──2022年5月に初のワンマンライブ「独演 回夏迄」を渋谷近未来会館にて開催していますが、ライブとはcadodeにとってどういう表現ツールでしょう?
koshi僕らは楽曲がすべてだと思っていたので、ライブは発表会という感覚があって。でも初めてワンマンライブをやって、音源とは違うひとつの完成形だなと思いましたね。それは自分がその場にいる人と対話ができるようになってきた、ライブという空間に入り込めるようになって、“そこでしか表現できないもの”を表現できるようになってきているということなのかなと思っています。
ebaライブだと音源だとギターが入っていない曲にもギターを入れたりするし、僕がどんな曲であってもコピーが苦手な性分なので、毎回同じことをできないんです。ライブは音源だけだとどうしても伝わらない人間味やエモが伝わるので、「想像以上にめっちゃエモかったです」と言われることが結構あります。ライブで新たなcadodeを発見してもらえれば、それでもっと好きになってもらえればいいなとは思いますね。
──そして初のワンマンツアー「虫の知らせ」の初日が11月23日に大阪で開催され、こちらでフルアルバム『浮遊バグ』のリリースが発表されています。
koshiツアータイトルは、アルバムのお知らせをするという意味ですね。『浮遊バグ』の“バグ”と「虫の知らせ」の“虫(=bug)”を掛けてます。
ebaひたすら目の前にある作りたいものを作ってこうという感じで曲作りをしていくなかで、koshiから出てきたのが“バグ”というワードだったんです。それでバグっぽい要素を音に入れた曲が後からどんどん出来上がってきています。
koshi最初に「アルバムでしか作れないタイプの曲を作ろう」と話していて、それがコンセプトだったところはありますね。その曲たちの中からまとまりを見つけ出すことでアルバムのタイトルが決まりました。いろんなジャンルの曲が入っているし、今年リリースしたデジタルシングルの「回夏」や「かたばみ」ではやらなかったようなことを取り入れています。
──『浮遊バグ』というタイトルは、11月にリリースされた「浮いちまった!」とも関係性が深いと思うのですが、この言葉が出てきた背景とは?
koshi生きづらさとは何かを考えたとき、それはたとえば社会から外れてしまった感覚だと思って。この、社会のちゃんとしたレールに沿って進めていないような感じが、ゲームの“空中浮遊バグ”みたいだなと思ったんですよね。僕らは社会から外れたというよりは、不慮のバグによって浮いてしまっている。だから「浮いちまった!」もタイトル曲のつもりで作ったんですよね。曲も先行シングルにする前提でebaさんが作っていたものなんです。
eba小気味よいテンポの曲があんまりないから作ってみたかったんです。あとセカイ系っぽい要素も入ってくるといいなと思って、間奏の女の子の声を入れるところからイメージを膨らませていきました。
koshiあの部分を聴いてもらうための曲と言っても過言ではないので(笑)。
eba歌ものの曲にああいうものが入るのは、今までありそうでなかった気がする。でも僕らは奇をてらっているのではなく、これが本質的なことだと思っているんですよね。それはcadodeで発明できたことのひとつだと思っています。
koshi日本ではないどこかの地域のトライブ感があるし、セカイ系でもある。それが混じってるのもちょっとバグってる感じがするし、そういうcadodeのニュアンスが仕上がった曲だとも思いますね。この曲も結構大きなチャレンジをしていたはずなのに、めちゃくちゃcadodeっぽくなったのがすごくうれしかったし、感動しました。思いのままに何をやってもいいんだと確信が得られましたね。
──「回夏」に続き『サマータイムレンダ』とタッグを組んだ「さかいめだらけ」も、大阪公演で初披露なさったそうですね。PS4ゲーム版『サマータイムレンダ Another Horizon』のEDテーマで、とても展開の多い楽曲です。
koshi「回夏」はTVアニメ版のEDテーマだったので『サマータイムレンダ』の本編を描いていて、「さかいめだらけ」は『サマータイムレンダ』のゲームのトゥルーエンドをイメージしてますね。だから続きものの曲ではありながら全然違うアプローチをしていきました。ゲームと音楽をどちらもヘビーにやり続けてきたebaさんだから作れる曲になっていると思います。
ebaいろんなゲームのトゥルーエンドを見てきたので、その中でも僕が好きだった感覚を詰め込みました。バンドインして1発目ですぐに映像が広がるような曲を作りたかったし、全体を通してどことなく幸せをまとった空気感を表現できればなと思ってましたね。
──ゲーマーだからこそ作れる楽曲とも言えますね。
koshiたぶんこういうゲームをやっていない人が書くと、全部終わって日常に戻って来るような、すごく優しくてローテンポの曲になりがちだと思うんです。でもトゥルーエンドまでたどり着いた人間からすると、胸の中にはまだまだくすぶってる熱が残っている。だから「回夏」よりテンポも速いしエモ要素も多いし、一般的なトゥルーエンドのエンディング曲ではないけどこの感覚は『サマータイムレンダ』のファンの人には通じるんじゃないかな……ほんと最高だなって思ってますね。かつすごくcadodeっぽい曲にもなったと思います。
──そして「虫の知らせ」東京公演が12月10日に迫っています。こちらも東京公演ならではのお知らせがあるということでしょうか?
koshi大阪では大阪でしかできないことをやったので、東京では東京でしかできないことを考えていますね。同じツアーとはいえ会場もキャパも違うということはまったく別のパフォーマンスにもなるし、この先もそういうライブをしていけたらと思っています。
──「虫の知らせ」は2023年の序章とも言えるワンマンツアーになりそうですね。
koshiそうですね。来年こそはもっともっと成長していきたいので、今年得た感覚を加速させていけるようにしたいんです。「虫の知らせ」東京公演でいち早くアルバムの空気感に触れていただきたいですし、アルバムも楽しみにしてもらいたい。来年もいい曲を作っていけたらなと思います。
eba今年で下地が整った感覚があるので、来年は今年よりも活発に自信を持ってライブもできるんじゃないかと思っていますね。自分たち主催のライブをもうちょっと増やせるんじゃないかな。
谷原来年は年始にまずアルバムが出るので、それを届ける機会をたくさん作っていきたいですし、ふたりが言った通り、自分たち主催のライブなどが開ける機会も増えてくると思っています。いろいろと頑張っていきたいですね。
koshi東京と大阪以外の場所でもライブしたいですしね。2023年も頑張るぞ!
DI:GA ONLINEにて連載スタート!
2022年12月9日(金)18:00公開予定!