取材・撮影/加賀生馬
9月7日、東京都・世田谷パブリックシアターでenra新作公演「VOYAGER」のゲネプロが行われた。
2012年に結成された、映像と人間の動きを極めた独自の表現を繰り広げるパフォーミング・アーツ・カンパニー、enra。映像クリエイターの花房伸行と8人のパフォーマーで構成されるenraは、マーシャルアーツ(武術)、新体操、バレエ、アニメーションダンス、ジャグリング、ハウスなど、さまざまなジャンルの動きを取り入れたパフォーマンスで人々を魅了している。
東京オリンピックの招致イベントでもパフォーマンスを行い、2015年にはカンヌ国際映画祭授賞式のオープニングアクトも務めるなど、今や日本のみならず世界で評価をされているenraは、結成5年にして28ヶ国で公演を行うまでに成長した。
オムニバス的に作品をレイアウトした公演を得意としてきたenraは、今回の新作公演「VOYAGER」で初めてすべての作品が1つのストーリーでつながったスタイルのコンセプチュアルな公演に挑戦。「VOYAGER(航海者)」のタイトル通り、広大な宇宙の旅を美しく、ソリッドに表現している。また、本公演の音楽監督には俳優としても活躍するドラマーの金子ノブアキ氏を迎えており、劇中の音楽のほとんどは金子氏による書き下ろしだ。
本公演では観客も、他の銀河系へ旅立つ宇宙船の乗客という設定である。開演前のアナウンスも「ただ今、機内が大変混み合っております。最終のお客様をご案内しておりますため、今しばらくお待ちください」と宇宙船の機内アナウンスをイメージしたものが流れ、期待感を煽る演出が取り入れられている。
パフォーマーの1人が新体操のリボンを振った瞬間からスタートした1部では、地球の誕生から宇宙空間への旅立ちを描く。スクリーンに映し出された動物や植物、海などの映像が目まぐるしく入れ替わる中で繰り広げられるコンテンポラリーダンスに目を奪われているうちに、背景には歯車と蒸気が映し出される。地球上に生命が誕生した瞬間から、産業革命を迎えてからの人類の繁栄の歴史が直感的に視界に飛び込んでくるようだ。
1部の後半から2部は地球を飛び出し、スクリーンには火星から木星、そして別の銀河へと進む様子を投影。スクリーン上の幾何学模様は、まるでパフォーマーに呼応するかのように光ったり、形を変えたりと、一瞬たりとも目が離せない。ダンスのみならずディアボロ(ジャグリング)や武術などを取り入れた前衛的なパフォーマンスに魅了されていると、あっという間に上演時間が過ぎ去っていた。
さらに、公演中に流れる楽曲はバンドによる生演奏で、東京公演では金子氏自らが力のこもったドラムを披露している姿が印象的だった。
enra「VOYAGER」は東京を皮切りに、札幌、沖縄、広島、山口の全国5都市でツアーを行う。東京公演では音楽監督を務めた金子氏も出演予定なので、この機会に圧倒的な“宇宙旅行”を経験してみてはいかがだろうか。
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