兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第207回[2026年4月前半・アートとモーサムとシロップ、新日、全日、ビッケブランカ、女王蜂、おとぼけビ~バ~などの9本を観ました]編

コラム | 2026.06.05 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、音楽も音楽以外も含めて、自分が生で観たライブ(たまに配信もあり)の、すべてのレポを書いて、月二回ペースでアップしていく連載の、207回目=2026年4月前半編です。ワンマン5本、対バン2本、プロレス2本でした、今回は。

4月3日(金)19:00 ART-SCHOOL、MO’SOME TONEBENDER、syrup16g @ Zepp Haneda(TOKYO)

ART-SCHOOLが、25周年トリビュート・アルバム『Dreams Never End』に参加したバンド1組もしくは2組と対バンしていくシリーズ・イベント。この連載の2月前半編に書いた、DOPING PANDAとの対バンが3本目で(>>兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第203回[2026年2月前半・Caravan、フラカン、真心、ドーパンとアート、ヒグチアイなどの6本を観ました]編)、MO’SOME TONEBENDERとsyrup16gを迎えたこの日が、7本目である。
モーサム、久々に観たが、もうバケモンみたいないかつい音。そんなに頻繁にライブをやるわけではないバンドなのに、なんでこんなすごいことになっているんだ。ART-SCHOOLのカバーは、もちろんトリビュート・アルバムに提供した「あと10秒で」。
次のsyrup16gは、そんないかついモーサムと、やはりいかついART-SCHOOLの間の出番だからそうしたのか、逆の方向に振ったみたいなセットリストだった。つまり、メロディが突出した、いわゆる歌もの曲が並んでいた、ということです。「光のような」で始まり、「赤いカラス」や「Star Slave」等を経て、「明日を落としても」「My Song」で終わる、という。書いてみて気がついたが、『deraidback』(2017年)から3曲もやったんですね。未音源化の新曲「セブンティーン」も演奏。ART-SCHOOLのカバーは、もちろん(以下同)「EVIL」。五十嵐隆、歌い終えて、「天才だな」と、木下理樹を称賛した。
ART-SCHOOLは、「ロリータ キルズ ミー」「ローラーコースター」で始まり、「UNDER MY SKIN」「FADE TO BLACK」で本編が終わる、その間に「LILY」や「LOVERS」のような、ライブにおけるいわゆるレア曲も入ってくるセットリスト(一応調べたところ、前者は7年ぶりで、後者は9年ぶりだったようです)。
アンコールは、シロップがカバーした「EVIL」と、モーサムがカバーした「あと10秒で」。モーサムの藤田 勇、もともとドラマーだが、途中から、ドラムを叩く曲もあるし、ドラムはサポートにまかせてギターを弾く曲もある人になった、という、かなりめずらしいミュージシャンである。ということは知られているが、この日、モーサムの「あと10秒で」ではギター、アートの「あと10秒で」では(あたりまえだけど)ドラムを演奏した。
それから。ART-SCHOOLのMCで、この3バンドで一緒にやるのは二十数年前の『JAPAN CIRCUIT』以来だ、というような話を、木下理樹と(当時は客席で観ていた)ギターのトディ(戸高賢史)がしていて、「ああ、そうよねえ……」と、心からしみじみしました。当時、私、そのイベントのスタッフだったもんで。音楽雑誌ロッキング・オン・ジャパンが、企画制作していたイベントです。
なお、この日、このシリーズ・イベントの最後の2本(Vol.8とVol.9)が、発表になった。8月2日渋谷クラブクアトロでHelsinki Lambda Clubとリーガルリリー、9月5日LIQUIDROOMでcinema staffとPeople In The Box。

4月4日(土)16:00 新日本プロレス @ 両国国技館

ここのところ、いくらなんでも、全日本プロレスばかり観に行きすぎではないか。せめてビッグマッチくらいは、新日本プロレスにも足を運んでおくべきではないか。1・4東京ドーム=棚橋弘至引退試合&ウルフアロンのデビュー戦の大会以来、行ってないし。と思い、チケットを買った。なお、NOAHに対しても、同様の危機感を抱いているので、近いうちに、行くと思います。なんの危機感なんだか自分でもわからない。
第0試合も含めて全9試合。やはり、最後の3試合=ベルトがかかったタイトルマッチである、KONOSUKE TAKESHITA vs 海野翔太、OSKAR&Yuto-Ice vs 大岩陵平&ザック・セイバーJr.、辻陽太 vs カラム・ニューマンがおもしろかった。特に、TAKESHITAとYuto-Ice、今、新日でいちばん注目を集めている(と僕は思っている)ふたりが出る試合は、もう目が釘付けになった。

