20周年にふさわしいSEの「20TH CENTURY BOY」(T.REX)が鳴り響く中、山田武郎(Gt)のイントロから「That's so great!!」でライヴがスタートすると、早くも持ち前の“雑草”魂を発揮! 上中丈弥(Vo)の“ロケンロー”でフロアからは歓喜の拳が上がり、続けて山田の熱いギターソロ、上中のブルースハープへ繋がれたら、一気にハートを鷲掴みにされてしまう。イナ戦らしいズッコケ男道感あふれる「突っ張り大一番」、中田俊哉(Ba)と久保裕行(Dr)がハネるリズムを繰り出すダンサブルな「ジタバタダンス」。確かなキャリアを伝えながらも清々しさが勝る、そんなステージを軽やかに見せていく。
「うんうん、いいよ! すごくいいと思うけど、ちょっと前に出すぎちゃう? ギターソロ弾いてる武郎にスポット当たってんのに、絶対おかしいって! お前んとこ、真っ暗だったもん! 俺らもう1200本くらいライヴやってるんだからさ、わかろうぜ(笑)」と、最初のMCで上中が中田をイジって場の空気を和らげるあたりもさすが。「ま、こんなズッコケたTHEイナズマ戦隊ですが、どうぞよろしくお願いします!」とあらためて挨拶したあとは「赤い命が燃えている」のラテンビートで加熱し、“一日一歩を重ねてく 勇敢な人生だろ”の歌詞で会場いっぱいに笑顔があふれ出す。お客さんたちが元気になっている。そのさまが目に見えてわかる。こういうライヴは観ていて気持ちがいい。
アルバムタイトルを冠した「PUMP IT UP!!」というインスト枠では、久保→山田→中田のリレーでソロ回しも披露。オーディエンスがさらに沸く様子を、そして頼もしいメンバーの流れるようなパフォーマンスを、誇らしげに見つめる上中の姿もまた印象的だった。
中盤ではグッと青に染まった照明の下、哀愁と歌謡曲テイストが滲む「すすきのエレジー」、上中もギターを携えて親友の結婚に捧げたラブバラード「君に捧げよう」を演奏。イナ戦の多彩な表情を覗かせつつ、その深みにじっくりと浸らせてくれる。そんな中、「各駅停車」をこう歌い換えてくれたのにもグッときた。“相変わらずアホにつける薬はなく あの日のままで突入20周年 オマエも忘れたかい? 後悔という字を だったら野音まで行こうぜ各駅停車”――そう、5月26日(土)にはバンド21年目にして念願、待望の日比谷野外大音楽堂での初ワンマン『俺とオマエと野音と応援歌』が、47都道府県ツアーの終着点のように控えている。