、神はサイコロを振らないでございます」「メジャーデビュー日の生配信ライブでも、『泡沫花火』のイントロのピアノでPCが止まって、神サイは今後もこういうことが起きるだろうと思っていたら、ファイナルで起きました!」「逆に慣れてきた」などと言い合って、空気を冷やすことなく切り抜ける。次の「巡る巡る」が始まると、2階席の床が丸ごと振動するほどのジャンプが、東京国際フォーラム ホールAに広がった。
吉田喜一(Gt.)、桐木岳貢(Ba.)、黒川亮介(Dr.)の順にMCをとり、柳田周作が「一階席!二階席!男!女の子!」と分けてコールを求め、レスポンスを確かめる。「このツアーを通して、メンズの増え方に驚愕してる」とのこと。
「みんな歌えるよな?」という柳田周作の問いに、オーディエンスがシンガロングで応えた「Popcorn 'n' Magic!」と、同じく「Clap your hands!」という呼びかけにオーディエンスが即座に応じた「六畳の電波塔」を経ての、次のブロックは、このツアーだけのスペシャルな時間。
バイオリン・吉田翔平とキーボード&シンセ・小林岳五郎が加わった、特別編成になる。この日だけではなく、ツアー全箇所を一緒に回ってきたそうだ。『心海』から「スピリタス・レイク」、神サイが大きく世に出るきっかけとなった「夜永唄」、最初のフィジカルシングル『未来永劫』から「プラトニック・ラブ」の3曲を、この6人で聴かせていく。
その3曲を超えるほどドラマチックに響いた「イリーガル・ゲーム」、そこから曲間なし・同じBPMでつながって始まった「揺らめいて候」を経ての「僕にあって君にないもの」で、オープニングに続く特別な演出が。
ステージ前方にスクリーンが下り、そこにメンバー4人の姿が万華鏡状態で映し出される。リアルタイムのメンバーの姿ではなく、事前に撮ったものを、今の4人と重なるように映しているようだ。歌っている柳田周作の動きを、肉眼と映像をで比較すると、ほぼ合っているけどちょっと違う瞬間があったので、それに気がついた。
今年で結成して8年になった、神サイは本当に人に恵まれすぎている気がする、音楽だけでは今日のこの景色に辿り着けなかった──と、福岡のライブハウスや、スタッフや、サポートメンバーや、イベンターや、この日を一緒に作ってくれているオーディエンスに感謝を伝える柳田周作。その上で、「あと何回こういう景色が見れるのかなとか、あとどのくらいこの4人でバンドできるのかな、みたいなことも、特に最近すごく感じますね」などと言い始めるのが、なんというか、柳田周作らしい。かつてしのぎを削ってきた同世代のバンドたちが、ちょっとずつこの業界からいなくなっていくさまを、特にコロナ禍以降、目の当たりにしてきたことで、そういう気持ちを抱くようになったそうだ。
生きていけばいくほど大切なものが増えていく、その宝物をせめて生きているうちはずっと守りたい。人の命もバンドも、終わりがあるからきっと輝くし、無限じゃないからキラキラするんだろうなと思う。そんな思いをこめた曲です──という言葉からの「夜間飛行」で、「みんなのでっかい声を聴かせてくれますか!」と呼びかける柳田周作。それに応えるオーディエンス。この日何度目かのピークの瞬間である。
と思ったら、続く「タイムファクター」では、ステージ両脇のこのツアーのロゴフラッグが巨大スクリーンに変わり、そこに演奏するメンバー4人の姿が順に映し出された。
びっくりした、この演出には。あったのか、画面。なのに、13曲目まで使わなかったのか。ライブ冒頭も、中盤も、今も、パキッとした発光のLED画面ではなくてスクリーンを使っている、ということにも、なるほどなあと思う。
その巨大スクリーンを活かしたままでの「Division」と「修羅の巷」、生のバンドサウンドが軸になった2曲で、本編は終わった。
アンコールの1曲目は、柳田周作の弾き語りで「告白」。途中で「この曲、次、いつ歌えるかわかんないんで、前に行ってもいいですか?」と言った彼は、ステージの最前方まで行って、アコースティック・ギターを爪弾きながら、マイクなしで歌い始めた。
そして、16小節ほど歌ったところで、3人のバンドサウンドが、その歌に寄り添うように鳴り始める。まだ曲の途中なのに、ものすごい拍手がホール内に満ちた。
東京国際フォーラム ホールAの2階のフロアにまた大きな振動が広がった「キラキラ」で、アンコールも終了。次は、2024年3月から全国28本のライブハウス・ツアー『近接する陽炎』と、それに続く形で全国5都市のZeppツアー『開眼するケシの花』を行うことを発表してから、4人はステージを下りた。
SET LIST
OP. Into the deep
01. What's a Pop?
02. LOVE
03. 巡る巡る
04. Popcorn 'n' Magic!
05. 六畳の電波塔
06. スピリタス・レイク
07. 夜永唄
08. プラトニック・ラブ
09. イリーガル・ゲーム
10. 揺らめいて候
11. 僕にあって君にないもの
12. 夜間飛行
13. タイムファクター
14. Division
15. 修羅の巷
ENCORE
01.告白
02.キラキラ