4月5日(日)17:30 wapiti @ Veats Shibuya

東名阪と台北の4本を回る、このバンドにとっての初のツアーの3本目=東京公演。全然予備知識がない状態で、スタッフに誘われるがまま観に行ったのだが、初めてのツアーなのにVeats Shibuyaがみっちり埋まっていて、もうこんなに状況ができているのか、と、ちょっと驚く。
ボーカル&曲によってギターとキーボード・ピアノとキーボード・ドラム・バイオリンの4人がメンバーで、サポートでギターとベースがいる、という編成。そのせいか、古く言うと日本のAOR的な音楽性なんだけど(※古いのは、バンドが、じゃなくて、私が、です)、いい歌をじっくり聴かせます、時に歌わせるし、時に踊らせます、というだけでは終わらない、深さや広がりがある気がした。バンドの音そのものにも、楽曲そのものにも、ボーカル織田龍紀の歌声そのものにも。とてもエモーショナル。
1時間半のステージの間に、何度もピークがあったし、セットリストのまんなかあたりで、サポートなし・メンバー4人で演奏された「僕は愛を知らない」も、とてもいいアクセントになっていた。織田龍紀が歌の頭で歌詞を間違えて、「もう一回いいですか、すみません」と曲を止めてやり直す、みんな大笑い、という、曲調に合わない雰囲気で始まったのに、もう一回歌い始めた瞬間に、空気がピッと引き締まったし。

4月9日(木) 18:30 ビッケブランカ @ Zepp Haneda(TOKYO)

年に1〜2回のペースで彼が開催しているシリーズ・ライブ『RAINBOW ROAD』の6回目。今回はゲストあり、Chilli Beans.とNovel Coreが出演。DI:GA ONLINEにレポを書きました。
>>ビッケブランカ、Chilli Beans.とNovel Coreを招いた6度目の「RAINBOW ROAD」Zepp Hanedaを観た

4月10日(金)19:00 女王蜂 @ 市川市文化会館

ホールツアー『PERSONAL DISRANCE』の初日。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。極力ネタバレなしで書きましたが、曲名はいくつか出しているので、一切知りたくない、という方にはお勧めしません。
>>女王蜂、全国ホールツアー2026「PERSONAL DISTANCE」がスタート。初日とは思えない完成度でオーディエンスを魅了

4月11日(土)19:00 ノンケーズ(ウルフルケイスケ&大久保ノブオ[ポカスカジャン]) @ 下北沢440

ウルフルケイスケとポカスカジャンの大久保ノブオとのユニット、ノンケーズのツアー、全7本のファイナル。ウルフルケイスケの公式サイトを見ていて(定期的にチェックしている)「あ、俺、この日行けるわ」と気がついて、ケーヤンに連絡した。「いつもそういう時に来るねW」と返信が来た(ひとりでのライブじゃない時に、という意味です)。確かに。ケーヤンのライブを観たの、前回は、昨年12月22日吉祥寺MANDA-LA2の、島崎智子カルテットwithウルフルケイスケだ(>>兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第200回[2025年12月後半・堂珍嘉邦、ビッケブランカ、石野卓球『地獄温泉』、Ooochie Koochie最後のライブなどの9本に行きました]編)。偶然なんですが。
歌とパーカッションとかいろいろ:大久保ノブオ、歌とギター:ウルフルケイスケ、キーボード:小林俊太郎の3人でのライブ。小林俊太郎は筒美京平の最後の内弟子で、最近まで沢田研二のツアーを回っていた、と紹介された。そのツアーの一部の日程、先にノンケーズのスケジュールが入っていたので、欠席したという。大久保ノブオ「僕らだったら絶対ジュリーに行きますから!」。小林「いや、23公演のうちの15公演はやりましたから!」。
そんなノンケーズのステージ、オリジナル曲のどれもが詩情に満ちていて素敵だし、RCサクセション「つ・き・あ・い・た・い」や、ローザ・ルクセンブルグ「FLOWERS」などのカバー曲も、いちいち自分のツボだし、MCは毎回大笑いだし、もう大変に楽しい。
「GO GO」(ウルフルズのシングル「ええねん」のカップリング曲)も聴けたし、うれしい時間だった。あと、大久保ノブオとウルフルケイスケの音楽的な相性がとても良くて、一緒にやっている理由がよくわかる、とも思った。

