「いつもの毎日に、胸高鳴る音楽を」というコンセプトのもと2018年12月に立ち上がったライブイベント『MUNETAKA』が、この夏サーキットイベント『MUNETAKA SPECIAL 2019』として初登場。TSUTAYA O-WEST、O-nest、O-Crest、duo MUSIC EXCHANGE、7th floorの5会場で開催された。
総勢42組のラインナップにはディスクガレージ社の特色を生かしたオールジャンルのアーティストがそろい踏み。なおかつまだ新進気鋭の若手を中心にブッキングされており、なかには全国デビューをしていないアーティストも多数。ゆえに開場した12:30のタイミングにも早耳のリスナーたちが多く揃っていた。
東京でここまで広いジャンルのサーキットイベントを見かけることは少ないし、ここまで幅広いと10会場以上の規模で開催されることが一般的だ。だがそこを5会場までアーティストを厳選するところに、コンサートプロモーターならではの手腕が光る。
観客も女性シンガーソングライターのファンであろう人々もいれば、ガールズバンドのファン、ギターロックバンドを追いかける女子たちの姿も。アーバンスタイルなバンドを好むであろうファッショナブルな人々もいた。そして世代も様々だ。
そんな多彩な客層のなかにも共通点があった。それは大体の人々がライブハウスというものが日常的で、馴染みを持っているであろう空気感をまとっていたということだ。その雰囲気は土曜の渋谷の街の空気ともよく合っていて、「せっかくの休みだしひとまず渋谷に行ってみようかな」というノリで、「サーキットイベントやってるみたいだし、好きなアーティストも出るし行ってみようかな」で訪れたであろうテンションの人々が多かった。まさに「ふらっとやってきた」ような装いの人々が多い。
開場から終演までの約9時間で少しずつライブハウス間を往来する客層も変わっていく。街とイベントの空気感が乖離するのではなく、だからといって完全にシンクロしすぎない、絶妙なハモり具合が心地好かった。その雰囲気がまた「あ、ちょっとこのライブハウス覗いてみようかな」という好奇心をナチュラルに煽り、がんばらなくても楽しめることが影響して、終演後にじっくりと満たされるような充足感を得た。
そんな東京ならではの贅沢とも言うべき『MUNETAKA SPECIAL 2019』にて、初見のアーティストのみを観るという非常に刺激的で有意義な時間を過ごすことができた。
SOLEIL
たんきゅんデモクラシーのメンバーとして活動していた「それいゆ」が、元ザ・ファントムギフト/les 5-4-3-2-1のサリー久保田(Ba)と結成したバンド。「ビートルズ、フィル・スペクター、60'sガールポップ、をとことん追求」というコンセプトを生かすべく、それいゆはキュートなボーカルと軽い振り付けや新体操のリボンやパネルといった小道具を用いて楽曲の世界を引き立てる。ギターポップや渋谷系的なポップネスな雰囲気も持ちつつ、要所要所で不穏な空気感や胸をざわつかせるメロディなども入れ込むことで、毒気が生まれいいアクセントに。特に「ファズる心」の轟音とキュートな世界観のコントラストが絶妙だった。
SOLEIL セットリスト
1. 魔法を信じる?
2. Sweet Boy
3. Baby Boo
4. アナクロ少女
5. ハイスクールララバイ
6. キャプテン・スカーレット(inst)
7. メロトロンガール
8. ファズる心
新しい学校のリーダーズ
4人組ダンスパフォーマンスユニットがバックバンドとともに登場。スキマ産業という言葉が生まれて久しいが、ここまでアーティストのスキマを縫いまくってハイレベルなクリエイティビティを実現しているグループは珍しいのではないだろうか。軒並み良い評判しか聞かなかったのも納得だった。それを成し得るメンバー4人の才能や身体能力にも恐れ入る。学校というほとんどの人間が経験しているものをモチーフに、曲間のMCではMUNETAKAの語源である「胸が高鳴る」を取り込んで演出に昇華したりというギミックもさることながら、心のなかに渦巻く言葉にならない激情をすべてダンスで表現していく彼女たちの気迫に魅せられっぱなしだった。
新しい学校のリーダーズ セットリスト
1. 試験前夜
2. 楽園にて、わたし地獄
3. 恋の遮断機
4. 恋ゲバ
5. 迷えば尊し
KOKI
出番前のサウンドチェックはもちろん、サポートメンバーのセッティングにも入念に行い、一旦袖に下がったあとの気合い入れの声がフロアまで響いてくるなど、ステージにかける熱い想いが迸る。ラウドロックサウンドと強いメロディを威力抜群の声量と大きいアクション、華のあるパフォーマンスでもって、絶えず自分自身の美学をエネルギッシュに伝えていった。「JUMP」は骨太なサウンドに矢継ぎ早のラップとシャウトがスリリングに響く。ハードな曲を畳みかけながらも観客と目をしっかりと合わせて歌う姿も印象的だった(わたしも何度か合ったと思う)。ユーモラスでテンポのいいトークも交えて、丁寧にコミュニケーションを取りながら観客とともに一体感と高揚を作り出した。
KOKI セットリスト
1. F.O.M.O.
2. RAPGAME
3. JUMP
4. ピンクスパイダー(hide with Spread Beaver cover)
5. Round and Round
6. ウタヲウタオウ