兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第196回[2025年10月後半・空気階段、星野 源、宮本浩次等の9本に行きました]編

コラム | 2025.12.10 16:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、音楽も音楽以外も含めて、生で観た(たまに配信で観たものもあり)すべてのライブのレポを書く、月二回連載の196回目=2025年10月後半編です。
この9本以外に、10月30日(木)に表参道WALL&WALLで、今年8月の『閃光ライオット』でグランプリを獲った、めっちゃ美人というバンドも観たのですが、チケットの一般発売なし、関係者招待のみのコンベンション・ライブだったので、この連載の対象としては、カウントしませんでした。
ただ、すごくいいバンドであることと、こういう関係者向けのライブってみんなシーンとしているのが普通なのに、この日は歓声が上がったり拍手が起こったりしていてびっくりした、ということは、書いておきます。

10月16日(木)18:00 空気階段 @ KAAT 神奈川芸術劇場

空気階段の全国ツアー、毎年、東京公演は瞬殺で完売なので、生で観るのはあきらめて、配信を買って観ていた。が、『ダンス』と銘打たれた今年は、ツアーの最初の東京・天王洲銀河劇場の10公演は完売だが、ツアーの最後のKAAT神奈川芸術劇場の7公演は、ハコの大きさのせいか、さすがの空気階段でもチケットが残っていることを、TBSラジオ『空気階段の踊り場』を聴いて、知った。なので、じゃあ生で観よう!ということにしたのだった。
どのコントもおもしろかったが、「ウンコ漏れそうな鈴木もぐらが交番でトイレを貸してくれと頼むが、警官の水川かたまりは『規則なので』と決して貸してくれない」というやつが、いちばん笑った。そんなシンプルな設定で、こんなに長い尺で爆笑をとり続けるコントをやれるなんて、すごい。

10月17日(金) 19:00 フラワーカンパニーズpresents『俺たちのザ・ベストテン』 @ 名古屋ダイヤモンドホール

フラワーカンパニーズが毎年この時期に、ゲストを招いて地元名古屋で行っている『DRAGON DELUXE』、今年はこんな企画。彼らが子供の頃に夢中で観ていたTBSの『ザ・ベストテン』を再現する、10位から1位まで発表&演奏して、その合間に『今週のスポットライト』(10位以内ではない人が登場するコーナー)も何曲か入れる、というもの。
フラカンの4人にうつみようこ・奥野真哉・クハラカズユキ・真城めぐみ・中森泰弘が加わって、演奏はYOKOLOCO BAND(奥野真哉・クハラカズユキ・竹安堅一・グレートマエカワ)+中森泰弘が務め、ボーカルは、うつみようこ・真城めぐみ・鈴木圭介・ミスター小西が、入れ代わり立ち代わり出て来る。ピンク・レディーなど、複数で歌う曲もあり。
1年前の2024年9月26日、グレートマエカワ55歳の誕生日の前日に、荻窪TOP BEAT CLUBでこの企画をやったところ、お客さんたちに大ウケ、本人たちも楽しかったらしく、今年の『DRAGON DELUXE』でもやろう、ということになったようです。
去年のやつ、確かにすんごいおもしろかったので、今回も、名古屋まで行って観た。あ、去年のレポはこちらです。
兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第170回[2024年9月後半・グループ魂や電気やサザンなどの7本を観ました]編
今年のセットリスト=10位から1位と、『今週のスポットライト』は、こうでした。

1.(10位)青い珊瑚礁/うつみ聖子
2.(9位)飾りじゃないのよ涙は/真城明菜
3.(8位)ハッとして! Good/田原圭介
4.(7位)モンキー・マジック/ウツミユキヒデとゴダイゴ
《今週のスポットライト3曲》
5.ミス・ブランニュー・デイ/コニシオールスターズ
6.フレンズ/メグッカ
7.センチメンタル・ジャーニー/うつみ伊代
8.(6位)プレイバック part2/真城百恵
9.(5位)大都会/ウツミタルキング
10.(4位)ロマンティックが止まらない/コ-ニ-C
《今週のスポットライト3曲》
11. ハイスクール ララバイ/スズ欽トリオ
12. ルビーの指輪/竹安聰
13. Thriller/マイケル・ジャクソン?
14.(3位)TOKIO/沢田圭介
15.(2位)UFO/ピンク・レディー?
16.(1位)め組の人/ラッコ&スター

以上の16曲・2時間20分弱のうち、今回、特筆すべきは「ルビーの指輪」。アーティスト名が「竹安聰」であるとおり、竹安堅一が寺尾聰コスプレで登場。で、歌とギターの担当で、それまでの自分の立ち位置で曲がスタートする。なんでステージのまんなかに行かないんだろう、と思ったら、竹安が1コーラス歌い終えたところで、ミスター小西も寺尾聰コスプレで登場し、2コーラス目を歌う。そして最後は鈴木圭介も寺尾聰コスプレで、間奏明けからボーカルを──という「フラカン3人リレーで寺尾聰状態」だったのだ。大笑い&大拍手でした、オーディエンスのみなさん。

