幕が下りた瞬間に死んでもいいと思ってやってます
──ゆきむら。さんがライヴをやるとき、もっとも心がけていることというと?
まだ全然未熟なので難しいんですが、終わった後に幕が下りた瞬間に死んでもいいと思ってやってます。だから僕、連続でライヴがあるときとか、ツアーとか大変なんですよ。本当にそういう気持ちでやってるから、はっきりとした記憶も残ってないんです。全部出し切って、終わった後にはチーンって感じなんで。ゆきむら。のライヴは会場の一体感が凄いというのはよくいわれるんですけど、多分僕は1対1で届けてる感じなんです。視覚的にはたくさんいますけど、たくさんの人に伝えなきゃという感覚でライヴはやってない。だから、独特な世界観をもったライヴですねともいわれたりするんですけど。あまり僕はそこは意識したことはないです。
──それでは、第3形態となったゆきむら。さんがこの先目指すところは?
よく“邪道を王道に変えたい”といってるんですけど。コンプレックスとか生き辛さとか全部をひっくるめて、最後は愛されたいし愛したいです。それがアルバムなのかライヴなのかは分からないけど。商業チックに売れてやる、みたいな感覚はないです。そこにいてくれればいいってみんながいってくれるから、じゃあ座りますっていって、ここにいるだけだから。素直なのかわがままなのか分からないけど、変な嘘はつけないんですよ。本当に。アルバムを買う人もライヴに行く人も、自分の時間を費やす訳だから、それに対して「売れたいから」とか「有名になりたいから」とかの理由で、その人の時間を削るのは失礼だし、クズだなと思うから。僕は少なくとも、そこに伝えたいもの、メッセージぐらいは持っておきたいと思うんです。逆に、伝えたいものさえあればなにをしてもいいと思う。法に触れなければ。だから、みんなも人生1度しかないんだし、突っ走っちゃっていって欲しい。そう思うからこそ、僕もいけるところまでいきたいんです。でも、具体的に東京ドームをやりたいとかはないんです。空っぽのお客さんが来ても違うなって思うから。
──空っぽのお客さんというのは、なんとなくノリで来てみた、流行ってるから来たというような人たちのことですよね。
僕が命削ってるからなのか、僕のファンはみんな、命削ってここまでついてきてくれてるんですよ。だから、僕自身もなんとなくって感じじゃなくて、ライヴに来てくれてる人みんなと人間同士で本気でつながりたいと思ってるんです。そういう意味では、僕は商業向きではないと思
います。
います。
特にこの時代、みんな心細く生きてるからこそ、そういう心にフォーカスした活動をしていきたい
──10代の頃、何も考えずに毎日歌うの楽しいなって思っていた女子高生時代と、いまこうやって命を削ってアーティスト活動をやってる自分。どちらが生きている実感がありますか?
いまのほうですね。得てる感覚よりも、失ってる感覚が多いからですかね。ちゃんとそこで傷ついてるんで。傷って痛いじゃないですか。
──はい。そして、ゆきむら。さんの場合、傷つけば傷つくほど、それが血肉となり、自分を突き動かすエネルギーとなる。
ああ~。劣等感が強いから、傷つくとどこかで見返してやりたいって思う。それがエネルギーになってますね。僕からみたらみんな綺麗すぎて、世界が不自然なんですよ。みんな、隠したがりすぎると思う。リスナーとかも“こんな自分なんか死ねばいい”といって、自分をすごく卑下してるところがあるんですよ。でも僕からしたら、魅力的に映るんです。どんなことで悩んでるのかを聞くと、別にそれは恥じるような内容ではないんです。みんな意味があって悩んでる。何か目標を掲げれば傷つくこともあるし、愛するからこそうまくいかないことだってある。そういう悩みは僕、すごく魅力的に感じるんです。人はそういうところはあまり多くは語らないけど、僕はリスナーさんからそういう悩みを打ち明けられたとき、グッとくるんです。この人はちゃんと傷ついて、ちゃんと自分と戦って、ちゃんと地に足をつけようとしている人間なんだって思うから、僕は信頼できる魅力的な人だなと思うんですけど。世界はそこに蓋をするんです。するからこそ、僕がその筆頭として突破口を開いて、“こんな人生でもいいんだよ”と。ジャケットじゃないですけど、真っ裸になったら、みんな同じ人間なんだよというのを、いま特にこの時代、みんな心細く生きてるからこそ、そういう心にフォーカスした活動をしていきたい。そうしたら、最後にはみんなが“ゆきむら。がいてくれてよかった。ありがとう”といって笑ってくれる。じゃあやっぱ悩んで良かったじゃんって。そこで一緒に切磋琢磨した時間って、めっちゃエモくね?俺ら最高じゃね?ってなるから。だから、苦しいときこそ、一緒にいたいと思う。じゃないと、笑顔の意味が分からないですからね。
──笑顔って、そこに至るまでのその人のことを考えたら。
重たいです。僕は笑ってる人を見ると、泣いてるところを想像してしまうんで。笑ってるからといって、その人が元気だとは限らないんで。
──そこまで見て、感じとってくれるのがゆきむら。さんなんですね。2025年2月、勝負となる東京ガーデンシアターの空間では、ステージと観客でどんな1対1のコンタクト、対話が繰り広げられるのか、楽しみにしています。