兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第171回2024年10月前半・ホルモン、宮本、羊文学、フラカンとピーズ、TOKYO ISLAND等の9本を観ました]編

コラム | 2024.11.14 17:00

イラスト:河井克夫

音楽ライター兵庫慎司が、半月の間に自分が観たすべてライブのレポをアップする連載の171回目=2024年10月前半編です。そうか、半月で9本も行ったのか、今回は。しかも、そのうち6本は普通の「1日のうち2〜3時間」だけど、3本はフェスで「朝から晩まで」のスケジュール。人に会うと「いつもすごい数のライブ行ってますねえ」とよく言われるのは、この連載で、自分がいつ誰のライブに行ったかを全部晒しているからであって、他の同業者のみなさんはいちいちそんなことしないので、俺が多く見えるだけでしょ。と、思っていたが、確かに多いのかもしれません。

10月1日(火)18:30 マキシマム ザ ホルモン ゲスト:Kroi @ Zepp DiverCity(TOKYO)

ホルモン主催の対バンイベント『太vs太』、札幌・東京・大阪の3本のうちの東京編。太こと上ちゃんがライブの途中で「DANGER×FUTOSHI」に変身する、という演出を、この夏の各地のフェス等で行ってきたが、このツアーでそれを終わりにする、ということで、メンバーみんなでタイトル案を持ち寄った上で『太vs太』になった。という経緯が、公式YouTubeにアップされています。
この東京公演の対バンはKroi。ライブを観るたびに「怖いものなし」という言葉が頭に浮かぶバンドだが、この日も、もうイケイケ。ほぼ100%ホルモンのファンだから、普段相対しているお客さんとは、好きなジャンルも年齢層もだいぶ違うはずだが、そんなん全然関係ないし気にもしない勢いで、会場全体を巻き込んでいく。
などと思いながら観ていたら、中盤で「みなさん調子どうですか!?」と呼びかけて、戻ってきた歓声に「ヤバい、めちゃめちゃうれしい!」と喜ぶさまが、かわいかったりもする。3曲目には「Fire Brain」のホルモン「F」マッシュアップ・バージョンを演奏、大ウケ。
ホルモンは、今年6月にリリースされた「殺意vs殺意」(映画『告白 コンフェッション』の主題歌として書いた縁で、生田斗真が参加したあの曲です)でスタート。最初のMCでナヲちゃん、オーディエンスのあまりの熱さに「ちょっと待って、ブラジルに来たみたい!おまえらブラジル人か!」。ブラジルでライブをやった時のオーディエンスが、こんな感じの沸騰具合だったそうです。
で、「あの圧倒的先輩感、ヤバくない?」とKroiを称賛する。「25コ下ぐらいだけど。楽屋でしゃべってると、若いわあと思って。あんなオシャレなすごい技術を持ったバンドが、『ホルモン、コピーしてました』って。ありがとうございます!」。すかさずダイスケはん、「Kroi今後、10-FEETと対バンしたら『昔10-FEET、コピーしてました』って」ナヲちゃん「絶対言う!」ダイスケはん「世渡り上手!」。あっはっは。アンコールを含めて16曲・1時間半、みっちり楽しませてくれた。

10月2日(水)18:30 宮本浩次 @ 北とぴあ さくらホール

「ソロ活動5周年記念ツアー 今、俺の行きたい場所」と銘打って、七大都市とかではなく、山形県天童市とか、島根県益田市などの、普段なかなか行かない地方を回る(その場所に行きたい理由が特設サイトにちゃんと書いてある)、というツアーの最初、東京都北区王子の北とぴあ さくらホール2デイズの2日目。理由は「北区は宮本が育った場所」だから。はい、存じ上げております。王子駅じゃなくて赤羽駅だけど、JRの発着音が「今宵の月のように」だし。
これがアップされる時点では、11月19・20日横浜ぴあアリーナMMの2デイズと、12月4・5日の神戸ワールド記念ホールが終わっていないので、セットリストや具体的な演出については書かないでおきます。
やだ、今や、宮本ソロでもエレカシでも、アリーナサイズがあたりまえ、小さくても日比谷野音クラスなので、この会場くらいのキャパ(1300席)で観れるのが、とてもうれしい。アンコールで宮本が、客席に下りて歌いながら席と席の間をグルッと走った時など、「うわ、近い!」と興奮した。自分の席は2階だったので、大して近くないんだけど、気持ちとして、そう感じたんだと思う。
メンバーは、ここ最近のライブと同じく、ギター名越由貴夫、ドラム玉田豊夢、ベース須藤優、キーボード小林武史。だったが、このツアー、リズム隊は日によって替わる場合があることを、後日、知ることになる。

