フジジュンのライブ終わったら、ど~する?#16 「MUCCと川崎の中華はガチ!歴史と誇りが裏付ける、独自のスタイルと媚びない姿勢」

コラム | 2025.09.02 18:30

Photo:にしゆきみ

「MUCCはガチ!」と、昔から言い続けてきた俺。言ったら、ガチじゃないロックバンドなんていないけど、MUCCの喧嘩(ライブ)と武器(楽曲)の強さはズバ抜けてると思う。もっと言うと、密室系から始まって、進化変化を続けながら独自の音楽スタイルを貫き続ける媚びない姿勢とか、攻撃の手を止めない緩めないストイックなバンド活動とか、ライブに向き合う真剣味とか緊張感とか、夢烏(ムッカー/MUCCファン)の異常な愛とか熱量とか。どこを切っても清々しいほどガチで、こんなバンドはなかなかいないと思うし。「MUCCじゃなきゃダメ!」と、心底惚れ込むファンの気持ちもよく分かる。

そんなMUCCが、今年4月に17枚目のオリジナルアルバム『1997』をリリースした。自身の結成年でもある数字をタイトルに冠し、“90年代”をテーマとした今作。アルバムをコンスタントに17枚出し続けてきた歴史だけ見てもガチだけど、これがまためちゃくちゃカッコ良くって。個人的には2025年、最も聴いてるアルバム(6月現在)だったりもするのだが。最新作を引っ提げて、全国15箇所18公演を回った『Daydream 1997』ツアーのファイナル公演が、川崎・CLUB CITTA'で行われるとあれば、行かずにはいられない。

アルバムインタビュー時、「ツアーはアルバムの曲全部やって、『蘭鋳』とか『G.G.』やって。『1997』もやりたいから、それで終わりだよね(笑)」とミヤ(Gt)が話してたが。予告通り、今回のツアーでは新曲を軸にアルバム世界を見事に体現して、最新型のMUCCを見せつけてくれた。生の演奏や観客の反応を見て、アルバムの新曲たちを完全補完出来た感のあるライブは、改めてMUCCはガチだってことを確認させてくれた。

超満員のチッタに期待と緊張が充満する中、仄暗いステージにサポートメンバーの吉田トオル(Key)とAllen(Dr)が登場。メンバー不在のまま、『1997』の1曲目「Daydream」でライブの幕を開けると鍵盤の音色にブレイクビーツが重なり、やがて激しく展開するインスト曲のけたたましい生ドラムをバックにメンバーが登場。アルバム世界に自然と誘うOPから、「桜」でライブが本格スタートすると拳が上がり、ヘドバンの波が起き、ど頭からフロアに狂騒の渦が巻き起こる。

「invader」、「蜻蛉と時計」とMUCCの王道感がありつつ、90年代の匂いをさせるラウドでヘヴィな新曲が続くと、「ツアーファイナルだぞ、チッタ!」と煽るミヤに、会場中がクラップを合わせて「G.G.」へ。ツアーで鍛え上げた新曲とライブ定番曲が入り混じり生まれる、新しい印象や化学変化にニヤニヤしてると、荘厳なシンセサウンドとネオンカラーの照明から「B&W」へ。ダンサブルなビートにシリアスさを含む、楽しいだけのダンスロックにしない楽曲の切り口が斬新だし。逹瑯(Vo)の歌やメロディ感、YUKKE(Ba)のグルーヴィーなベースも新鮮に光るこの曲で、再びアルバム世界へ引き戻す。

「ビジュアル系のMUCCです」と逹瑯が告げて、90年代ヴィジュアル系の魂を受け継ぐ「Round&Round」でヒリヒリした空気を醸すと、「最後まで思い切りMUCCを感じて帰って下さい」と美しくエモーショナルな「October」でオーディエンスを魅了。凶暴な4つ打ちサウンドでブチアゲる「Boys be an Vicious」から、ダークな「Guilty Man」で地獄に突き落とすと、80'sポップスを彷彿とする「LIP STICK」ではショルダー・キーボードを背負った吉田がフュージョン調のソロを弾き、アルバム収録の超個性的な曲が続く中盤戦。

