ランクヘッドの結成20周年を祝う〈ALL TIME SUPER TOUR〉が、いよいよ佳境に入って来た。2019年のうちに前半の10公演を終え、2020年は1月12日からツアーを再開し、目指すは3月12日のファイナル、渋谷TSUTAYA O-EAST。昨年7月19日、恵比寿リキッドルームで「奇跡のソールドアウト」をやってのけたバンドは、再びファンの力を借りて新たな高みへと驀進中だ。道は険しいが、バンドに関わる誰一人として下を向く者はいない。日本一あきらめの悪いバンド、ランクヘッドの最新語録を聞こう。
たくさんの人たちの愛を、忘れちゃってたんですね。数字にとらわれて。(小高)
──2019年の年内で、20周年ツアーがちょうど折り返しということで。前半戦の印象、手ごたえは?
小高芳太朗(Vo,Gt)どういう切り口で行きましょうか。いいほうと悪いほうと、どっちもあるんですけど。
──いいほうで行きましょうよ。20周年ツアーということで、そもそものモチベーションも高かったと思うし。
小高そもそものモチベーションの話をすると、前回のリキッドルーム(7月19日)の件が大きいですね。
合田悟(Ba.)あの時点で、20周年ツアーのスケジュールは仮の状態だったので。本当にできるの?と。
小高リキッドルームが売り切れて、眠っていたランクヘッド・ファンが立ち上がってくれたおかげで、「20本頑張ろう」と決心できたのは7月に入ってからです。あの時のみんなの動きのおかげで、20本回れるぞ、グッズも作れるぞと。物理的にも助けられたし、あとはみんなの気持ちですね。ディスクガレージにもたくさんサポートしてもらったし、ずっとお世話になってきた、本当にたくさんの人たちの愛を、忘れちゃってたんですね。数字にとらわれて。
──ああー。
小高俺らはもう必要とされてないのかな、とか思っちゃってたから。でもこんなにたくさんの人に支えてもらってたんだなって、動員やお金のこと以上に、お客さんがどうやって俺らと出会って、一緒に生きてきてくれたか?ということを、SNSでみんなが発信してくれたから。マンガを描いてくれたり、長いブログを書いてくれたり、それが俺らの財産だったんだということを思い出させてくれました。
合田忘れていたというわけじゃないけど、小高が言ったように、そういうものを思い出させてくれたのが、2019年でしたね。長いことやってると、ルーティンというか、ツアーやって、アルバム出して、またツアーやって、という中にいると、忘れてくるものがあるような気はしていて。僕らもそこに、よくも悪くもハマってたんだなということに気づいたんですよね。
小高昔、(山下)壮がブログに書いてたんですけど、「長くやってると、人が数字に化けちゃう」と。まさにそういう感覚だったのかもしれない。何枚売れたとか、どんだけダウンロードされたとか、動員が前より落ちたとか、全部数字じゃないですか。それはそれで大事なんですけど、それだけではないことを思い出させてもらった年でしたね。
今回のセットリスト、ものすごく激しくて、毎回新鮮だし、すごいですよ(合田)
──今回のツアー、セットリストは、9月に出た『ALL TIME SUPER BEST』を中心にして?
小高20周年のツアーなので、本数も20本、本編も20曲やろうと言って、それって俺らにとっては多めなんですけど。どのぐらいだろう?ベストからは14、15曲やってますかね。
合田お客さんの満足度は高いと思いますよ。
小高今まで、そういうセットリストでやってこなかったんで。すぐ飽きちゃうから。
合田なるべく自分らの気持ちをフレッシュにしたいんで、変えていこうというのが今までの流れだったんですけど、今回はベストの中から多めにやろうという感じで、今のところは来てますね。
小高細かいことを言うと、ベストの中でも“これは絶対やろうよ”という曲があって、「夏の匂い」「白い声」「体温」「カナリアボックス」とか。俺らが飽きたとしても、ほとんどの人にとってはその日が最初で最後だから、“絶対聴ける”という曲があると嬉しいと思うんですよね。そこはちゃんとやろうというツアーですね。その上で意外な曲も入れつつ、という感じかな。それで前半10本やってみたんですけど、俺、この間、ナンバーガールを豊洲PITに見に行ったんですよ。なんとかチケットを手に入れて。まさにこれなんですけど。
──あー、グッズのパーカー着てる(笑)。
合田毎日のように着てるんですよ(笑)。
小高俺がすごく思ったのは、「全部固定のセットリストでやってくれ」と思ったんですよ。ファンとして。もし自分が行けなかった日に、死ぬほど聴きたかった曲をやられたら、めちゃめちゃ悔しいから。
──わかる。
小高と思った時に、「あ、そういうことか」と思ったんですよ。何回も通ってくれる人は、いろんな曲をやったほうが喜ぶと思うんですけど、一か所しか行けない人には、代表曲を絶対にやることは大事なことなんだなという、ファン目線になって気づきましたね。またナンバーガールのセットリストが素晴らしくて、ベタベタの王道なんだけど、たまに「どえー!」みたいな、ライブ音源しかないような曲もやっていて、バランス感が絶妙だった。だから、俺らもそういう感じになってると思います。ベタベタな選曲の合間に「これ聴けると思わなかった」みたいな曲が入ってる。我ながら、いいバランスだなと思ってます。
合田固定の曲もやりつつ、珍しい曲もやりつつ、でも毎回シチュエーションが違うと気持ちも入れ替わるので。しかも今回のセットリスト、ものすごく激しくて、死にそうな勢いでやってるので、毎回終わった時の感触が違いますね。だから毎回新鮮だし、すごいですよ。ステージ上のエネルギーはどないなっとるんだ?っていうぐらいのライブだと思います。これが30本だと、たぶん死んでますね。
小高桜井(雄一)さんが、インスタに1曲フルで上げてたりするんですけど、見てて疲れるんですよ(笑)。「なんだこの人たちのテンションは?」みたいな。俺、めっちゃ叫んどるもんね。
合田しんどないんかな?って、横で見よるよ。
──そこはもう、後先考えず。
小高そうですね。たとえばこの間の横浜と高崎の2連チャンで、明日高崎もあるからと思って、手を抜けないですよね。
合田しかもスタッフ一人だけだから、物販もメンバーがやらなきゃいけない。ライブが終わってもそっちに出てるから、1日が一瞬で過ぎる。でもこの年でまだそれができてるのは、ありがたいことだなと思います。余裕しゃくしゃくでやるのは、それはそれで楽ですけど、「俺らっぽくないな」と思ったりする自分もいたりして。まあでも、楽はしたいですよね(笑)。
小高俺はボーカルだし、喉のケアしなきゃいけないから、ライブの前後はあんまり物販に出なかったんですけど、そうも言ってられないし。ただ、出てきてほしくない人もいると思うんですよね。遠い存在であってほしいとか。でもそこでお客さんが、いろんなことを伝えてくれるので、それはすごく嬉しいですね。