10月3日(木)19:00 羊文学 @ 東京ガーデンシアター

ツアーファイナルの東京ガーデンシアター2デイズの2日目。平日にこのキャパの会場が2日とも余裕でソールドアウト、というのが、今のこのバンドの勢いを表している。
で、こんなでかいハコなのに、メンバーを映すビジョン(画面)、なし(DEVICEGIRLSによる映像演出はあった)。その上、ステージの前に薄い紗幕みたいな簾みたいなやつが下りていて、その向こうにうっすらと3人が見える状態でライブが始まったのだが、そういう幕とかって普通、1曲目の途中とか、1曲目が終わったところで上がるじゃないですか。上がらないのだ。そのまま2曲目、3曲目、と続いていくのだ。その間、曲によって、紗幕に映像が映ったりする。ようやく幕が上がって3人の姿をはっきり確認できたのは、8曲目「光るとき」の途中だった。
というように、これまで大きなフェスのステージ等でもそうしてきたように、ハコが大きかろうがソールドアウトだろうが関係ない、何も合わせないし何も譲らない、羊文学ならではのステージを貫いているさまが、もう大変にかっこよかったのだが。
最後のMCで塩塚モエカは、こんな話をした。このツアーのことを考え始めた時は、もうツアーなんてやりたくないと思っていた。でも「やりません」というわけにはいかない、だったら全国でみんな(オーディエンス)のエネルギーを吸い取るようなライブにしたい、そして元気になりたい、という気持ちでスタートした。そのとおりになった。みんなとの距離感も近くなれたと感じて、すごくあったかい気持ちにさせてもらった。ありがとうございました──。
ちょっとびっくりした。僕が普段よく仕事をするのは、主に40代から60代のおっさんバンドたちだが、彼らから、ライブやツアーに関して「やりたくない」という声をきいたこと、一度もないので。それがやりたいからバンドをやっている、もしくはそれが食い扶持だから、ハナから「やりたくない」という選択肢がない、やるのが前提、やるのがあたりまえ、みたいな。
なので、新鮮だったというか、「そうか、そういう考え方もあるか」と驚いたのだった。ここ2年くらいの、このバンドの上昇カーブの描き方、えぐいくらいだったので、その分、いろいろ大変だったんだろうな、と思う。
そして、そのMCは「今日は、私たちがすっきり終わりたいがために、アンコールはありません」で終わった。これもかっこよかった。

10月5日(土)17:30 ニューロティカ @ J:COMホール八王子

結成40周年&あっちゃん生誕60周年を祝うアニバーサリー・イヤーでさまざまに活動中のニューロティカが、あっちゃんの地元八王子で行ったホールワンマン。DI:GA ONLINEでは、フジジュンさんのレポがアップされていますので、未読の方はぜひ。≫ 「ニューロティカ 40th ~あっちゃん還暦祝賀超大祭~」賑やかに開催!大好きな仲間たち&豪華ゲストも出演し、ロティカが八王子に錦を飾った特別な一日をレポ
で、そのフジジュンさんのレポにもあるように、この日は元メンバー5人と豪華ゲスト陣が出演した。後者は、氣志團の綾小路 翔・グループ魂の暴動(宮藤官九郎)、JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥、亜無亜危異の仲野茂、の順番に登場した。
綾小路 翔はひとりでの出演だったのに、氣志團全員で現れるというサプライズ。あっちゃん、驚きとうれしさでつい落涙する。宮藤官九郎は「ロックンロールクレイジーラン」で、あっちゃんがバイクのハンドルを持ち、ドラムのナボ以外は全員ステージを走り回りながら歌う&演奏する、この曲恒例のムーブに加わる。宮田和弥は客席に下りて走り回った。
というここまでを観て、「まずい」と思った。こんなに盛り上げちゃったら、最後の仲野茂が出にくいじゃないか、と。出演者全員にとって大先輩である。日本のパンクの首領的な存在である。そんなむちゃなこと、しないだろうし、できないでしょ。普通に歌うしかないでしょ。この出順、ミスじゃないですか、あっちゃん……と、心配したのだが。
仲野茂、「スイカマン」の衣装(緑の全身タイツにスイカの被り物)で、すごい勢いで走り出て来て、きれいにすっ転ぶ、という登場だったのだ。客席もステージの上も全員爆笑。この日の一等賞だった。よけいな心配でした。失礼しました。