4月11日(土)19:00 辻井くぬえ、青柳創太、rilium @ 恵比寿KATA

今年で24歳の男性ソロ・アーティストで、昨年(2025年)の「出れんの!? サマソニ」で勝ち抜いてSONICMANIAに出演した、辻井くぬえの自主企画イベント『遷移帯』。上記の3アクトが出演。スタッフに誘われて、別のライブ(ノンケーズ)が終わってからになるので、トリの彼が始まる時間に間に合うか間に合わないか、くらいになるんだけど、それでもいいですか?と訊いたら、「いい」とおっしゃるので、おじゃました。ノンケーズが終わるや否や、下北沢から恵比寿まで自転車でダッシュして、着いたの、1曲目が終わるあたりでした。
普通にバンド編成での演奏&歌なんだけど、バンド感、エレクトロ感、フォーク感などが入り混じっていて、その入り混じり方がなんだかとても新鮮というか、「あ、確かに聴いたことないかも、こういうの」と思わせるものがある。メロディにも歌詞にも耳を奪われるし。
「反戦の曲をやります」と言ってから歌った「戦わないと」という曲がとても耳に残ったので、帰ってサブスクを探してみたが、なかった。新曲だったのか。他の曲をいろいろ聴いて、今のところ、バンド・サウンドの曲とエレクトロな曲に、ばっきり分かれている人であることを知った。またライブ観たい。

4月12日(日)18:30 全日本プロレス @ 後楽園ホール

この日の全日本プロレスは、年に一回の恒例行事(今回で46回目!)、『チャンピオン・カーニバル』(以下『チャンカン』)の開幕戦。全8試合のうち、『チャンカン』のリーグ戦は5試合だった。斉藤レイvs羆嵐はレイの勝ち、青柳優馬vs関本大介は関本の勝ち、タロースvs真霜拳號(以下ましもん)は大番狂わせでましもんの勝ち、鈴木秀樹vsザイオンはザイオンの勝ち、セミファイナルの綾部蓮vs斉藤ジュンは、綾部の勝ち。までは、いいのだが。
メインイベントの、潮﨑豪vs安齊勇馬。なんと、潮﨑が勝ったのだ。何が「なんと」なのかと言うと、安齊、若い(26歳)・恵まれた体格・アマレス経験に裏打ちされた強さ・そしてやたらと男前、というわけでどんどん人気が上がっており、会社的に今推すならこの人だろうな、と、全日ファン、みんな納得。という存在なので、まさか『チャンカン』初戦で負けるとは思わなかったのだった。潮﨑好きなので、うれしかったですが。

4月13日(月)19:00 おとぼけビ~バ~ @ Spotify O-EAST

この連載の前回、九州各地&東名阪ツアーの東京公演を観て書いたばかりだが、今回はまた別のツアー。ドラムのかほキッスが産休&育児でお休み、代わりにサポートでれおが入る→その状態がしばし続いた後、かほキッスが脱退、れおが正式加入することが、今年の1月に発表になった→同じタイミングで、かほキッスの最後のツアー=大阪・東京・京都の3公演のツアーを行うこともアナウンス。という、そのツアーの東京編が、この日だったわけです。先月の渋谷クラブクアトロのワンマンもソールドアウトだったが、この日のO-EASTもソールドアウト。
イギリスのおとぼけビ~バ~のレーベルは、ライブ時の、かほキッスひとりだけを撮った映像を、頻繁にインスタにアップしてきた。それが売りになる、と踏んだからだろう。そして、確かに、その映像、つい何度も観ちゃうくらいすごいので、海外での彼女の人気がとても高い理由のひとつになっている、と思う。
普通に考えて、そんな人が去ってしまうのは、バンドにとって大打撃だ。ということを、彼女のすさまじいプレイを観ながら実感した。と同時に、その大打撃をカバーできる存在=れおが身近にいた、という事実って、ほぼ奇跡だよなあ、と、改めて思う時間でもあった。
そもそも、れおは、元少年ナイフのメンバーで、その頃におとぼけビ~バ~と京都で対バンしたのがきっかけで(2013年のことです)、少年ナイフがイギリスで所属しているレーベルが、おとぼけビ~バ~の存在を知り、声をかけてきて、そこから彼女たちの海外進出が始まった──というストーリーもあるのだった。
ということも含め、このツアーでかほキッスの(おとぼけビ~バ~での)プレイを観れるのが最後であることも含め、何かいろいろ感慨深いものがありました。

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