Guiano Live 2025「Hold Me Tight」
2025年7月6日(日)Veats Shibuya
“ドゥクン ドゥクン”という「Hold Me Tight (yourself)」のイントロの心拍音が会場に流れ、高揚感が高まっていくなかバンドメンバーが登場。1曲目「死んでしまったのだろうか」のイントロのシンセが流れ始め、Guianoが現れると会場は大歓声に包まれた。笑顔でピースサインをしたり、客席に手を振ったりしながら歩くGuiano。ちょっとコードに足を取られる瞬間もあったが、それも飾らない彼らしいと思った。
この日のライブは終始、大歓声と大合唱が会場に響き、観客はGuianoの一挙手一投足に反応し、手を伸ばして揺らし続けた。ステージと客席の間を隔てるものは無く、アーティストと観客がまさしく1つになれた空間。まるで仲の良い友人同士でカラオケに来たかのような、そんな一体感に包まれていた。
「今日はよろしく」とラフに挨拶をし、次に「アイスクリーム (アルバムA ver)」を繰り出す。早口のラップパートなど身振り手振りを織り交ぜながら「クリエイター」を歌い、つぶやくような歌から一転、力強く“がなる”ような声も聴かせる。「Da Ba Du」では軽快なリズムに体を揺らしながら、イントロや間奏の〈ダン ダン ダン〉を大合唱。実に楽しそうに観客と声を合わせる様子も印象的だ。
最初のMCでは「開口一番に言うことじゃないけど、今日も“野太い”ね!感謝感激です」と、男子ファンの多さに嬉しそう。観客のノリの良さにも表情を輝かせ、「いつものように人生哲学をぶちかます感じじゃないね。ハッピーで行きましょう。僕も歌って踊りまくります」と言って、間髪入れず「ネハン」に突入した。
「ネハン」はアツいボーカルと疾走感あふれる楽曲。観客は仏像のハンド(OK)サインを掲げながら、曲中の“エセ説法”を一緒に唱えて楽しんだ。歌詞映像を映し出されみんなで歌った「風」。「藍空、ミラー」ではクジラが空を飛ぶMV映像を映し出し、サビの〈ラララ〉をみんなで歌い、曲に合わせて〈おいっ!おいっ!〉とコールする。Guianoも目をつむって天井を仰ぎながら歌い、渾身のロングトーンに会場が沸いた。
中盤は、理芽とのコラボ曲で会場を盛り上げる。観客が理芽の代わりに歌って、さながら“Guiano feat. 観客”といった様子。「空っぽなら、踊ろうぜ」ではステップを踏みながら、リズムのキメに合わせてジャンプしたGuiano。牧歌的な雰囲気の「言っちゃいけないことばっか浮かぶよな」では、Guianoの“せーの”の合図でサビの合いの手〈yeah〉を叫んで会場が1つになった。
曲が終わると「ありがとう」「最高」などの声が飛び、「みんな声出てるね。いい顔してる」と応えたGuiano。この日は撮影OKで「バシバシ撮ってくださいね」と優しく語りかけると、あちこちから「目線ください!」との声が上がり、会場全体に目線を流してまるで撮影会。こういう垣根の無い、ファンサービスもまたGuianoの魅力だ。
中盤のMCでは、「自分のやりたいことをやってステージに立ててる今が幸せだけど、たまにわからなくなって、自分を否定してしまうときがある。褒められると疑いから入ってしまって、良くないことだとわかっているから、自分を責めてしまったり。自分は幸せなのか、どこにいるのかわからない。確かなのは、音楽で食べていくという夢のなかにいるということ。でも昔の悪夢と呼ぶべき経験が、未だに頭から離れず、もしかしたらまだその悪夢の延長にいるのかもしれないとさえ思ってしまうときがある。そんな悪夢を少しでもかき消すために、僕は音楽をやっているのかもしれない」と一人語りしながら、アコースティックギターをおもむろに肩にかけて後半戦がスタート。
後半戦はまず“悪魔”2連発。弾き語りと打ち込みが融合したカオティックなサウンドの「悪夢」は、声を震わせながら冒頭を弾き語りで歌い、〈あーはははっ〉というコーラスを全員で声を合わせた。「詞を書く化物」はマイクを握りしめて繰り出し、まるで絶叫するような激しいボーカルが印象的。また「カーテン」では「嫌なことも一緒に歌ってかき消そうぜ」と声をかけ、サビで大合唱が巻き起こった。