10月6日(日)16:00 フラワーカンパニーズ、ピーズ@広島セカンドクラッチ

幸い両親とも元気だがだいぶ高齢なので、なるべくマメに故郷広島に帰ることにしている、ただ帰るのはもったいないので観たいライブに合わせることにしている──と、この連載で何度も書いてきましたが、この日もそのパターンです。フラカン、この秋は、いろんなバンドと1本〜3本ずつ共演する対バンツアーを行っていて、ピーズとは、前日の小倉とこの広島。
で。先にピーズ、後にフラカンがライブをやって、どちらもすばらしかったが、この日は圧倒的にピーズに分があったのだった。満員のオーディエンス、ずっと歓喜しっぱなしで。
そりゃまあそうよね。フラカンは年に一回広島に来ているけど、ピーズ、ものすごく久しぶりだったから。
僕が調べてわかった範囲だと、2010年以来の可能性が高い。それが間違っていないとすると、14年ぶりである。言うまでもなく、今の4人になってからは初めて。なお、小倉に至っては、行ったこと自体、初めてだったそうです。
おそらくメンバー個々の事情などもあって、がっちり長いツアーを組むのが難しい、だから東名阪以外の地方になかなか行けないピーズのために、フラカンのグレートが声をかけたのかもしれない。ピーズもファンも、彼に感謝しましょう。私もします。考えたら自分も、広島でピーズを観れたのは初めてだったので。

10月12日(土)11:00 TOKYO ISLAND 2024 1日目@東京・海の森公園 森づくりエリア

今年で3年目の東京湾無人島オープン前の都営公園野外フェス、『TOKYO ISLAND』。過去最大の動員、かつ好天に恵まれて、3年の間で一番の成功を収めた。全日行って、1日ずつ、このDI:GA ONLINEにレポを書きました。
1日目はこちら。≫ TOKYO ISLAND 2024、初開催から3年連続参加の兵庫慎司による全通体験記【DAY1:10月12日】「TOKYO ISLANDは、3年目の開催で初めて、成功を収めた」
今年は、1日目はソロキャンプで泊まる、2日目は家に帰って3日目の朝また来る、つまり「泊まる人」と「通う人」の両方を体験してみた。で、なぜか「今年はバイクで行きたい!」という欲求が抑えきれなくなった。そうすると荷物を極限まで減らさないとリアシートに積めないので、まだ暑いし、寝袋は持って行かなくていいや、という決断をしたのだが、失敗でした。明け方に目が覚めて、二度寝できなかった、寒くて。

10月13日(日)11:00 TOKYO ISLAND 2024 2日目@東京・海の森公園 森づくりエリア

2日目。この日は、予告にない、サプライズ的なセッションがたくさんあった日でした。
レポはこちらです。
TOKYO ISLAND 2024、初開催から3年連続参加の兵庫慎司による全通体験記【DAY2:10月13日】キャンプ、朝ヨガ、サプライズ多数のライブ、夜のヤバT、怪談と1日中盛りだくさん

10月14日(月祝)11:00 TOKYO ISLAND 2024 3日目@東京・海の森公園 森づくりエリア

3日目。フェス全体でandropの15周年を祝う、という企画。andropは「全曲セッションのステージ」と「大トリのステージ」の二回出演した。後者の、生演奏と共に行われた「音楽花火」、圧巻でした。
レポはこちら。
TOKYO ISLAND 2024、初開催から3年連続参加の兵庫慎司による全通体験記【DAY3:10月14日】「androp 15th Anniversary day」、恐竜探検ツアー、水素エネルギー、音楽花火

10月15日(火)19:00 ナイツ @ 浅草公会堂

毎年秋恒例のナイツの全国ツアー。チケットがとりにくい年もあるが、今年はツアーの頭が浅草公会堂2デイズ(この日と翌日)というデカ箱だったので、わりとあっさり買えた。
で、これを書いている段階では、11月17日の宮城と11月19日ファイナルのEX THEATER ROPPONGIがまだ終わっていないので、ネタバレは自粛するが、ナイツの中にいくつもある漫才のフォーマット、たとえば「塙がしゃべりながら変な物をポロポロ落とす」とか、「土屋が歌い続けて塙が歌詞にツッコミを入れ続ける」などを使って新ネタを作るだけではなく、「新しいフォーマットによるネタ」を毎年必ずやるの、すごいなあと思う。ひとつフォーマットを作って成功したら、それに従って新ネタを作り続ける、というのが漫才師のセオリーなのに。で、そうやって毎年作った新フォーマットの中で、手応えがあったやつが、今後も残っていくという。
あと、過去、『半沢直樹』や『VIVANT』のパロディでさんざん笑わせてくれた幕間映像、今年はやはり『地面師たち』でした。今年も爆笑でした。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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