長年影響を受けてきた人、ルーツミュージシャンって、現役から退いてるケースも少なくないですからね。デイヴィッドは今も第一線で活躍している音楽家ですし、今後もグラミー賞を重ねるような方と競演できるのはとても光栄です。
最初は、デイヴィッド・フォスターの名前を知らずに、彼の作った音楽を聴いていました。エアプレイ(デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが結成したユニット)を聴いて、なんて洗練された音楽なんだろうって驚いたのを覚えています。僕は映画音楽が好きなんですが、『セント・エルモス・ファイアー』の音楽も好きで、よくぞ、サントラ盤を出してくれましたって、のめり込んで聴いていました。
シカゴの『Chicago16』を聴いてからですね。打ち込みの使い方も当時としては画期的で、とても素晴らしい作品でした。『Chicago16』は音楽シーンを変えた1枚ですよね。調べてみると、プロデュースをしたのがデイヴィッドで。遡って『Chicago15』『Chicago14』を聴くと、『Chicago16』が際立ってるんです。それ以前の作品にはデイヴィッドが関わっていませんでした。つまり僕が好きなのは、Chicagoを甦らせたデイヴィッド・フォスターなんだと気づいたんですよ。それ以降、自分の好きになる曲は、デイヴィッドがプロデュースしている楽曲が多いことを自覚しました。コアーズというバンドで、いいなと思った曲もデイヴィッドが関わっていましたし、ここまで自分の肌に合う音楽家はいないんじゃないかと思っています。
そう感じてもらえるのは、僕が彼に影響を受けたからですね。
計算されているところと、でありながらなめらかで自然なところです。デイヴィッドは転調を駆使しているんですが、「どうだ、オレの転調はすごいだろう」というところがないんですよ。もちろん計算してのことでしょうけれど、メロディを最大限活かす転調になっていて、どんなに複雑なことをやっていたとしても、サビはわかりやすいメロディになっている。音楽を熟知していないと、ああいう作り方はできませんね。
デイヴィッドによって、楽曲の作り方が根底からひっくり返されました。彼の音楽を知ってから、過去の楽曲を振り返ると、自分の稚拙さが目に付くようになりました。メロディというよりも、おもに楽曲の構築の仕方です。自分の作る曲の計算のなさ、仕掛けのなさに打ちのめされて、そこから作る曲がガラッと変わりました。『PRIDE』は変わりつつある中で制作した作品です。デイヴィッドの名前を認識する前にも影響を受けていて、「Chicagoってすごい」と思っていた時期に、影響されて作ったのが「MY Mr.LONELY HEART」(ソロでの1stシングル。1987年リリース)でした。デイヴィッドの作り方を本格的に意識するようになって作るようになったのが「はじまりはいつも雨」などの一連の流れです。まあ、でもLOVE SONG辺りはすでにそうでしたね。