クジラ夜の街、2nd EP「青写真は褪せない」では緻密に計算された新しい音楽性を体現、ライブではどんなファンタジーを創造するのか?彼らが描く2024年の青写真についても聞く

インタビュー | 2024.06.18 18:00

──このタイミングでクジラ夜の街にとっての音楽とは何なのか?が再定義される感じもしますね。
宮崎そうですね。これは音楽を作り始めた頃の自分に聴かせてあげたい曲になったなと思いますね。きっとびっくりしてくれるんじゃないかな。あと、僕としては「失恋喫茶」って曲はキャリアの中で一番お気に入りの楽曲が書けたと思ってて。今までリリースしてない曲を含めると100曲ぐらいあると思うんですけど、その中で一番いい曲を書けたんじゃないかなと思ったんです。
──宮崎さんの「いい曲」の基準が表れていると。
宮崎僕は手法が新しい曲が好きで、この歌詞は人の恋愛を第三者視点から、しかも“失恋喫茶”っていう架空の箱モノを見立てて、俯瞰で見つめるっていう、ほかにあまり例を見たことがないというか、新しい境地だなと思ったし、それがファンタジーを作るバンドっていうモットーとか方向性にもフィットしていて。かつ僕はウェットなものよりもどちらかというとドライなもの、ハートフルなものよりもドライなものが好きなんですよ。それはお笑いも映画もマンガもアニメも音楽もそうなんですけど。この「失恋喫茶」は無理に泣かせようとしているような歌詞も出てこないし、常に淡々と第三者視点で誰々と誰々の失恋みたいなのをシニカルに語ってる。なのになぜかどこかで切なさみたいなのがあったりっていうのが、自分が作っておいてなんですけど、何度も読みたくなる歌詞だと思って。早く聴いて欲しい曲です。
──退職とかは最近代行サービスがありますけど、別れの代行はさすがにね?
宮崎はい(笑)。

宮崎一晴

──そういう場所を作っちゃったんですね(笑)。
宮崎そそそ(笑)。これ眠っているときに見る方の夢の中での事なんですけど、友達と「金を稼ごう」みたいな話をしていて(笑)、どんなサービスをしたらお金稼げるかなとなった時に「失恋代行サービスなんかいいんじゃないか」って話になていて、起きて「おもしろ!」と思って、じゃあ失恋のお店とかあったらいいかな?というところから始まったんで、その運命的な巡り合わせも踏まえてめちゃくちゃ好きな曲です。
──そういう意味で堀り甲斐のある曲が多すぎるEPで。
宮崎それは意識したというか。今話した4曲にプラス1曲を合わせて5曲でどういうことかなって出来上がったあとの感想なんですけど、バンドって手軽なものなんですよね。音楽形態の中でもかなり手軽なもので、誰かコードA鳴らして、ベース音のA鳴らしてそれに合わせてやってっていう、適当が許されるんですよね。それはそれでカッコいいんです。で、今までのクジラ夜の街ってさっき佐伯も言ってたんですけど「なんか良くない?」っていう感覚を頼りに作ってきたバンドだったと思うんですよね。もちろんちゃんと頭使って考えるところもあったと思いますけど。
──すごい緻密だと思われているような。
宮崎(笑)。意外と最終的にはノリだとか勢い、直感を信じて一発目に鳴らした音とか、その信念に基づいてやってきてて。そういうバンドが一旦その直感を疑おうみたいなフェーズに入ったっていうのはクジラ夜の街の一員としてもすごく興奮することだし、クジラ夜の街っていうのをちょっと俯瞰で見つめても、バンドにとって、いい方向に行くなって。この青盤(青写真は褪せない)は作ったらこっちの方が僕は音楽としてかなり好みだったので、クジラ夜の街に向いているのはきっとちゃんと考えて、直感を疑っていく方向なんだなと思いましたね。それはライブツアーでの裏切りみたいな、裏を表にして行く作業みたいなのと同じで。今まで常識だと思ってたものやステレオタイプ的に刷り込まれていたものを裏返しにかかる作業、その一番最初がこの青盤になったんじゃないかなと思います。
──それはライブにも期待が募ります。初のホールライブ「7歳」はどんなライブにしたいですか?
佐伯ホールライブというのは想像がついてないんでちょっと楽しみですね(笑)。初めて舞台監督さんがついてるんですけど…。
宮崎ここに関しては当然いいものが出来上がるとは思います。手の込んだギミックじゃなくてもMC中の一言とかですべてがひっくり返るようなとか、それができるのが僕らだと思うので。すべてがフィクションだったとか、ファンタジーを作るバンドだからこそできる感動みたいなのがきっとあると思うので、それをホール公演でぶつけてみたいなっていうのがあります。
──今回初めて見るっていう人も楽しめそうですね。
宮崎そうですね。一個ちょっと考えてるやり方みたいなのがあるけど、曲は曲でシンプルなところはシンプルにして行くべきだと思うんですよね。変なテコ入れみたいなのをせずに曲は曲でちゃんと盛り上げていくっていう。ただ、枠組みみたいなところを考えるのが自分の仕事かなと思うので、それはちょっと試してみたいことが一個あります。
──秦さんがメジャーデビューの時におっしゃってたテーマパークがだんだん近づいてくる気がします(笑)。
あ〜、すぐそこかもしんないですね。“クジランド”(笑)。

秦 愛翔

宮崎まあでもプレイヤーとしてカッコいい演奏することだけじゃない?
そうですね。僕、自分のドラムセットを買ったんですよ。それでTAMAとエンドース契約させていただいて、それは夢のひとつだったんですね。これは僕の勝手なイメージかもしれないですけど、ある種の登竜門っていうか知名度も必要だけど技術がないと入れないところだと僕は思ってるんですよ。そこに認められたから嬉しい反面、人前で恥ずかしい演奏はできないなっていう気持ちもあって。「7歳」でもそれにふさわしい演奏をしたいですね。それに最近、自分でドラムを始めたっていうファンの人が増えてきて、そういう人たちの期待に応えるようなドラムを叩くためにも七歳って結構大事な一つの区切りなのかなと思ってるんで、いい演奏をします。
山本僕はその音楽の中で一晴が演出を考えて、それで人を感動させるじゃないですか。で、僕は例えば物理学的なこの倍音成分が人をどう感動させるのか?っていうのを考えるのがすごい好きで、テクノロジーと人の感情が結びつくところがめちゃくちゃ好きなんですよ。だから僕はそのために配線とかもめっちゃ研究していて(笑)。自分が創りだすテクノロジーと人の感情が合わさった時に出る感動と、一晴の考える発想と感情が混ざった時におこる感動が、うまく合わさるライブにできたらなって思います。
佐伯僕は薫みたいに難しいことを考えてライブをしてないんで、のほほんと弾いてるんですけど、自分も観に来てる人も楽しめるライブにしたいですね。
──全員ある種違うベクトルを持っているのが見てて楽しいんですよね。
宮崎バンドは同じ方向を向いてない方が面白いと思いますね(笑)。

山本 薫

佐伯隼也

宮崎一晴

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