sajou no hana LIVE TOUR "Unfold"
2025年11月28日(金)Spotify O-WEST
黒を基調とした衣装に身を包んだsanaは、バンドメンバーとともに冒頭から「修羅に堕として」「つもり」「Parole」と新旧のロックナンバーを立て続けに届ける。楽曲の世界をより生々しく表現した激情的な歌唱と美しい所作は、ひりついた演奏との相性もいい。「メーテルリンク」ではクラップを促すと観客もそれに応え、力強く爽やかな空間が生まれた。
前回のツアーファイナルも同じくO-WESTだったと述懐するsanaは、ツアータイトルの由来に触れる。そして「自分が不器用であることにずっと悩んできたけれど、いろんな人からあたたかい声をいただけるようになった」「不器用ながらも自分らしく突き進んでこれて良かった」「この先もどんどん展開していきたいと思います。そんな前に進んでいく覚悟を見せられるツアーにしたいです」と健やかな笑みを浮かべると、観客からは大きな歓声が沸いた。
ステージ前方に乗り出して晴れやかな歌唱を響かせた「天灯」では、バンドメンバー紹介のソロ回しも爽快に鳴り響く。ドラマチックなロックナンバー「青嵐のあとで」では楽曲の物語を躍動的にボーカルで作り出し、「ハイドレート」では陽だまりを想起させるソフトな歌声で観客を楽曲の世界に包み込んだ。その後もsanaが作詞に参加した激情的なロックナンバー「溺愛」、グルーヴィーなリズムが効いた「閃光」、清涼感と気品を併せ持った「コバルト」とカラフルで硬派なステージを繰り広げる。アウトロでsanaが袖に下がるとバンドメンバーの演奏の熱がさらに上がり、前半パートからクライマックスをたたみかけるが如く、エモーショナルなパフォーマンスを見せた。
バンドメンバーと同じグッズのTシャツにチェンジしたsanaは、4人に「来年の私生活の抱負」を問う。齋藤は「友人からの誘いを断らない」、佐藤は「スカイダイビングなど、高いところから飛ぶ体験をたくさんしたい」、大中は「来年こそ普通運転免許を取りたい」、ナノウは「契約しているだけのジムに通う」と明かし、最後にsanaも「料理を頑張りたい」と表明した。小気味よい会話のテンポからも、以前よりもメンバー間の親交が深まっていることがうかがえた。
ナノウのエレアコのストロークが効いた「メモセピア」、sanaのアカペラからスタートして大中がピアノでそれを支えた「ここにいたい」と2人編成のアコースティックセットを披露して観客を心地よい音色で包み込んだ後は、再びバンドセットに戻りバラード「切り傷」へ。切なさも喜びもふんだんに含んだ音色と歌声は、ぬくもりに満ちていた。
するとここで、この日のゲスト・岬なこをステージへと招き入れる。今年sanaが岬へ歌詞を提供し、岬のデビューアルバムではsajou no hanaのメンバーでもあった音楽プロデューサーの渡辺翔が岬に楽曲提供をするなど、sanaと岬は接点が多い。sajou no hanaのワンマンライブでゲストを招くのは初であると明かしたsanaに、岬は「ずっとsajou no hanaのライブに行きたいと思ってたけどなかなかタイミングが合わなくて、初参加がステージの上になっちゃった」と返して会場を笑わせる。そしてsanaは「このツアーでカバーしていたなこちゃんの楽曲を一緒に歌いたい」と切り出し、ナノウが岬に提供した「HURRAY!」をふたりで歌唱した。可憐な歌声で瑞々しいミドルナンバーを彩る様子は、ふたつの花が揺れるのを眺めるように心あたたまるものだった。
さらに岬の楽曲「つぎはぎの世界」をふたりで情感豊かに歌い上げると、岬は同曲の仮歌をsanaが担当し、音源で彼女がコーラスで参加していることに触れ、来年リリースする2ndアルバム『Repeated Reflect』の収録曲「Push the Trunk」にsanaが歌唱参加していること、同曲が12月12日に先行配信されることを発表する。sanaも同曲の制作者が渡辺翔であることを明かし、岬も「この曲については配信されたあとにまたどこかでたくさん話したいね」と今後を示唆した。
sanaが歌詞を提供した「SHINE BRIGHT REVOLUTION」で会場を盛り上げて岬がステージを後にし、再びピンボーカルとなったsanaは「まだまだ暴れ足りないんじゃないですか！？」と観客を煽り「淡く微か」「ニューサンス」「THE IOLITE」とバラエティに富んだロックナンバーでさらにギアを上げていく。勢いは止まることなく「99.9」「1」でさらに熱量を高め、途中テンションが上がったsanaが齋藤にアイコンタクトを取りに行くシーンも見受けられた。バンドメンバーに対して控えめだった彼女が、それだけライブを楽しめるようになり、音楽を通してメンバーと心を通わせられるようになったのだろう。これも彼女がひたむきにsajou no hanaの活動を続けてきたからこそ作ることができた景色と言っていい。
「今年は新しいことにたくさんチャレンジした1年になりました」と人生初の作詞や歌詞提供など様々な経験をした1年間を振り返るsanaは、そのなかで限界を超えてしまい、ディレクターに相談をしてなんとかそれを乗り越えた旨を明かす。そしてこの日ゲスト出演した岬へ感謝を告げ、sajou no hanaの輪が広がったことを噛み締めた。「来年は皆さん、期待しててくださいね！ 楽しいことがたくさんあります。これからももっともっと絆を深めていけるように、sajou no hanaはどんどん前へ前へと展開していきます」と笑顔で表明すると、「グレイ」と「いきるひとびと」で穏やかなエンドロールを描く。彼女の等身大の歌声も、観客のラストのシンガロングも、とてもすがすがしかった。
再びステージに現れた岬は「sanaちゃんと観に来てくださった方々がお互い“楽しい”をぶつけ合っている空間がすごく幸せだなと思った」とこの日の感想を語り、sanaも「わたしもなこちゃんとずっと歌いたいと思った」と充実感を伝える。岬は「一緒に歌う曲もあるから、いつかsanaちゃんもわたしのライブにゲストで来てほしい」「まだ全然決まってないけど、そういう未来があるかもしれないと思うとわくわくするよね。また一緒に歌えますように」と夢を語り、sanaもそれに同意した。
最後ひとりステージに残ったsanaは「来年のsajou no hanaももっと頑張るのでよろしくお願いします！」と満面の笑みで手を振り、ステージを後にした。きっと来年は、彼女が苦しみを乗り越えて作り上げたものに触れられる機会をたくさん持てることだろう。sajou no hanaの2025年の成長と拡張を実感できたツアーファイナル。ひとつの到達点を迎えた彼女が咲かせる花がどんなものなのか、来年の展開に期待したい。
SET LIST
01. 修羅に堕として
02. つもり
03. Parole
04. メーテルリンク
05. 天灯
06. 青嵐のあとで
07. ハイドレート
08. 溺愛
09. 閃光
10. コバルト
11. メモセピア
12. ここにいたい
13. 切り傷
14. HURRAY!（with 岬なこ）
15. つぎはぎの世界（with 岬なこ）
16. SHINE BRIGHT REVOLUTION（with 岬なこ）
17. 淡く微か
18. ニューサンス
19. THE IOLITE
20. 99.9
21. 1
22. グレイ
23. いきるひとびと