“夏曲コーナー”と題したコーナーでは、しっとりとした雰囲気と哀愁感が漂うボーカルに、歪んだシンセベースの音色が意表を突く「あの夏の記憶だけ」。「冷たい人間と、夏の悪魔」では、〈ウィアー ウィアー〉と歌う観客の合いの手と掛け合いが会場に響き、最後はピアノと共にフェイクとアドリブを交えたボーカルを聴かせて歓声が飛んだ。そして、どこか日本的な情緒を感じさせるメロディが特徴の「透過夏」ではスクリーンに花火などの夏の情景が映し出され、Guianoの「歌ってくれ!」との呼びかけに、理芽のパートや最後の〈ラララ〉を歌う観客の大合唱が響き渡った。
ライブ本編は残り2曲というところで、このライブのタイトル「Hold Me Tight」について「“抱きしめてあげる”ことは、自分にとってとてつもなくデカいことで、すなわち他人も自分も愛してあげるということ。(5月にリリースした)EP『Hold Me Tight (yourself)』には『(yourself)』と付いていて、聴いた人が自分自身を抱きしめてあげてほしいと思って付けた。今日のこの場は『(yourself)』が付いていないわけで、要するに“抱きしめ合おうよ”ってこと」と説明。続けて「俺にとっての“Hold Me Tight”や“愛する”ことは、誰かに傷つけられても傷を付け返さない、優しさや勇気のこと。それが、俺がずっと追い求めている歌です。誰かから傷つけられたとしても、自分の代で終わらせる勇気と強さを持ってほしい。付けられた傷を自分で抱えて、そんな自分を愛して生きて行ってほしい」と、熱くメッセージを届けると、会場からは自然とGuianoを賛える拍手が沸き起こった。
「傷まみれになって泥まみれになって、それでもまた一緒に合唱できたら、それってどんなに強いか、どんなに優しいかの証拠でしょう。最後にそれをみんなで共有しましょう。最後ぶちかまします!ついてきてください!」。しっとりとした始まりから、アッパーに変化する「月」では会場に〈おいっ!おいっ!〉コールが上がり、ラストの「Hold Me Tight (yourself)」では、“ドゥクン ドゥクン”とイントロのSEが流れて、ライブ冒頭の伏線を回収すると「みんな歌ってくれ!」と言って大合唱。みんなの声をもっとよく聴くために、イヤモニを外して歌った姿に胸があつくなる。そして、今のこの空間をその全身に焼き付けるかのごとく、〈なんて綺麗な空だろう〉という最後のワンフレーズを、力を振り絞った渾身の歌声で歌い上げた。
アンコールでは、4月にリリースした「スーパーヒーロー in 2025 (feat.重音テト)」、6月にリリースした「光線歌(feat.重音テト)」を披露し、「ボーカロイドコーナーはどうでした?」尋ね、大歓声で応えた観客。そして最後のナンバー「星くずのうた」を歌う前には、「みんなできると思うけど」と言って、コーラスの練習を。もちろん完璧にマスター。観客が大合唱する〈大きな世界 小さなわたし〉に、イヤモニを外して耳を傾け、もうみんなのことが愛しくてたまらないといった、何とも嬉しそうな表情。一体感を越え、もはや一心同体といった雰囲気でシンガロンして、このライブを終えた。
この日は、来年3月8日(日)東京・LIQUIDROOMを含む、東名阪ツアー「Guiano Tour 2026」の開催を発表、それに向けアルバムを制作していることも明かした。「また次に会うときまで、頑張って生きて行きましょう!」。アーティストとファンという関係を越えた“同志”たちによる、共感と思いやりが埋め尽くした、実に温かく心地いい空間。自己肯定感が下がったときは、またここに来てGuiano成分を摂取して、生きる力に替えたい。
SET LIST
01. 死んでしまったのだろうか
02. アイスクリーム (アルバムA ver)
03. クリエイター
04. Da Ba Du
05. ネハン
06. 夜、眠るため
07. 風
08. 藍空、ミラー
09. 空っぽなら、踊ろうぜ
10. 言っちゃいけないことばっか浮かぶよな
11. 悪夢
12. 詞を書く化物
13. I Don’t Wanna Know
14. カーテン
15. あの夏の記憶だけ
16. 冷たい人間と、夏の悪魔
17. 透過夏
18. 月
19. Hold Me Tight (yourself)
ENCORE
01. スーパーヒーロー in 2025 (feat.重音テト)
02. 光線歌
03. 星くずのうた