KIRINJI、素敵な予感ではじまり、素敵な予感しかない！余韻を残し東京DAY2のゴールテープを切る

KIRINJI TOUR 2023
2023年12月20日(水)EX THEATER ROPPONGI

開演時間になり、バンドメンバーの千ヶ崎学(Ba)、シンリズム(Gt)、伊吹文裕(Dr)、宮川純(Key)、小田朋美(Syn,Vo)に続き、堀込高樹(Vo,Gt)がステージに姿を見せた。スッと6人が腕を上げて、交互に指をパチンと鳴らすと、音に合わせてスポットライトがパッパッパと切り替わった。まるで演劇のような演出から「指先ひとつで」で幕を開けた。何度も転調をし、楽曲は徐々に明るい表情に変わっていく。いっぱいのライトを浴びながら＜素敵な予感は感染るよ広がるよ＞と歌うその姿は、希望に満ち溢れているように映った。大きな拍手が起こり、高樹が口を開く。「師走の忙しい中、こんなにたくさんの方に集まっていただきまして、ありがとうございます。このツアーは『Steppin' Out』というアルバムのツアーなんですけど、新旧の楽曲を取り入れてやりますので、最後まで楽しんでいってください」。
2曲目「nestling」で雰囲気は一変し、エレクトロニクスを多用したアップテンポなナンバーがとにかく気持ちよかった。夜の高速道路を走りながらリズムよく街灯を追い越していくような、はたまた飛行機が離陸する時の窓から見える景色が変わっていくような、そんな興奮と心地よさがあった。3曲目「時間がない」は、ポップスとダンスミュージックの狭間にあるような楽曲で、キーボードの高音が賑やかでありながらも、ベースやキックの低音も抜群で、骨太な演奏を堪能できた。

その後、韓国のバンド・SE SO NEONが参加した「ほのめかし」、シンガーソングライター・Maika Loubtéが参加した「薄明」のフィーチャリング曲を、この日は高樹と小田のボーカルで届けた。再びMCになり、高樹がマイクを握った。「久しぶりのEX THEATER ROPPONGIなんです。最後にここでライブをしたのは2017年で。2019年にアルバム『cherish』を出した時は、2020年にツアーをやるはずだったんですけど、コロナ禍になってしまって。あのツアーを取り戻すような気持ちで、今回の『KIRINJI TOUR 2023』を組みました。ただ、その間にもライブはちょこちょこやっていまして。2021年にグループの編成が変わったりしたので、そのお披露目を兼ねたZepp Hanedaでのライブ(『KIRINJI SPECIAL LIVE 2021 ～SAIKAI～』)の日は、雨も降っていて、お客さんが来るのか心配しましたね。その時は着席で(観客は)マスクも必須でスペースを1席分ずつ空ける感じだったので、今回のツアーは楽しくやりたいなと思ってスタンディグにしました」。温かい拍手に包まれる中、6曲目は『crepuscular』に収録されている「ただの風邪」へ。ミニマムで余白を残したような演奏から始まり、どんどんリバーブが深くなっていくことで、まるで夢と現実を彷徨っているような、まさに風邪の時のポワ〜っとした不思議な感触を覚えて、実に面白かった。前半で披露した楽曲の中で、個人的に好きだったのは7曲目「説得」。細かくリズムを刻みながら、演奏が進むに従って上昇するテンション感が新鮮で素晴らしかった。「killer tune kills me」を演奏し、曲を重ねるごとに観客の拍手が大きくなっていった。「いやぁ、いい感じに来てるな」と高樹も確かな手応えを口にした。