圧巻だったのは、アルバム終盤に収録された新曲たち。壮大かつ重厚な演奏に乗せて、逹瑯が孤独や絶望とその先にある微かな光を感情たっぷりに歌う「不死鳥」から、圧倒的演奏力と構成力で広く深い楽曲世界を表現する「△(トライアングル)」、ミヤのギタープレイが深い闇の奥底まで引きこむ「蒼」と続く流れは、組曲のような物語性とスケール感にすっかり惹き込まれ、興奮状態でステージに釘付け。さらにたっぷり余韻をもって始まったのは「愛の唄」。ひとつアルバムの鍵を握る重要曲であり、いまのMUCCを象徴するこの曲が異常な説得力をもって艶めかしく響く。

音源と異なる並びやアレンジ、そして生ならではの迫力やリアリティで胸に迫る新曲たちに大満足すると同時に、『1997』の新曲たちの新たな魅力に気づけたことや、音源とライブを重ねることで補完出来た喜びを感じてた俺。「俺たち、あなたたちの未来にお互いがなくてはならない存在であり続けられるように」と逹瑯が告げて始まった「空っぽの未来」に会場中の気持ちがひとつになるのを感じると、諦めに近い歌詞さえ前向きに聴こえて。『1997』のアルバム世界をみんなで共有出来たことの嬉しさや、サブスク全盛のこの時代にアルバムを作ることやリリースツアーを行うことの意味や意義や重要さも改めて感じた。

「ニルヴァーナ」、「名も無き夢」と続き、クライマックスを迎えたライブ終盤。本編ラストは、アルバムのラストを飾る「Daydream Believer」。ドラマチックな演奏に乗せて、キャッチーなサビに観客が歌声を合わせる光景は実に美しく、こうして命を燃やせる瞬間があることを本当に愛おしいと思う。たとえ、それが一夜限りの夢だとしても。

アンコールのMCでは、「このツアーはいままでのツアーで一番、短く感じました。いや~、足んないわ!」と訴えるミヤと「ホントに一瞬に感じるツアーだった」と同調するYUKKEに「どんだけストイックで貪欲だよ!!」と驚かされつつ。これがMUCCのガチたる所以!と納得。「いろんな曲をアレンジしてやってきたアンコールだけど、この曲がMVP!」とミヤが話し、YUKKEのポエトリー・リーディングや吉田のピアニカ演奏と凝りに凝ったリアレンジver.を披露した「最終列車」から、「1997」、「蘭鋳」でフロアをぶっ掻き回して、混沌と狂乱の中でツアーをフィニッシュ。ここからは多くのフェスやイベントへの出演が発表されているMUCC。十分な気合いとツアーで鍛え上げた新たな武器、ここまで積み重ねてきた歴史と誇りを携えた現在のMUCCが、全国で大暴れする姿をたくさんの人に目撃して欲しい。

――そして終演後。“ライブ終わったら、ど~する?”ということで、「ガチのライブを観た後は、ガチのメシが食いたい!」と、チッタの裏通りに移動した俺。川崎駅から“チネチッタ通り”を経て、クラブチッタへと向かう道はすっかりおしゃれになって、街のやさぐれ感もすっかり薄れてしまったが。一本路地に入ると、ちゃんと昭和の香ばしい雰囲気を残してくれてるのが川崎の街。ラ チッタデッラの裏には“ガチ中華”と呼ばれる、日本人に媚びない本格中華が食べれるお店がたくさんあるのだが。この日は「延香園」という本格中国東北・四川料理のお店に行くことに。

ガールズバーのキャッチのお兄ちゃんをすり抜けて、雑居ビルの4Fにあるお店に入店すると想像よりも綺麗な店内に正直、拍子抜け。ながら、店員さんの案内で奥の席に向かうと、賑やか店内に飛び交うのは中国語ばかり、おそらく日本人は俺だけ。その状況にワクワクしながら着席して、まずはビールと店内に貼られたメニューを見ると、生ビールに何かつまみのついたサービスメニューがあるんだけど。え?中国語で書かれてて読めない……。

そこで、登場した文明の利器。スマホでメニューを撮影して翻訳をかけると、そのメニューが“チキンネック=鳥首肉串”であることが判明。なんて便利な時代! 同時に翻訳されてる“羊の卵串”や“羊銃”って何? という疑問は一旦置いといて。さっそく店員さんを呼んで、生ビールセットを注文。タブレットを開いて、メインメニューを選ぶことに。

マストで注文しなきゃいけないのは、この店の名物である羊肉串。最近は東京でもジンギスカン屋が珍しくないけど、羊肉の串焼きを食べるのは初めて。他の串焼きメニューを眺めると“牛血管”に“カイコ”と見慣れぬメニューが並び、「ガチ中華は挑戦したいけど、カイコはなぁ……」と尻込みする俺。するとそんな中に見つけたのが“羊金玉焼き”と“羊のチンチン”と書かれたメニュー。あ! “羊の卵串”と“羊銃”ってそういうこと!?

