
KAORI KISHITANI / Unlock the girls LIVE TOUR 2026
"59th SHOUT!" ~A面に恋をしたあなたへ~
2026年6月19日(金)神奈川・CLUB CITTA
久々のバンドツアー、どんなスタートになるんだろうと、勝手に予想していたのだけれど、それは、見事にはずれた。だからこそ余計にその1曲目を集中して聴き入ることになった。それは多分、岸谷の狙い通りの反応だったろうし、1曲目を終わらせて、しばし訪れた曲間の静寂を破るギター・ストロークを、それこそガツンと弾ける彼女のカッコ良さ。「これがやりたかったんじゃん」と思わず心の中でつぶやいてしまったけれど、グッと身を屈めて溜め込んだエネルギーを利用して思いきり高くジャンプするような展開に乗せられて、客席は早くも2曲目で一気に熱を帯びていった。
そして、最初のMC。今回はベースのHALNAが産休のためメイ子が代役を務めることを手短に話した後、「最後までう〜んと楽しんでいってください!」と岸谷が声をかけると、“もちろん!”という感じで会場全体の空気があらためて前のめりになっていく。それを敢えて焦らすようにYukoがタメの効いたリフを鳴らして、最新シングルの「ボディガード」が始まった。その間に岸谷がギターをいつものテレキャスターに持ち替えているのに気づいて、さっきまで弾いていたのが新しく手に入れたというレスポールなんだろうと思い当たった。“さっきの2曲目のアタマ、やっぱりその新しいギターでカッコ良く始めたかったに違いない”とあらためて思ったのだが、それはともかく、ここからの3曲はただ勢いで煽るのとはひと味違うロッキンな演奏でさらに会場の熱量をジワジワと高めていった。
そして、再びMC。ここで<A面に恋したあなたへ>というツアーのサブタイトルに込めた想いを岸谷が話し、それはそのまま次に披露する曲の紹介へとつながった。彼女は、お馴染みのあっけらかんとした調子で「黒歴史の塗り替え」なんていう表現をしたけれど、それはいわゆる青春の季節を過ぎても夢を追い続ける彼女の、しかも新しいギャルバンの仲間がいる彼女だからこその素敵なリベンジだった。しかも、続けて披露されたB面曲にその曲以上に強い反応があったところを見れば、熱心なファンはこのサブタイトルからB面曲が演奏されることを予想していたのだろう。岸谷は「A面世代」という表現を使っていたけれど、それはつまりA面/B面のあるレコードの時代から彼女の音楽を楽しんできた人たちということだ。ということは、岸谷が抱えている歴史と同じだけの時間をその人たちも抱えているということ。だから、「こんちくしょうと思った曲も59歳になった今はにこやかに歌えます」という岸谷の話を聞きながら、それぞれの黒歴史を岸谷と同じようににこやかに、あるいは相変わらず“こんちくしょう”と思いながら、思い出したりしただろう。あるいは、「こんなに衝動だけで曲を作ることは、歳を重ねた今となってはむしろ難しい」という話に、若さに任せて突っ走っていたかつての自分を懐かしく思ったかもしれない。
もっとも、この日のライブはそんなふうに過ぎ去った時間に想いを馳せるばかりではなくて、ちゃんと出来たてホヤホヤの新曲も用意されていた。どれくらい出来たてホヤホヤかと言えば、「歌詞ができたばかりでまだ覚えられていないので、歌詞カードを見ながら歌います」(岸谷)というくらい(笑)。しっかり時間を割いて説明したその歌詞のコンセプトに見合うヘヴィなロック・チューンで、作品化されたらぜひ歌詞カードを見ながら、あらためて聴きたいと思った。
ところで、その歌詞の説明の際にドラムのYuumiをイジるとYuumiがチャーミングな返しで応酬したり、アンコールのグッズ紹介のコーナーでも岸谷とYuumiのやりとりがおかしくて、なんとも仲のいい感じが印象的だったが、それは演奏にも現れていて、ボーカルとドラムを結ぶラインをバンドの背骨と言う通り、体幹のしっかりした身体でグイグイと進んでいくような演奏は昨年からもう一段深まったバンド感を感じさせた。そして、そのバンド感の深まりが「私が歌いたいのは愛に溢れた曲」と岸谷が話して披露した「marble」の歌詞世界をいっそう際立たせ、「大きな声で、みんなで歌おう」という岸谷の言葉とともに始まった「Diamonds<ダイアモンド>」はいつにも増してキラキラとした輝きを放っていた。
最後に岸谷は「遠い昔にみんなが恋したA面はこの曲かな」と言ってアンコールに応えたが、そこでこの日のライブはそういうライブだったことに気づいた。つまり、客席の一人ひとりが自分の“恋したA面曲”を心待ちにしながら、他の誰かが恋したA面曲にも想いを重ね、その向こうにある岸谷の愛と元気を受け取るライブ。岸谷がガールズとともに愛と元気を届けるツアーは、始まったばかりだ。