10月19日(日) 16:00 星野 源 @ Kアリーナ横浜

ツアー「Gen Hoshino presents MAD HOPE」の追加公演、Kアリーナ横浜2デイズの2日目。
大掛かりなセットや演出で楽しいエンタメに仕上げる、という方向ではなく、己が考えていること感じていることを込めて、自分自身の生身で勝負する、とてもシリアスなパフォーマンス、であると自分は感じた。
なので、アンコールで今も続けている、ただただ楽しくてくだらなくておもしろい「ニセ明」のコーナー(映像で雅マモル=宮野真守、ウソノ晴臣=ハマ・オカモト、上白石まね=上白石萌音の出演あり)が、ちょっと浮いて感じるのでは……と思ったら、その前のナレーションで、このコーナーすらシリアスさに裏打ちされていることが伝えられて、「うー、そうかあ、なるほど」となったりもした。
で、そのあと、先にスタッフ・ロールを画面に流してから歌った、最後の曲の前のMCで、星野 源はこんなことを言った(要約です)。
(前回のアルバム以降の)この6年の間、本当にいろんなことがあった。本当に心からうんざりした。でも音楽を作る時だけは楽しくて。音楽を作っている時、いつも扉があって、その向こうにあなたがいて、いつも心強かったです。このツアーは終わるけど、ぜひ僕の音楽を聴いてください。あなたが本当にどん底に落ちた時は、そこに僕がいるから。そう思ってくれたら、今までやってきたかいがあります──。
そして「ラララで一緒に歌ってください」と、ラストの「Eureka」に入った。

10月22日(水) 18:30 全日本プロレス @ 後楽園ホール

『旗揚げ記念シリーズ2025』全4本(うち1本は斉藤レイのケガによる欠場で延期になったが)の中の最終日。全7試合で、メインイベントは王者宮原健斗にNOAHから移籍して来た潮崎豪(NOAHの前は全日だったので戻って来たことになる)が挑む。昔、潮崎とタッグを組んでいた宮原は、その時に彼に去られた恨みで、「出たり戻ったり、何がやりたいんだおまえは!」と試合前から口撃。これは生で観なければ、とチケットを買った。
その試合、大激闘の末、潮崎が敗れたのは残念だが、流れを考えると「まあそうなるよね」と納得できるので、しょうがない。すんごくいい試合だったし。で、すんごくいい試合だったからか、試合後のマイク・パフォーマンスで宮原、「出たり入ったり、いいじゃねえか!」と態度が豹変する。あっはっは。
他にも、黒潮TOKYOジャパンおもしろい、HAVOCのザイオン&オデッセイ強すぎ、タロースでかすぎ、ライジングHAYATOもおもしろい、などなど、全日ならではの楽しさがいっぱいある興行だった(黒潮TOKYOジャパンはあちこちの団体に出ているけど)。また行きます。

10月23日(木)18:00 ナイツ @ 浅草公会堂

毎年この時期恒例、『ナイツ独演会』のツアー、全国11公演のうちの5公演目=浅草公会堂2デイズの1日目が、この日。
今年、特におもしろかったのは3つ。ひとつめは、漫才中に塙宣之の股間が大きくなってしまう、という、どうしようもないネタ。ふたつめは、毎年何かのパロディとして創意工夫が凝らされている幕間映像。去年は『地面師たち』だったが、今年はガッポリ建設の小堀敏夫が出演した『ザ・ノンフィクション』のパロディだった。
そして最後は、土屋伸之が1曲を頭から最後まで歌い続け、それに塙がキレ気味にツッコミを入れ続ける、という、ナイツの持ちネタの最新バージョン。曲は今年はCUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」で、これが例年を超えるおもしろさだったのだ。塙が叫ぶようにツッコミまくりで。
ツアーの全日程が終了したあと、『ラジオビバリー昼ズ』で土屋は「あれ、8人で歌うように作ってある曲だから、ひとりだと大変、息継ぎができない」と言っていた。確かに。すごい回数を聴き込んで、歌の練習をしたことで、CUTIE STREETを好きになったそうです。

