ASIAN KUNG-FU GENERATION
Anniversary Special Live “ファン感謝祭2024”
2024年8月24日(土)25(日)横浜BUNTAI
※取材は2024年8月25(日)に実施
伊地知潔(Dr)加入25周年、昨年デビュー20周年を迎えたことを記念して行われた今回のライブは、“この日、演奏してほしい曲”のリクエスト結果をもとに構成。アジカンからファンへの感謝がたっぷりと込められたステージとなった。その根底にあるのは、バンドとオーディエンスの間にある確かな信頼だった。
会場に入ると、横長のステージが目に入ってきた。スクリーンには四棟の団地(「君という花」のMVと同じ建物を、今回のライブのために新たに撮影したそうだ)、そしてステージには植物が生い茂っている。ライブのなかで後藤正文(Vo&Gt)が「土手と河川敷がモチーフ」と明かしていたが、これは彼らの原風景であり、ライブと日常が地続きであることを表現しているのだろう。
開演時間を過ぎると夕暮れを想起させる映像が映し出され、少しずつ客席の照明が落とされる。そして、後藤正文、喜多建介(Gt&Vo)、山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知潔がステージに登場。山田の骨太のベースラインからはじまる「遥か彼方」でライブは幕を開けた。さらにスクリーンにバンド名が映され、「羅針盤」へ。「遥か彼方」「羅針盤」は1stミニアルバム『崩壊アンプリファー』(2003年)の1曲目と2曲目。まさにアジカンの原点だ。続いて披露されたのは、リクエスト1位を獲得した「夏の日、残像」。1stフルアルバム『君繋ファイブエム』に収録されたこの曲は、シングルでもなければタイアップ曲でもないが、リリース当初からファンの間で強く支持されてきた。社会の入り口に立った青年期の葛藤を描いたこの曲は、発表から20数年が経った現在も、生々しいリアリティとともに我々の心を揺さぶり続けている。拳を上げ、熱唱するオーディエンスを見ながら、そのことを強く実感した。
「“これ聴きたかったわ”という待ってました感はうれしいんだけど、俺の喉だけはうれしくない(笑)」「ここ1年くらい、手が上がらなくなったり、体的に苦しんでいたんだけど、ここにきてだいぶ戻ってきて。聴いてもらえればわかると思うけど、“あいつ、声出てるんじゃないか”って」
という後藤のMCの後も、「センスレス」「君という花」などの代表曲、人気曲を次々と演奏。オアシスをはじめとする90年代の洋楽ロックの影響を強く受けながら、日本語によるギターロックの新たな可能性を切り開いたアジカン。深みを増したバンドサウンドによって、その豊かな功績を改めて体感することができた。言うまでもなく、そのことが今回のライブの醍醐味だったと思う。
喜多、山田、伊地知がバックステージに下がり、後藤は階段を上って“土手”の上へ。アコギを手にした後藤は「ソラニン」「ボーイズ&ガールズ」を弾き語りで披露。特に40代半ばになった後藤が歌う〈はじまったばかり/We’ve got nothing〉(「ボーイズ&ガールズ」)というフレーズには強く感じ入るものがあった。
続いて、喜多&山田によるユニット“Cosmostudio”が後藤と喜多が作曲の「ウェザーリポート」、さらに伊地知も加わり、伊地知と後藤が作曲の「冷蔵庫のろくでもないジョーク」も。普段のワンマンとは違う“ファン感謝祭”に相応しいステージが繰り広げられた。