原宿RUIDO、復活! そのニュースを聞いて、僕は心がざわついた。1972年に新宿RUIDOとしてオープンし、1989年に原宿・竹下通りの脇に移転して、原宿RUIDOとしてリニューアルオープン。多くの伝説のライブを生み出し、2007年に惜しまれながら閉店するも、RUIDO 50周年となる今年7月、同場所に堂々復活! 僕ら世代にとっての原宿はポップカルチャーや流行の発信地であり、常におしゃれの最先端を行く、憧れの街だったからだ。
竹下通りにタレントショップが乱立した80年代後期、初めての東京観光で竹下通りに行った時は人の多さに圧倒されながら、ベタにクレープを食べて、ドキドキしながらビートたけしの「元気が出るハウス」やとんねるずの「バレンタインハウス」に行って(Tシャツやトレーナーは高かったので、買ったのはキーホルダーのみ)。イカ天でロックバンドに興味を持ってからは、『宝島』などの音楽カルチャー誌に載ってるホコ天の写真やレポ、パンクショップに憧れて、東京観光の際にやっぱり竹下通りに訪れて。2枚で1,500円のパンクTシャツ(SEX PISTLESとTHE EXPLOITEDのロンT)を買ったり、「イカ天ショップ」でサイバーニュウニュウのデモテープを買ったりと、田舎もんの僕はとにかく原宿に憧れまくっていた。
今年7月に復活した原宿RUIDOは、“オープニングライブ・原宿RUIDO【REBIRTH】シリーズ”と名付け、原宿RUIDOにゆかりのある豪華アーティストのライブを連日に渡って開催。今回、僕が行ったライブは、そのシリーズの一環となる、椎名慶治のワンマンライブ『原宿RUIDO復活! 椎名慶治ライブやります!』。椎名がSURFACEとして、「それじゃあバイバイ」でデビューしたのが、1998年5月。そして同年8月25日、原宿RUIDOにてSURFACE名義として初ライブを敢行。以来、24年と1日ぶりとなる原宿RUIDOでのワンマンだった。
そんなライブに向かう道中、「ライブ始まる前、ど~する?」つうことで、せっかくだからライブ前に“原宿の思い出散歩”をしようと思い、早めに原宿に訪れた僕。原宿駅の竹下口を降りて原宿RUIDO方面に向かうと、竹下通りは当時と変わらぬ、ものすごい賑わいを見せてる。中学生の頃みたいに、緊張して足がすくむことはないけれど。「東京だなぁ!」と圧倒される気持ちはいまも変わらない。あの頃と変わらないカラフルで雑多な雰囲気もありながら、原宿アルタやキャラクターショップ、おしゃれなアパレルやアクセサリー屋さんといった最新流行スポットには若者が集い、いまも流行発信地としての自信と誇りが見える竹下通り。僕はそんな流行の流れとは逆行し、事前に準備してきた、“80年代タレントショップマップ”を開き、当時訪れたタレントショップの跡地めぐりを始める(笑)。
「元気が出るハウス」はすでに建物自体がなく、大きなマンションに変貌。「バレンタインハウス」はアイドルグッズの専門店へと変貌していた。え? つうか、「バレンタインハウス」って、原宿RUIDOの並びだったんだ! ちなみに原宿RUIDOが入っているビルは昔、“不思議の国のアリス”をコンセプトとした、原宿アイドルワンダーランドというビルで、タレントショップがたくさん軒を並べていたそう。タレントショップの跡地を確認したからどうって話ではないけれど、それによって原宿RUIDOが流行のど真ん中にあったことも改めて確認し、今度はラフォーレ原宿方面へと向かう。
原宿と言えば、クレープ! ということで訪れたお店は、ラフォーレ原宿に併設し、“原宿最初のクレープ”の看板を掲げる「CAFE CREPE」。1977年創業、45年に渡ってスィートな原宿の味を守り続けた老舗中の老舗。「原宿に来たら、クレープを食べなきゃ」と思う人は現在もたくさんいるようで、クレープを食べるカップルや家族で賑わうお店の周辺。僕も行列に並び、定番のバナナチョコ生クリームを注文。味は想像通りの間違いのない美味さ! わぁ、クレープなんて、何年ぶりに食べただろう!? おじさん一人でクレープを食べるのは恥ずかしいけど、甘いチョコやクリームの味に当時を思い出して、原宿気分が一気に倍増。テンション上がったところで、ようやく原宿RUIDOへと向かう(笑)。