10月24日(金) 19:00 子供ばんど、EARTHSHAKER @ 恵比寿 The Garden Hall

子供ばんど45周年の活動の締めくくりは、東京と神戸で開催の、この対バン。一緒にライブをやるのは43年ぶりとのこと。最初からステージに2バンド分の機材が揃っていて、これは最後にセッションがあるな、ということがわかる。
先にEARTHSHAKER、後に子供ばんど、アンコールでセッション。海外の楽曲に日本語詞を付けてカバーする、ということを子供ばんどはよくやっていて、その中の2曲、「サマータイム・ブルース」と「ロックンロール・フーチー・クー」だった。
前者は1958年のエディ・コクランのヒット曲で、海外ではザ・フー、国内ではRCサクセションなど、多くのアーティストにカバーされて来た曲で、子供ばんどがカバーしたのは、ザ・フーより後で、RCより前。
後者は子供ばんどのアルバム『HEART BREAK KIDS』をプロデュースしたこともあるリック・デリンジャーの、1973年のヒット曲。奥田民生と吉川晃司のOoochie Koochieは、この曲名をもじって命名した、という意味合いもあるそうで、ライブでこの曲をカバーしていた。歌詞は日本語で、子供ばんどバージョンのそれだった。つまり、リック・デリンジャーをカバーした子供ばんどをカバーした、というような按配になっていたわけです。
EARTHSHAKERは、僕が10代の頃に勃発したジャパメタ・ブームのトップ群の中にいたバンドだが、それよりデビューが早い子供ばんどは、ハードな音なのに、ジャパメタとは違うシーンにいた感じだった。世代が違ったせいか、音楽性やキャラクターが違ったせいか、たぶんどっちもあったのでは、と思うが、あれから何十年も経ってから、こうして共演が観れるとは、そしてセッションも観れるとは……と、感慨深いものがありました。

10月25日(土)17:30 Oasis ゲスト:ASIAN KUNG-FU GENERATION @ 東京ドーム

この復活Oasisの来日公演、全然チケット取れないとか、みんな落選しているとかいう声をよくきいたが、僕は普通の先行であっさり取れた。なんでだろう。全券種の中で二番目に安いA席にしたのが良かったんだろうか。それとも、ここで今年の分の運を使い果たしたんだろうか。
Oasis、解散するまでに何度も観ているが、当時の来日公演は横浜アリーナとか国立代々木競技場とかだったので、ドームの規模で観たのは初めて。フジロックのグリーンステージや、サマーソニックのマリンステージも、ドームよりは小さいし。
で、ドームで観て、会場が大人数であればあるほどすごいライブになる、要は観客がエンタメの装置として絶大な力を発揮する、というのが、Oasisというバンドなんだな、ということが──知識としては知っていたが──体感として、よくわかった。何度も観たOasisのライブの中で、初めてだったかも。
あと、スペシャル・ゲスト=1日目がアジカンで2日目がおとぼけビ~バ~が、わりと直前に発表になったが、アジカン、ウケてました。おとぼけビ~バ~も観たかった、ドームで。海外ではフェスの巨大なステージに普通に出ている人たちだけど、日本でそういうステージで観れる機会、そうそうないので。

10月26日(日)18:30 佐々木健太郎、木村ひさし @ 国立・酒場FUKUSUKE

アナログフィッシュの佐々木健太郎が、『真夜中の発明品』というタイトルで、毎回ゲストを呼んで、不定期に続けている弾き語りライブ。今回のゲストはClingonの木村ひさし。彼は現在島根県に住んでいて、かつ、鬱を患っていて(この日のMCでもそのことに触れていた。治ってきたそうです)、人前で歌うのは6年ぶり、とのこと。
木村ひさしはピアノ弾き語り、佐々木健太郎はアコースティック・ギター弾き語りで、途中から木村ひさしも参加。それぞれ新曲も披露。
で、木村ひさし、観に来ていたClingonのドラムの丸尾和正に「スネア持ってるし、ブラシかなんかで参加したらええんちゃうん」と要請(※浜松でライブをした帰りだったので、持っていたらしい)。というわけで、健太郎と木村ひさしによるアナログフィッシュの「Good bye Girlfriend」以降は、彼も加わって3人になる。
そこから健太郎はベースで、Clingon「その恋 僕が買いましょう」、アナログフィッシュ「SHOWがはじまるよ」、Clingon「恋は、あいにく」、アナログフィッシュ「アンセム」、Clingon「前屈みのボブ」の5曲を演奏。満員のお客さん、ものすごく喜んでいた。

10月27日(月)19:00 宮本浩次 @ 日本武道館

宮本浩次の新プロジェクト『俺と、友だち』のライブ、2本中の2本目。1本目は、10月8日下北沢シェルターで、メンバーは宮本、ベース:キタダマキ、ドラム:冨永善之の予定だったが、急遽宮本とキタダのふたりで演奏することになった。で、2本目のこの日本武道館は、宮本、ギター:名越由貴夫、ベース:キタダマキ、ドラム:玉田豊夢、キーボード:奥野真哉の5人編成。
エレファントカシマシとソロだけでなく、この「俺と、友だち」もやりたかった理由については、複数のメディアのインタビューで本人が話しているが、まさにそのとおりの内容で、「そうかあ、確かにそうなってるわ」と、観ながら何度も思った。
その理由というのを要約すると、ソロとは別に、エレファントカシマシ以外のバンドも、「俺と、友だち」というコンセプトで、やりたい。ということだったが、確かに、ソロシンガーとバックではなく、バンドだった。で、それを実現できているのは「俺と、友だち」というコンセプトゆえなのが、観ているとわかる。
ベースが須藤優ではなくキタダマキなのは、ロック感・バンド感においては、彼の方が適しているから。キーボードが小林武史ではなく奥野真哉なのは、小林武史だと「友だち」というより「先生」、もしくは「兄貴」という感じだから。って、宮本本人はべつにそんなこと言っていないが、僕はそのように解釈しました。かっこよかった、とにかく。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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