長年にわたり数多のヒットソングを手掛けている渡辺 翔、シンガーソングライターでありながらベーシストとしても活躍するキタニタツヤ、様々な楽曲を歌いこなすボーカリスト・sanaの3人によるバンド、sajou no hana。彼らが2019年にスタートさせた自主企画イベント「沙上の夜」の4公演目となる「沙上の夜 act2」に、People In The Boxが ゲストとして招かれる。これまでワンマンライブ、配信シングルを中心としたセットリストのライブ、アニメタイアップ曲を中心にしたライブなど、多岐にわたる方向性で展開している同イベント。「act2」の行方を探るべく、sajou no hanaとPeople In The Boxのドラマー・山口大吾との鼎談を実施した。
※取材は2020年2月中旬に実施
※取材は2020年2月中旬に実施
──sajou no hanaによる自主企画イベント「沙上の夜」は2019年に3公演行われています。それぞれ趣向の違うイベントになさった意図とは?
渡辺 翔(Key/Mani)バンド方面に向けた活動だけでなく、アニメ方面に向けた活動もしているので、その特色が出たイベントにしたいなという意図があって。
キタニタツヤ(Ba)アニメタイアップはアニメの世界観を重要視して作るし、配信限定でリリースする曲は自分たちの音楽を追求しているので、どちらも大事なぶんどちらかに偏っているとは思われたくなくて。自分たちのスタンスをはっきり見せたい、わかってもらうためのイベントですね。僕ら3人の感性が反応して、願わくば僕らよりも素晴らしい音楽を持っていて、いい音楽を作る人たちなら、今後もどんなジャンルの人とも共演したいですね。勉強させてもらいたいです。
sana(Vo)2019年5月の「沙上の夜 act1」は初ワンマンで初ライブだったので、本当に未知への挑戦で、とにかく緊張して(笑)。
渡辺sanaちゃんと僕は初めてのステージだったし、おまけにお客さんがどんなリアクションをしてくれるのかわからなかったから……ガチガチでしたね(笑)。
キタニ2019年11月、12月に新代田FEVERでやった「沙上の夜 side A」と「side B」までの間に訓練を重ねて(笑)。数少ないライブ活動のなかで、sanaさんがボーカリストになったなと。彼女はこの3人のなかでいちばん飲み込みが早いんです。
sanaワンマンのステージはお客さんがすごくあたたかくて、緊張しながらもそこで安心感を得られて。「side A」と「side B」は勢いだけはなく、いろいろ構成やMCも考えたりして……でもまだいろいろと空振ります(笑)。
キタニライブのセットリストや構成のたたき台は彼女が作ってるんですよ。今年の2月にイベントで出演した幕張メッセのステージでもすごく堂々としてて、成長したな~……って(笑)。バンドの筋がしっかりしてきて、ようやく胸を張れるようになった。次のライブはもっといいものを見せられると思いますね。
「ドラムが輝いてるバンド」を考えて出てきたのが、10代の頃から大好きなPeople In The Boxでした(キタニ)
──そして迎える「沙上の夜 act2」のゲストバンドがPeople In The Box。山口大吾さんがsajou no hanaの楽曲「誰のせい」のドラムとドラムアレンジを手掛けているご縁だと思うのですが、もともとどういう流れで山口さんと制作することになったのでしょう?
キタニアレンジを作っている僕に、外部からの刺激がほとんどないなと感じてて。そんな時にマネージャーが「ドラムを誰かに頼んでみる?好きなバンドを教えて」と言ってくれたんです。「ドラムが輝いてるバンド」を考えて出てきたのがPeople In The Boxでした。10代の頃からピープルが大好きで――だから僕にとっては“大吾さん”というより“ダイゴマン”なんですけど(笑)――だめもとでオファーしたら受けてくださったんです。
山口大吾(People In The Box/Dr)接点も浮かばなかったし、畑違いのアーティストからのオファーだったので、オファーをもらった時は「なんで僕なんだろう?」という戸惑いも少しあって(笑)。でもピープル以外の場所で叩く機会が増えてきたことで、自分がドラムを叩く意味を考えることも多い時期だったので、「ドラムアレンジをさせてくれるのであれば受けます」と返事をしましたね。あと、1stシングル(『星絵』)から『あめにながす』の間で、sanaちゃんの表現の幅が広がっていたことも受けた理由のひとつでもありますね。
sanaわ、ありがとうございます。
山口ボーカリストのブレスはドラムパターンに関わってくるなと思っているので、最初めっちゃブレス聴くんですよ。一定のリズムのなかでも抑揚をつけて歌う人だと思ったので、シンバルの種類、スネアのピッチ感、リムショットのボリューム感などを考えていきました。
渡辺僕は自分の強い部分と弱い部分をしっかりと認識していて、リズムは弱い部類なんです。だから僕の作るデモはドラムがラフで、sajou no hanaではふだんキタニくんが考えたドラムアレンジをライブでお世話になっているサポートドラマーに叩いてもらっているんです。People In The Boxはドラムもリズムもコードワークもすごく秀逸なので、「大吾さんにドラムを叩いていただくならコードはシンプルにしよう」と思ってデモを作りましたね。
キタニ「誰のせい」は僕の元にデモが届く前に、大吾さんがドラムアレンジをつけてくださったんです。そこにギターやベースを重ねていって、全体のアレンジが定まりました。だから最初の目論見がうまくいったというか。「こういうアレンジの作り方もあるんだな」という発見がありましたね。
──山口さんも「誰のせい」については「新しい発想でアプローチできた」とツイートしてらっしゃいましたよね。
山口僕が関わっている音楽に関しては、ドラムパターンを聴いただけでどの曲かわかるものを目指しているんです。叩いている最中に「2拍4拍のスネアでもピープルの時とは入れ方が違うな」と感じましたし、どういう人間性で、どういう音楽観を持っているかわからない人の楽曲のなかで、どこまで自分の味を落とし込めるかなと。だから当初自分が考えていたテイストと、完成した楽曲のテイストは違ったんですよ。でもそれが良かったんですよね。新しい感覚を与えてもらえました。
キタニ若いバンドが作品ごとに変わっていくのはわかるんですけど、People In The Boxは今でも変わり続けてるじゃないですか。作る時、そういうことは意識しているんですか?
山口(アーティストは)みんなだいたい「前作よりいいものを作ろう」と考えるじゃないですか。うちらもそれくらいの感覚かな。
キタニ……かっこいい!
山口(笑)。メンバーみんなミュージシャンとして成長してるし、音楽以外の経験も増えていくし。人間としての幅が広がってくると、同じビート感で叩いたとしても音は変わるし、それによって歌も曲の中身も変わってくるのかな。ほかのメンバーが変わるからこっちも変わっていくところもあるし、「新しい自分たちを見つけていこうというスタンス」は、メンバーみんな持ってるんじゃないかなと思ってます。