『原宿RUIDO復活! 椎名慶治ライブやります!』は急遽の開催発表ながら、チケット即完。コロナ対策で椅子席ではあるが、300人キャパを埋め尽くすフロアの風景は圧巻だった。新生・原宿RUIDOのステージ後方には大型LEDパネルが設置されていて、設備的にも最先端のライブハウスといった印象を受ける。
開演時間となり、バンド演奏と大きな手拍子に迎えられて、ステージに堂々と登場した椎名慶治。「僕等の中」でライブがスタートすると、椎名の力強く艷やかな歌声が伸びやかに会場に響く! 序盤戦を勢いよく駆け抜けた最初のMCでは、この日のライブにリハなしのぶっつけ本番で挑んだことを告白しながら、「ヤバいっしょ? もうちょっとゆるい感じで来ると思ったよね? カッコいいんだよ」と笑う椎名。この余裕と貫禄こそ、24年のキャリアのたまもの。「スペシャルな一日、最後まで楽しんで行きましょう!」と「一旦紅茶飲む」からエネルギッシュな曲が続き、さらにフロアをブチアゲる。
ライブ中盤、椎名が24年と1日前にこの会場でSURFACEという名義でチケットを 売って初ライブを行ったことを懐かしそうに語り、「せっかくだから、『ジレンマ』やろうかな? と思って」と、そのライブ翌日にリリースされた2ndシングル「ジレンマ」を披露。歌詞や振り付けを忘れて、何度も曲フリからやり直すというお茶目な姿も見せながら、変わらぬ美声に大人の色気や哀愁も加えた24年目の「ジレンマ」を聴かせた椎名。続いて、カップリングに収録された「ひとつになっちゃえ」を披露すると、その貴重な歌と演奏にファンからの歓喜の拍手が止まらない。言うまでもなく、椎名が24年間歌い続けてきたからこそ生まれた、この貴重なシーン。ファンにとって懐かしいだけでなく、深みや説得力を持って響いたであろう2曲を歌い終わった後のMCで、「『ジレンマ』とかあの頃の歌い方を真似たんだけど、ダメだね!」と笑わせた椎名だったが。きっと、本人にとっても初心を思い出すと同時に、自身の成長を実感し、ここからも歌い続けることを決意する重要なタイミングになったはず。
そして、「ライブ終わった後、ど~する?」ってところで、原宿RUIDOや椎名慶治の歴史の重みと最新型に触れた後は、もう少し原宿の思い出散歩をしようと、上京したばかりの頃から通ってたじゃんがらラーメンに向かった僕。しかし、じゃんがらの入り口まで来て、それより気になったのは地下にあるハンバーグ&ステーキの「グリム 原宿店」。
「そういえば昔からこの看板はよく見るけど、入ったことないな」と思い入店してみると、アンティーク調の内装は昭和平成レトロといった懐かしい雰囲気で、店内は値段の安さもあって若者たちで賑わっている。ハンバーグセットとビールを注文して、「今日のライブ良かったな」なんて一人で思い返していると、隣の席から会話が聞こえてくる。話の端々を聞くとラフなジャージ姿の彼女らは、どうやらレッスン帰りのアイドルか練習生らしく。今日のレッスンやダンスについて、これからの夢についてキラキラした笑顔で話している彼女らが、あまりにも眩しく輝いて見えてくる。そうか、原宿ってホコ天の時代も現在も、夢を追う若者の街でもあるのね。いいな若いって、いいな夢があるって。
原宿RUIDOや椎名慶治のライブをキッカケに、原宿に憧れまくってたあの頃の気持ちを思い出して、原宿にどっぷり浸かったこの日。原宿RUIDOや椎名さん、そして原宿という街のように、これまでの歴史をしっかり背負って、自信と誇りを持ちながら、常に新しいものを発信し続けていけるようになりたいと思った。無理やりなまとめだけど(笑)。