sajou no hana、初の全国ツアーでの経験を糧に、東京ファイナルで一層パワーアップした歌唱を披露

ライブレポート | 2025.02.07 17:00

sajou no hana LIVE TOUR 2025
2025年2月1日(土)Spotify O-WEST

2024年は新体制で動き出し、約5年ぶりのワンマンライブや初ツアーの開催、各種フェスやイベントの出演など、sana(Vo)の念願であった精力的なライブ活動を実現させたsajou no hana。2025年の年明けから開催された「sajou no hana LIVE TOUR 2025」は、sanaの出身地である神奈川公演を皮切りに計4都市を回った。サウンドを支えるサポートバンドは佐藤 丞(Dr)、齋藤祥秀(Ba)、大中美穂(Key)というお馴染みのメンバーに加え、最新曲「THE IOLITE」の作編曲を務めるナノウがギタリストとして参加するという盤石の布陣である。ツアーファイナルのSpotify O-WEST公演では、この1年でさらに力を蓄えたsanaの姿を見ることができた。

冒頭から「淡く微か」「青嵐のあとで」「天灯」と立て続けにアッパーな楽曲を力強く可憐に、すがすがしい笑顔と美しい所作でもって瑞々しく歌唱する。sajou no hanaの楽曲の多くは前メンバーである渡辺翔とキタニタツヤがアニメやゲームに書き下ろしたタイアップソングだ。サウンドや歌詞、メロディに色濃くタイアップ作品のエッセンスが刻み込まれている。それを歌声で彩るsanaは、楽曲やタイアップ作品の持つ空気を大切に表現するだけでなく、目の前の観客に届けることも諦めない。彼女が歌も音楽もアニメもゲームもsajou no hanaを求める観客も愛してやまないからこそ、それぞれに敬意を持ちながら邪念のない歌声を響かせられるのだろう。

「メーテルリンク」のアウトロでバンドメンバー紹介をしたsanaは「緊張していたけれど(ファンの)皆さんの顔を見て安心できました。このツアーでそれぞれの土地のエネルギーを吸収してきました。そのパワーを今日は全部ぶつけていきます」と意気込み、sajou no hanaのライブでは初披露となるソロでの歌唱参加曲「Heaven's falling down」でたくましいボーカルを響かせた。その後は激情的な「影裏」、細やかなリズムと琴線に触れるメロディがきらめく「メモセピア」、柔らかさの中に感傷性も宿す「ハイドレート」、アダルティなムード立ち込める「Hypnosis」と、異なる魅力の楽曲でグラデーションを作り出す。sajou no hanaの振れ幅の広さが鮮やかに華やいだセクションだった。

MCでsanaは昨年9月に開催された初ツアー「Pastel」の渋谷2days公演が、初日が夜で翌日が正午開演だったと振り返り「過酷だった」と笑わせると、「今日は余裕を持ってライブができています」と安堵の表情を浮かべる。その後は“バンドメンバーと仲良くなろうのコーナー”と題し各メンバーと“最近のビッグニュース”をテーマにしたトークを展開。齋藤は12月に行った手術の経過が良好であること、大中は自宅で遭遇した心霊現象を明かし、3日前に誕生日を迎えた佐藤は2020年に開催されたsajou no hana自主企画ツーマンライブ「沙上の夜 act2」以来のSpotify O-WEST公演に「ワンマンでこんなに人が集まってくれてうれしい」と喜びをあらわにした。今回のツアーでsajou no hanaのライブに初参加したナノウは「いい曲ばっかりで(ギターを弾くのも)すごく楽しくて、もう終わっちゃうのか……と寂しい」と告げ、このツアー期間の合間に風邪や結膜炎、副鼻腔炎を患ったことを明かす。sanaと各メンバーとの会話のキャッチボールのファニーな空気感が会場を和ませた。

sanaが趣味である知育菓子作りの話に花を咲かせた後はアコースティックセクションへ。ナノウのギターに乗せて「切り傷」を、大中のピアノに乗せて「星絵」をじっくりと届け、楽曲にしたためられた感情の深部まで観客たちを引き込む。再びフルバンドに戻ると幻想的な「繭色」でさらにその要素を強め、「極夜」で熱く真摯に歌い上げてしなやかに「ニューサンス」へつないだ。観客のクラップも軽快に響き、再び音楽を通して観客とのコミュニケーションを愉しんだ。

