ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016 – 2017「20th Anniversary Live」
2016年12月17日(土)幕張メッセ 幕張イベントホール
●Report:兼田達矢
●Live Photo:MITCH IKEDA
ASIAN KUNG-FU GENERATION 20周年ツアー初日は、ジュビリーなステージになった。
ステージ脇の大ビジョンに映し出される後藤正文の表情には終始穏やかな笑みが浮かんでいた。2002年、ミニアルバム『崩壊アンプリファー』がインディー・シーンで注目を集め始めていた頃インタビューした際、「絶望始まりの希望を歌っていきたい」と語る後藤からは希望への意志よりもむしろあらゆるものに対する苛立ちが感じられたが、彼らのそれ以降のキャリアはその苛立ちを乗り越える道のりでもあったのだろう。アルバム・セールスやライブ動員といった部分での現実的な成功は周知の通りだが、そうした数字的な成功とは別に、自分たちの音楽のリスナーの存在をしっかり実感できることが彼らの苛立ちを解きほぐしたことは想像に難くない。
「20周年のツアーの初日って言ったら緊張するけど、仲間みたいなみんなの前でやるんだから、そんな緊張することはないんだよね」という後藤のMCは、彼なりの感謝の表明であり、ファンとの間にここまで取り交わされてきた音楽的共感の再確認でもあったはずだ。“ASIAN KUNG-FU GENERATIONの音楽をともに楽しめることを、みんなでお祝いしましょう”という思い。それが後藤の笑みの理由だろうし、その思いに貫かれたステージは自然とジュビリーな空気で満たされる。
もっとも、今回のツアーには、11月30日にリリースされたばかりのアルバム『ソルファ』リ・レコーディング盤の内容をライブで楽しむという一面がある。より正確に言えば、『ソルファ』リ・レコーディング盤に収められたバンドの現在をライブの現場で確認するということだ。その視点からこの日のライブを振り返れば、音楽演奏集団としての確かな成長が後藤の苛立ちを解きほぐしたんだろうということにも思い当たるのだった。十分に重心の定まったバンド・アンサンブル、そしてパッションを内に秘めながらその熱情をしっかりとコントロールして真っ直ぐに声に乗せるボーカル・ワークによって1曲1曲の輪郭が以前にも増してくっきりと浮かび上がる。
初期からのファンのなかには『ソルファ』オリジナル盤とリ・レコーディング盤の変化に驚いた人も少なくないだろうが、今回のツアーではそれ以上に、よく知っているはずの曲が以前とは少し違う輝きを放って響いてくることに驚かされるだろう。おそらくは、メンバー自身がASIAN KUNG-FU GENERATION音楽の魅力を再発見、再認識しながら演奏しているに違いない。
ファンの意識のなかに深く刻まれたバンドのイメージをリライトできるのは、“今”を呼吸するそのバンド自身しかいないが、ASIAN KUNG-FU GENERATION は今回のツアーで新しいバンドの現在を更新していくことになるだろう。その意味では、以前からのファンも今回のツアーであらためてASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドと出会い直すことになるはずだ。