ここでバンドメンバーが自己紹介をすることになったのだが、気づけば暴露大会に。小田はリハーサル中に自分が疲れていても、高樹が疲れた様子を一切見せないので「休みたい」と言い出せない、と笑いを交えて話した。「KIRINJIはメジャーデビュー25周年ですけど、ここまで高樹さんがタフなら、いつまででも続けられそうだなと思ったんですよね。」と長寿バンドを願う気持ちを伝えた。千ヶ崎は小田の話を踏まえて、「昔からKIRINJIはリハが長いよね。俺が若い人の気持ちを察して、『ちょっと休もう』と言ってるんだよね」と再び笑いを生んだ。
伊吹は「先ほど話していたZepp Hanedaのライブに一度参加させていただいて、ここ2作品のアルバムでも呼んでいただけて。今回でもご一緒できて、とても楽しいツアーです」と言った後、ライブで各地に行っても、高樹は一人だけチェーン店を探して、その土地と関係のないお店に行くことを話した。その後で「でも、自分の中のルーティンがあるのっていいなと思って……」とフォローすると「無理して褒めなくてもいいよ」と高樹がつっこむ。KIRINJIで演奏するようになり3年が経つ宮川も、初めて打ち合わせをした時のエピソードで観客を笑わせた。暴露は別のメンバーにも向けられ、シンリズムは千ヶ崎が頑なにヘアメイクを拒んでいることを、ヘアメイクさんから相談されたことを報告。6人の和気藹々とした空気がステージに溢れていた。

「ここで懐かしい曲をやろうかな」と後半戦は「悪玉」でスタート。トー横キッズをテーマに生まれた「I ♡ 歌舞伎町」から、シンリズムのギターが火を吹いたかのように激しい音を鳴らし、アグレッシブなサウンドが重なる「明日こそは／It’s not over yet」も非常に引き込まれた。引き込まれたと言えば、ラストの畳み掛けだ。『「あの娘は誰？」とか言わせたい』、「The Great Journey」が本当にもう、演奏のビッグバンが起こり、会場にいる全員を連れてクライマックスへ。本編のラストは、この日の締めくくりにピッタリな「Runner’s High」で綺麗なゴールテープを切った。

このまま観客が大人しく帰るはずもなく、すぐにアンコールの拍手が起きた。再びステージに姿を見せた6人。再会の一発目に「seven/four」を届けた。そして、次の曲でドスン、ドスン！と、伊吹のドラミングが始まると「おお！」と周りから声が上がった。この季節にピッタリなウインターソング「千年紀末に降る雪は」。そしてMCで雨が降っていたZepp Hanedaの話をして、アンコール２曲目で＜雨に煙った飛行場＞から始まる「愛のCoda」を持ってくるあたり、洒落が効いている。六本木の夜にぴったりな、ジャジーで大人な雰囲気に会場を染めていく。そして高樹が最後の言葉を届けた。「今日はいい日なので、最後にお土産を持って帰ってもらおうと思いまして。これから『Rainy Runway』という曲をやるんですけど、写真とか動画を撮ってもらって構いません。SNSに上げてもらってもいいんですけど……これはないだろ、って映り方だったら上げないでね」と僕らを笑わせてくれた。「指先ひとつで」の＜素敵な予感は感染るよ広がるよ＞から始まり、「Rainy Runway」の＜素敵な予感しかない！＞で終わったこの日のステージ。構成も演奏も、すべてがどんなイルミネーションよりも輝いていた。

2024年5月25日には、東京・LINE CUBE SHIBUYAでKIRINJIのメジャーデビュー25周年を記念したワンマンライブの開催が決定。弾き語り、アコースティックバンド、エレクトリックバンド、さらにホーン・セクションを迎えた特別編成で、新旧織り交ぜた楽曲を披露する予定だ。

01.指先ひとつで
02.nestling
03.時間がない
04.ほのめかし
05.薄明
06.ただの風邪
07.説得
08.killer tune kills me
09.悪玉
10.I ♡ 歌舞伎町
11.明日こそは/It's not over yet
12.silver girl
13.不恰好な星座
14.「あの娘は誰？」とか言わせたい
15.The Great Journey
16.Runner's High

ENCORE
01.seven/four
02.千年紀末に降る雪は
03.愛のCoda
04.Rainy Runway