「ここからラストスパートです。まだまだ暴れ足りないんじゃないですか? 東京の皆さんまだまだ騒げますか?」と観客を煽ると、「99.9」「1」とTVアニメ『モブサイコ100』シリーズのオープニングテーマをたたみ掛ける。『モブサイコ100』がsajou no hanaとsanaがタッグを組み続けた作品であることに加え、観客がコールやシンガロングできる箇所が多数盛り込まれているため、会場に大きな躍動感を生み出した。続けてTVアニメ『異修羅』の第1期オープニングテーマ「修羅に堕として」と第2期エンディングテーマ「THE IOLITE」で本編を締めくくる。バンドの熱量を追い風にして堂々と歌い上げる姿は非常に頼もしい。なかでも「THE IOLITE」は初めてsanaが作詞を担当した楽曲ともあり、ナノウの作る重厚感とタフネスを感じさせるサウンドと相まって、彼女が歌詞にしたためた願いが歌に色濃く表出していた。sajou no hanaが新境地へと果敢に挑んでいく。そんな姿勢を明確に標榜した一幕だった。

アンコールでは新情報としてsana本人が作詞にも参加した新曲「溺愛」(ゲーム『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 水と光のフルランド』主題歌)が3月13日にリリースされること、現在年内のライブを鋭意調整中であることを告知する。そうして披露された「溺愛」は緩急が効果的に用いられたセンチメンタルかつエモーショナルな楽曲で、sanaの情感豊かなボーカルも存在感を放っていた。

年明けから自身のファンと顔を合わせられたことに喜びを示したsanaは「普段はひとりで作業をすることが多いので、ライブで皆さんを目の前にすると、ちゃんと自分の歌が届いているんだなとうれしくなるし、みんなとのつながりを感じられて。自分の人生にとって大切な時間になっています」と会場に足を運んでくれた観客たちへ感謝を告げる。その後披露された「グレイ」ではフロアからクラップや穏やかなワイパーが起こり、夕暮れを彷彿とさせる寂しくもぬくもり溢れる空間が広がった。

「2025年もノンストップで駆け抜けていきます!」と笑顔を浮かべて5人で挨拶をするとバンドメンバーがステージ袖に下がり、ひとり残ったsanaは「今までのツアーはここで終わりだったけど、今日はツアーファイナルに来てくれたみんなに、マイクを通さない生の声をお届けしたいです」と告げる。そして「sajou no hanaとしてデビューする前、何者でもなかったわたしに、音楽で生きていく楽しさを教えてくれて、常に背中を押してくれた大切な曲です」と続け、2016年に37名義で参加し、デビューするきっかけとなった「99」を、マイクを通さずにアカペラで一部歌唱した。2014年に当時中学生でオーディションに合格してから約10年。大人になった彼女がシンガーとしてのキャリアをスタートさせた初楽曲を、心を込めてまっすぐ歌う様子に、人間としての深みが滲んでいた。

sanaがソロでリリースした楽曲から前体制と現体制のsajou no hanaの楽曲まで、彼女のアーティストとしての歴史を盛り込んだ「sajou no hana LIVE TOUR 2025」。今後彼女がどんなステージを見せ、どんなクリエイターとタッグを組んでどんな楽曲を生み出していくのか。2025年の活動への期待が高まる、ポジティブなツアーファイナルだった。

SET LIST

01. 淡く微か
02. 青嵐のあとで
03. 天灯
04. メーテルリンク
05. Heaven's falling down
06. 影裏
07. メモセピア
08. ハイドレート
09. Hypnosis
10. 切り傷(アコースティック)
11. 星絵(アコースティック)
12. 繭色
13. 極夜
14. ニューサンス
15. 99.9
16. 1
17. 修羅に堕として
18. THE IOLITE

ENCORE
01. 溺愛
02. グレイ
03. 99(アカペラ)

sajou no hana LIVE TOUR 2025・東京公演のセットリスト

Spotify Playlist

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公演情報

DISK GARAGE公演

シルフィウムvol.4

2025年3月28日(金)青山RizM

出演:sajou no hana / 前島麻由

チケット詳細

RELEASE

「THE IOLITE」

配信Single

「THE IOLITE」

2025年1月16日(木)SALE

※TVアニメ『異修羅』第2期エンディングテーマ

詳細はこちら
「溺愛」

配信Single

「溺愛」

2025年3月13日(木)SALE

※ゲーム『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 水と光のフルランド』主題歌
  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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  • 撮影

    “SUGI” Yuya Sugiura

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