ЯeaL Яock Яevolution vol.10 10th Anniversary
2022年12月17日(土)Spotify O-WEST
ЯeaLの結成10周年記念ワンマンであり、ЯeaLのサポートギタリストを約4年務めてきたYuri(Gt./Cho.)が正式加入して初ライブ。会場のO-WESTは彼女たちの東京初ワンマンが開催された地であり、その公演で前任のギタリストが脱退した過去がある。分岐点を迎えた場所で、紆余曲折を経たうえで“結成10年”や“新体制初”という節目を祝えたことは、彼女たちにとってこの先を切り開く大きな追い風になるに違いない。そう感じたひとときだった。
開場中に流れたAika(Dr./Cho.)の影アナから数分後、幻想的なSEと深い青色の光に包まれたステージへメンバーが登場。Ryoko(Vo./Gt.)のエレキ弾き語りから始まる「ゆらりゆらりゆら」でこの日の幕を開けた。キャッチーなメロディに、爆音の荒々しい演奏。フレッシュで若々しい空気感と、10年というキャリアが培ったスキルやグルーヴのハイブリッドで構成されたサウンドスケープは、観客を圧倒させるには十分すぎるほどパワフルだ。
テンポチェンジやキメが多く取り入れられた「Brilliant escape」もダイナミックな演奏で魅了。Fumiha(Ba./Cho.)は頭を振り回しながらメロディアスな低音をねじ込み、Aikaはラウドロックばりのアグレッシブなプレイを見せる。Yuriもきめ細やかさと瞬発力を併せ持つプレイでリズム隊の作るグルーヴに奥行きや空間を持たせ、そんな嵐のような音の中でもRyokoの鋭利なボーカルは埋もれることなく映えていた。タイヤがはずれる寸前の暴走トロッコのような危うさと、そんなものはものともせずに突き進んでいく度胸。開始2曲から、様々な逆境を乗り越えてきたバンドの生き様が音に表れていた。
MCでRyokoがあらためて観客へYuriの正式加入を伝えると、感極まったYuriは涙を浮かべ、Ryokoは「まだ2曲目やで! 泣くの早いって!」と笑う。前衛3人でテンポのいいトークを展開すると、Ryokoが「話しすぎるから曲で伝えていけたらと思う」と仕切り直し、「ディストラクション・ガール」などを披露。「サイケデリックダンス」は同期や豪勢に動きまわるステージングなど見目ともに華やかに彩り、「強がりLOSER」では硬派なアプローチで観客の意識を掴み、バンドの度量の大きさを見せた。
Ryokoがキーボードとギターを弾き、Aikaがリズムパッドを取り入れてプレイした「エンドロール」、スケールのあるロックバラード「36.8」と内省的な世界へと引き込むと、「Bright」で強い意志表示を体現。ギターロックナンバー「さよならの理由」でそれをブーストさせたあと、ポップでカラフルな「未来コネクション」でハッピーな空間へと誘う。がむしゃらに突き進んでいくなかで悩み彷徨いながらも、それでも前へと進んでいく人間を描いていくようなセットリスト。それはЯeaLの10年間の歩みを凝縮した総集編のようだった。
ライブも折り返し地点を越え、さらに勢力を増していく。Ryokoがハンドマイクパフォーマンスを見せる「カミサマ」などは彼女の存在感のある立ち振る舞いはもちろんのこと、プレイヤー3人のスキルもさらに発揮される。それぞれが思う理想のスタイルやアティテュードをそれぞれが貫くために、全員が一切遠慮をしないところもЯeaLのたくましさのひとつだろう。「カゲロウ」では観客から大きなコールとクラップが起こり、そのテンションを切らさないままドラムカウントからなだれ込んだ「Dead or Alive」ではメンバーも観客のリミッターをはずすように音の渦へと飛び込んでいく。まさに狂乱という言葉がふさわしい熱気だった。
「終わりたくない」とさみしげな表情を浮かべるRyokoは、思いを言葉にし始める。メンバー同士の衝突が多く、前任のギタリストが脱退してメンバーが3人で乗り越えていけるのかが不安で、コロナ禍などのダメージでメンバーにバンドを辞めようと告げたこともあるなど、彼女自身バンドが10年続くとは思っていなかったそうだ。「でも結成から10年を迎えてまたO-WESTのステージに立っていること、新しいメンバーを迎えてここから4人でスタートを切れることがうれしい」と感謝を告げると、「今までのことをなかったするつもりはないし、これまで感じた全部の感情をこの先に持っていきたい」「苦しかったりつらかったり、何度も辞めようと思っても、それでもステージに立って(ファンの)みんなと笑い合いたいと今思えているから、ЯeaLはこの先10年20年続いていくバンドになると思う」と強いまなざしを観客へ向けた。
「この4人でまだ夢を見たいと思っています。もっと大きな会場のステージに立ちたいと思わせてくれるメンバーなんです。すごくいいバンドなので、これからも4人で走り続けていきます」と宣言すると、本編ラストは最新曲「拝啓、あの日の僕へ」。この日いちばんの地に足のついた演奏と泣き叫ぶような情感たっぷりのボーカルで、今の自分たちから湧き上がる強い気持ちを観客へと届けた。
アンコールでは2023年の決定事項を発表。2月の下北沢SHELTERでnano.RIPEとのツーマンライブ「ЯeaL Яock Яevolution vol.11 10th Anniversary -vs- nano.RIPE-」の開催、春のインディーズ時代の楽曲の再録EPのリリース、東名阪リリースツアー「ЯeaL Яock Яevolution 10th Anniversary -EPリリースツアー-」の開催、結成11周年記念日の12月8日に恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブを開催することを伝えると、さらにRyokoは「来年は今年以上に曲を出します。10周年、自分を追い込んで、来年もみんなと楽しんでいきたいと思います」と明言。Yuriも「わたしが加入したことでもっと良くなると思うし、もっと良くしていくのでよろしくお願いします!」と晴れやかに語るなど、今後の活動に向けた気合いをあらわにした。
この日の最後に披露した「光になれない」では歌詞を一言一言噛み締めながら歌うRyokoの、感極まった表情が印象的だった。ファンへのメッセージとも捉えられる言葉が並ぶ同曲。なかでもこの日に聴く《一緒に光まで行こう》という歌詞は、非常に意味深かった。様々な苦境を乗り越えたどり着いた結成10周年と、そのタイミングで迎えた新体制。2023年はさらなる彼女たちの快進撃を体感することができるだろう。
SET LIST
01. ゆらりゆらりゆら
02. Brilliant escape
03. ディストラクション・ガール
04. サイケデリックダンス
05. 強がりLOSER
06. エンドロール
07. 36. 8
08. bBright
09. さよならの理由
10. 未来コネクション
11. カミサマ
12. re:call
13. Unchain My Heart
14. カゲロウ
15. Dead or Alive
16. 拝啓、あの日の僕へ
ENCORE
01. Jumping more
02. 光になれない