レコーディングについて、ツアーに向けて
──ちなみに、今回のレコーディングはどうでしたか。
いつも曲を書いてから、アレンジなど何回も手を入れて、そこから何パターンか試して最終的なアレンジが決まり、ようやくレコーディングに入るんです。だけど「不恰好な星座」は別の曲のレコーディングが決まっていて、それに間に合わせてもう一曲を仕上げなきゃいけないということで、急ピッチで書いたんですけど、アレンジの詰めが甘かったんですよね。いざ録ってみて演奏は良かったものの、やっぱりアレンジが気に入らなくて。ベースは千ヶ崎(学)くんが弾いてくれたんですけど、結局打ち込んだベースにほとんど変わっちゃって。フレーズから何から直して、アレンジもあそこまでエレクトロニクスをいっぱい使う予定はなかったんです。
──当初のイメージとかなり変わったんですね。
随分変わったかもしれないですね。あとね、この曲は結構なプロセスを経ていて。今年1月から3月までに高橋幸宏さん、坂本龍一さん、バート・バカラックが亡くなったんですよね。自分が好きで聴いてきた人達が、どういうタイミングかわからないけど、連鎖的に亡くなられた。憧れてきた人たちが、ポツポツと消えていく感じを歌にしようと思ったんです。で、まずは歌詞から書いたんです。初めはいわゆるポップスというか、ミドルチューンのバラードまではいかないけど、落ちついたセンチメンタルな曲だったんです。これで良いかなと思って聴き返したら、全然つまらないなと思って。感傷的な箇所で感傷的な曲が乗ったら、なんの面白みもないから辞めようと。こういう歌詞に、あえてファンキーな曲を乗せる方が面白いし、むしろよりグッとくるのかなと思って作り直したんです。そういうプロセスもあって、アレンジがちょっと詰められなかったんだと思います。うん……これは意外と難産でしたね
──これまで出されてきた作品の中で、今作はどういう位置づけの一枚になりましたか?
今まで歌詞の内容は曲に合うものを書こうと思って、もちろん今もそうなんだけど、全体を見渡して何か作ることを歌詞に関してはあまりしたことがなかったんです。でも、冒頭で言ったように「今回は素敵な予感が溢れる、そういう世界観の歌詞にしよう」と思って始めたのは、自分としては初めてのことで。だからか、明るいトーンのアルバムになった気がしますね。これは今まで作ってこなかった感じかもしれないです。中にはKIRINJIっぽい曲や歌詞があるかもしれないんだけど、作品との向き合い方が随分違いましたね。
──リリース後、9月16日から『KIRINJI 弾き語り ~ひとりで伺います』が始まります。聞いた話だと、去年の弾き語りツアーで色々と収穫があったそうですね。
1人だけで1時間半近くのライブをやるのは、相当気合を入れないとできなくて。それを14本経験したことで、歌に対する気構えというのかな。しっかり歌わなきゃとか、歌うのって楽しいなとか、だんだんそういう気持ちになってきたんですね。あと、ステージに出ると常に恥ずかしくて、早く帰りたかったんだけど、割と気持ち的な余裕を持ってステージに立てるようになってきて。そういう気持ちがドライブしてる感じというか、身も心も温まっているうちに、今回のアルバム制作に入ったのは大きかったですね。弾き語りツアーで歌うことも楽しくなって、そのテンションが高いまま曲作りに入れた。「Runner’s High」や「I ♡ 歌舞伎町」なんかがそう。前回の経験がステージ上だけでなく、作品全体にも影響している気がしますね。
──今回の弾き語りツアーは、どんな内容をイメージされていますか?
去年のツアーをご覧になっていない方もたくさんいると思いますが、かといって去年と今年と2年連続で来られる方もいらっしゃると思うので、前回のセットリストと少しは内容を変えたいと思っています。あと、さすがに馴れてきたので、もうちょっと色々パフォーマンスの質も上げていきたいなと思っていますね。
──そして、11月17日からは6人編成の『KIRINJI TOUR 2023』ですね。
みんな素晴らしい方ばかりなんですよね。千ヶ崎くんはもちろん、今回は伊吹くんがドラムで、キーボードに宮川くんと小田(朋美)さんなんですけど、彼らもすごく上手。あとギターはシンリズムなんですけど、シンくんと小田さんはコーラスが非常に上手くて。今、三声のコーラスをやっている人は、意外といない気がするんですね。でも、2人が積極的に「ここやりますよ」「あそこやりますよ」という感じで手分けしてやってくれて。キーボードに関しては、宮川くんと小田さんのおかげで、同期を入れなくても十分な感じにしてくれるんです。それがすごく助かっています。もちろん今回のツアーで同期を使うつもりでいるんですけど、ない方がフレキシブルに対応できる。先日、「Incheon Pentaport Rock Festival 2023」で「ほのめかし」と「nestling」は出来たばっかりで、どうなるか分からないから、結構同期を用意して行ったんですよ。気合を入れて40万円くらいのMacBookも買って(笑)。なので、いっぱいトラックがあるじゃないですか?かなり流すつもりだったんだけど、彼らが「ここやります」「あれやります」と言ってくれて、どんどん同期を再生するトラックが少なくなって「あれ?2本ぐらいしか鳴ってないぞ!」と思って。本当に素晴らしい方々に支えられて楽しいです。楽ちんです、僕は(笑)。
PRESENT
直筆サイン入りポスターを3名様に!
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