インタビュー/兵庫慎司
世界各国で高い評価と人気を集める、映像と身体表現を融合させたパフォーミング・アーツ・カンパニー、enra(エンラ)が9月8日〜10日、世田谷パブリックシアターで新作公演『VOYAGER(ボイジャー)』を行う。音楽監督に金子ノブアキを迎えたこのステージが、enraにとっていかに新しいトライアルであるか、主宰の花房伸行とパフォーマーの石出一敬に訊いた。
金子ノブアキさんとは宇宙観、死生観が近かった(花房)
花房 enraの公演って、今まで作り貯めた作品を、音楽のライブのように1作品を1曲として考えて、曲を並べて上演するっていう形でやっていたんです。
でも、今回のこの『VOYAGER』は、最初にコンセプトを決めて、ゼロから90分の公演を作って、それ自体をひとつの作品とする…スタイルとしては、演劇だとか、映画だとかに近いというか。そういうコンセプトで作る初めての公演になるんです。
もともとそういうことをやってみたかったんですけど、enraの作品って、作るのに時間がかかるので。公演ごとにゼロから作るってわけにはいかなかったんですけど、結成5年目のこのタイミングで挑戦してみようって思ったんです。
やっとそれぐらいの経験値が貯まってきたかな、って。ストーリーも、これをやろうって言った時点であらかた決まっていて。
──そのストーリーとは?
花房 基本的には宇宙を旅して行くっていうストーリーなんです。enraって、言葉を使わないっていうのが条件にあって、複雑なストーリーは表現しきれないんです。なので、映画とかお芝居みたいに複雑なものではなく、地球を旅立って、宇宙の果てまで行くっていうすごくシンプルな構成にしたんです。その旅の中で、観客のひとりひとりが、自分の想いを入れ込んでもらえるような感じにしています。
最初に僕が全体の構成を考えたんですが…今回、恵まれたことに、金子ノブアキさんに音楽監督で入っていただいて。金子さんに作っていただいた曲を、その構成の中にはめて行ったりとか、金子さんも構成に合わせて、新しく曲を作っていただいたりとか。
──そもそもの彼との接点は?
花房 最初にご一緒したのは、金子さんの「Firebird」って曲でコラボレーション作品を作ったんです。もともと仕事上で僕と金子さんの共通の知り合いがいて、「何か一緒にやってみたいね」っていうので、その人を介して連絡をとって。
で、実際にお会いしていろいろお話をしていく中で……宇宙観だったりとか、死生観だったりが、とても近かったんですね。好きな映画とか、読んでいる本とかもすごく近くて。
で、意気投合して…「Firebird」をやった時点で、金子さんとまた一緒にやりたいと思っていたんです。で、『VOYAGER』自体、僕が2〜3年前からあたためていた企画で。その音楽の世界観が、もう金子さんのサウンドに本当にぴったりだったので、このチャンスしかないと思ってお願いをしたんです。
石出 金子さん、山ごもりまでしてくれてね。山にスタジオがあるみたいで、そこで数日間かけて曲を作ってくれたんです。
花房 バンドのメンバーとの合宿で、『VOYAGER』用のサウンドを作ってくださったんですよね。PABLOさん(ギター)と草間敬さん(マニピュレーター)──実際に世田谷パブリックシアターでは、そのバンドの生演奏で公演をやります。