デビュー15周年イヤーを経て、約5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Shape the water』をリリースしたflumpool。“これぞflumpool!”と拍手喝采したくなる美しいメロディーラインを軸に、バンドサウンドだけでなくオーケストレーション、打ち込みと多種多様なアレンジで形作られた曲たちは、今後のflumpoolを支えるであろう新たな代表曲候補ばかり。この史上最高傑作はどのように生まれたのか?アルバムを初披露する5月からのZeppツアーに向けた意気込みは?山村隆太(Vo&Gt)とメインコンポーザーの阪井一生(Gt)にじっくりと話を聴いた。
“最低ラインが自己ベスト”(山村)
──『Shape the water』はflumpool史上最高傑作の名盤。いつになくコンセプトを先に決めて作り始めたそうですが、何かきっかけがあったのですか?
山村隆太(Vo&Gt)やはり、昨年15周年を迎えたことですかね。自分たちの道のり、足跡に対して、どこか“形(shape)”を求めていたのかな?と思います。コロナ禍による空白の時間も経て、奇遇なのかもしれないですけど、生き甲斐や目標を求めていたタイミングでもあったから。自分たちが音楽をやっていく理由、その原動力に改めて気が付いたので、「こういうコンセプトで作ろう」という作品になりました。
──山村さんの発案を元に、メンバーの皆さんで話し合って?
山村そうですね。「いきづく」(オリジナルは、山村が出演した映画『風の奏の君へ』主題歌、『いきづくfeat.Nao Matsushita』)という曲があって、FC限定BOX SETにセルフカバー版として入っていますけど、その曲を作った辺りから、惹かれていた考えがあって。形のない水がグラスに入ることによって形ができるのと一緒で、世の中に対して自分の中から出していくものが、そのままだと流れていってしまうかもしれないけど、何かにぶつかることによって形を成すとしたら……?音楽がそれを聴いたファンの心に入って思い出という形になっていくのもそうなのかな?と思うし。コロナ禍で人と会えない時に生き甲斐や目標を失ってしまったのと同じように、やっぱり人は誰かと生きていることで、命、生きていることに気付くんじゃないかな?と。それで「いきづく」という言葉にしたんですね。
──“いきる”と“きづく”を組み合わせた造語なんですね。
山村誰かとぶつかることでしか触れることができない感覚がたくさんあるな、と思ったので、それをまず“Shape of water”という言葉にして持っていったんです。でも、メンバーと話し合ううちに、15周年が終わって次に向けて動き出す躍動感がもうちょっと欲しいな、ということで、掴みにいくという意味を込めて『Shape the water』に変わりました。
──より能動的な感じになった、と。阪井さんはそのコンセプトをどのように捉え、どうアプローチしようとされたんですか?
阪井一生(Gt)山村と2人でもよく話していたんですけど、ベストアルバムを引っ提げた15周年のツアーを回り終えた上で進む次のステージなので、「次のアルバムをどうしていこうか?」というところでのハードルがすごく高かったんです。自分たちの中でも1つ超えていきたい、と。山村がよく言っていたのは……。
山村“最低ラインが自己ベスト”。
阪井それは確かにそうだな、と思いつつ、「20周年に向けての新しい形を作っていかなきゃいけないな」というのはありましたね。
──制作は昨年の5月頃から始まっていたそうですが、ソングライターとしてのプレッシャーはやはりあったのでしょうか?
阪井ありましたね。結構たくさん曲は作ったんですけど、「今までならこれで全然OKなんだけど、超えてないな。違うな」となって。「もうちょっとこうしていこう」という話し合いは今回、かなり多かったんじゃないですかね。
今回は新たな挑戦としてコライトもやってみたかった(阪井)
──M6「Hourglass」やM7「SUMMER LION」、M13「君に恋したあの日から」など、阪井さんのメロディーメイカーとしての才能が炸裂しているアルバムだと思うのですが、試行錯誤の末に生まれてきた、と?
阪井そうですね。あと、今回は新たな挑戦としてコライトもやってみたかったんですね。自分にないものを引き出してもらったのでその影響は大きかったし、それによる変化もあると思います。
──1曲目の「Keep it up‼」はトオミヨウさんとのコライトで、幕開けにふさわしいファンファーレのような、生命力に溢れた曲ですね。
阪井この曲ができて、「アルバムの1曲目やな」と決まりましたね。いつもゼロ1を自分で作るんですけど、トオミさんからピアノ伴奏のような土台を送っていただいて、そこからトップラインを載せていく作り方をしたんです。コード進行から曲の流れ、「自分ならこの発想はないな」みたいなところが面白かったし、自分一人で作っていたらここまでポップな感じにするのは気恥ずかしくて、勇気が要ったと思います。トオミさんの力で引っ張ってくれたな、という曲ですね。
──リード曲のM2「アラシノヨルニ」は、ライブで盛り上がりそうなロックナンバー。どのようなイメージで作られたのですか?
阪井まさにライブを想定して、4人の楽器が軸になったギターロックを作りたいな、と思って作り始めました。シンガロングする部分もあって、王道なんですけど自分たちにとってはすごく新鮮な、新たなロックアンセムになってくれればいいな、と思っています。
山村歌詞は友情ソングというか、この時代を一緒に生きている仲間を意識して書きました。10代の頃みたいに徒党を組んでバンドで夢を見て、という時代ももちろんあったし、バンドという単位で今も僕らは一緒に活動していますけど、ライフステージも変わって皆それぞれの生活もあって。仲間だけれども今戦っている場所は違う、というのが自分たちの現状だなって。大人になるにつれてそういう孤独を感じることは多くなると思うんですけど、静まり返って誰かが聞き耳を立てている中では言えなかったような言葉も、もしかすると、嵐の夜のような目まぐるしい世の中の、雑踏の中だからこそ言えるかもしれないし。台風が多い沖縄では、「今日は台風が来るぞ。周りの迷惑を気にせず歌えるぞ」という考え方があると知って感動したんですけど、それと同じことで。この時代もきっと、皆で一緒になって叫ぶというよりも、それぞれの持ち場での一つ一つの闘いを始める。それが灯火となって誰かの道標になればいいと思うし。一緒に戦っている、そういう孤独で繋がっていくようなものが、今生きている世の中なのかな?と考えています。