他で食べられないメニューを注文してみたいところだが、俺が選んだのは一番人気の酸辣湯。酸辣湯なんて珍しいメニューじゃないけど、一番人気ってことはよっぽど美味いんだろうとハードルを上げて料理を待っていると、まずは羊肉串が到着。楽しかった今日のライブに一人で乾杯して、さっそく羊肉串をいただくと……なにこれ、めちゃくちゃ美味ぇ!!

身の締まった羊肉の旨味を引き立てる独特なスパイス。これはなんだろう、クミンがメインで、唐辛子とか数種類のスパイスが味の複雑さを出してるんだろうな。後で調べたら、羊肉とクミンの組み合わせは紀元前17年のメソポタミア文明の時代からあって。中華料理では一般的に使われているそう。へぇ!逆になんで日本では使われてないんだろ、こんなに美味いのに!! ちなみに鳥首肉は……美味しいんだけど、骨がゴツすぎて食べづらかったのと、鳥首肉とは書いてあるけど、なんの鳥か分からなくって。「これ、食べ慣れたニワトリの肉じゃないよな」と思って怖かったというのが正直な感想(笑)。

そして、今日のメインとなる酸辣湯が登場!食欲をそそる良い匂いのスープをひとさじ食べると……うわ~~、美味いっ!なんだこれ、俺の知ってる酸辣湯と違う!!酸辣湯っていうと酢のようなツンとした酸味があって、後から辛味がくるイメージだけど。イヤな酸味は全然なくて、最初に来るのは旨味の洪水。そこからじわっとくる辛味もたまらなく美味いくて、もうひと口、もうひと口と食べる手が止まらない!あれ~!?日本人に媚びない、パンチの強いガチ中華を食べに来たつもりだったのに、これ、普通に美味すぎでしょう!!

酸辣湯の具材は豆腐と卵ときくらげと……それくらいは分かるけど、あとは何が入ってるか分からない。全然知らない具材が入ってる可能性もあるけど、全部美味い!あまりの美味さにビールも進んで、青島ビールを追加して。ハフハフと酸辣湯を貪り食っては、ジャブジャブとビールを流して、ガチでメシと向き合う俺。締めに白ご飯を酸辣湯にぶっ込んで、おじやにして食べたんだけど、これがまた絶品!川崎で出会ったガチ中華は中国の歴史と誇りを感じる、ガチで美味い酸辣湯でした。MUCCもガチだけど、川崎の中華もガチ!

「このお店が絶対美味いことは分かったから、次は友達連れてきて、いろんなメニューを試してみよう」と心に決めて、大満足でお店を後にした俺。「そのまま帰っても良いんだけど、もう一杯かな?」と川崎の路地裏をふらふら。男には帰れない夜がある……。

公演情報

DISK GARAGE公演

LuV Together 2025

2025年9月6日(土)水戸市民会館 グロービスホール

チケット発売中!
>>イープラス

出演:cali≠gari / DEZERT / デラックス×デラックス / lynch. / MUCC (順不同)

MUCCメンバー完全プロデュース生誕公演 2025

2025年11月5日(水)CLUB CITTA’

チケット一般発売:2025年10月18日(土)12:00

出演:MUCC / La’Mucc

その他イベント情報

■Crazy Monsters Halloween Party 2025
2025年10月26日(日)新宿 ReNY
出演:Crack6 / Moi dix Mois / 鬼龍院翔 / IKUO / 輸血子 (MUCC YUKKE) / 司会 NoGoD団長

チケット一般発売:2025年6月21日(土)10:00

■MUD FRIENDS 2000〜2025
2025年11月13日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
出演:MUCC / Psycho le Cému / Waive

チケット一般発売:2025年7月6日(日)10:00

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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