僕の中には全てのライブを一期一会にしたいというのがある(幸樹)
──では、『極∀道』の楽曲をライブで演奏して、より印象が強まった曲などをあげるとしたら?
幸樹
僕であれば、たとえば「あさきゆめみ史」の最後の音が、僕の地声のトップなんですよ。僕はレコーディングの時に、地声で歌えないものは歌わないんです。ピッチ修正で音を上げたりすることは絶対にしなくて、「あさきゆめみ史」は本当にギリのところだからライブが続いて喉の調子が悪いとそこが出るのか、出ないのかわからない不安の中で“とりあえず、いけ!”みたいになる。そういう緊張感があるというところで、「あさきゆめみ史」は印象の強い1曲になっていますね。あとは、本当にアッという間だけど、1曲目の「点屋椀屋」から2曲目の「DOSU」に入るところで一気に熱量が上がって、その瞬間は毎回快感です。
威吹
個人的にすごく好きというか、ライブで演奏していて気持ちが上がるのは「獄楽」「氷点華」「泥棒猫」、そして「鳳仙」という並びですね。すごく良いんですよ。「獄楽」から「氷点華」へのつなぎとかも良いですし、「鳳仙」の緊張感もライブのスパイスになっていることを感じますし。いつも、良いなぁ…と思いながら演奏しています。
──ライブが、よりストーリー性を感じるものになっていることは想像がつきます。楽曲の流れの良さと1曲1曲の世界観の深さが相まって観どころ、聴きどころ満載のライブになっている気がします。
幸樹
そういうものにはなっていると思います。僕らはアルバム・ツアーでは本編はアルバム以外の曲は入れずに、アルバムの世界を表現するようにしているんです。曲間にSEがあったりするという違いはあるけど、基本的にアルバムの流れも変えない。だから、ファンからしたら何本かまわると、今回はこのセットリストで本編を固定するんだなということがわかるじゃないですか。そうなった時に、全部のライブに来る子とかもいるから予定調和にならないように…ということは思っています。僕の中には全てのライブを一期一会にしたいというのがあるんです。
──セットリストが同じでも、いわゆる発表会のようなライブはしたくないんですね。それに、今回のツアーの在り方からはダウトの皆さんが『極∀道』というアルバムをすごく大事にされていることがわかります。
幸樹
“亀編”から“鶴編”になった時に、いつものダウトだったら楽曲を結構変えるんですよ。曲の入れ替えが他のバンドよりも確実に多いけど、今回はあえて辛抱して“鶴編”は変えないことにしました。それも、ある意味僕らの中では挑戦というか、今までとは違う試みではあるんですよね。
高校生の時に学園祭で演奏して、そこで人前で演奏する楽しさに目覚めてしまった(威吹)
──ライブでしっかり演奏することで、短期間で消費されることのないアルバムになると思いますので、そういうスタンスは賛成です。続いて、お二人のライブ観などもお聞きしたいのですが、まずはそれぞれ演者としての人生初ライブは、どんなライブだったのでしょう?
幸樹
僕は、高校生の時ですね。当時はヴィジュアル系が流行っていて、地元に高校生のヴィジュアル系バンドが何個かあったので、神戸のART HOUSEというライブハウスで3マンくらいのライブをしたんです。僕のバンドはオリジナルは1曲くらいで、後はDIR EN GREYとかROUAGE、それにLUNA SEAとかのコピーでした。高校生ということで学校の友達とかも結構来てくれたし、ライブも盛り上がって「俺達、売れたな」みたいな(笑)。
威吹
人の曲なのに(笑)。
幸樹
そう(笑)。若さって良いよね(笑)。
──たしかに(笑)。そのライブの時は衣裳やメイクなどは、どうされたのでしょう?
幸樹
メイクはダイエーで買ったメイク道具を揃えて、自分でしました。だから、もう見よう見まねですよ。順序も分からないし、とりあえず肌が白くなったから良いか…みたいな(笑)。下地なんて知らなかったから、いきなりファンデーションを塗ったりしていた(笑)。アイシャドウでアイライナーをぼかすということもなかったからアイライナー“ベッタァーッ”で、パリパリ…みたいな感じでした(笑)。衣裳はアメ村に『DART』という古いボンテージとかを5,000円とかで売っているような店があったので、とりあえず下だけ黒いボンテージを買って、上はカッターに黒いネクタイを実家から拝借して…という感じでした。衣裳は、結構良い感じだったんじゃないかなと思います(笑)。
威吹
僕は高校生の時に軽音楽部に入っていて、学園祭とかで演奏して、そこで人前で演奏する楽しさに目覚めてしまって、学園祭で一緒にやったメンバーでライブハウスでやろうという話になったんです。もちろんヴィジュアル系が好きだったので、ヴィジュアル系の曲……PIERROTとかDIR EN GREY、Raphaelとかをやることにして。メイクもするわけですが僕も自分でやって、その時はファンデーションを塗るということも知らなくて、ファンデーションを塗らなかった。ファンデーションは塗らずに、アイメイクだけしました(笑)。髪もスプレーというものを知らなくて、ワックスを使ったし(笑)。もう、モロに高校生のノリですよね。
──それで、良いと思います(笑)。衣裳のほうは?
威吹
衣装は原宿に『イエローハウス』というヴィジュアル系のメッカみたいな店があって、そこで名物おばちゃんに選んでもらいました。「今度ライブするので」「じゃあ、これが良いんじゃない?」みたいな(笑)。
──初々しさが、たまりません(笑)。