有安杏果、全国6ヶ所を巡った弾き語りツアー「A Little Harmony Live 2026〜雫ノ音〜」ファイナル!初のソロコンサートから10年、止むことのない成長を見せたステージ

ライブレポート | 2026.08.07 18:00

有安杏果 弾き語りツアー「A Little Harmony Live 2026〜雫ノ音〜」
2026年7月16日(木)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO

今年4月にリリースした9年ぶりとなる2枚目のアルバム『雫ノ音(しずくのね)』を携え、7月3日の宮城公演を皮切りに、愛知、大阪、広島、福岡、東京と全国6ヶ所を巡った弾き語りツアー。初日公演は、10年前に横浜アリーナで初のソロコンサート「ココロノセンリツ 〜Feel a heartbeat〜 Vol.0」を行った日と同じ7月3日。すでに何度も書いていることなので繰り返しになってしまうが、改めて、彼女の鮮やかな成長の軌跡には強く心を動かされてしまう。10年前からダンスとヴォーカルには定評があったが、最初は楽器の演奏もできなかった彼女が、今やたった一人でステージに立ち、同期を一切使わずに、自分の歌と演奏だけで約2時間に及ぶ質の高いライブを作り上げるようになった。メロディ、歌詞、歌唱、ギター、ピアノ。彼女のシンガーソングライターとしての成長は止むことなく、ライブをするたびに新しい側面を見せてくれる。それは、この日も同じで、「いつの間に彼女はこんな演奏ができるようになったんだろう?」という驚きのあるライブだった。

開演時間になると場内がゆっくりと暗転していき、ステージ上に置かれたアコースティックギターとキーボードにスポットライトが当てられた。続いて、有安が颯爽と姿を現すと、観客からは期待に満ちた大きな拍手と歓声が上がった。アコギを抱えて歌い始めたのは、ピアノで作った「夢の途中」。手拍子が起きる中で、クールな表情で歌う有安は、ストロークの強弱だけではなく、身体全体を使ってグルーヴを生み出していく。続く、「feel a heartbeat」は横アリのオープニングナンバーで、当時はエレキギターを弾きながら歌った楽曲。この日は、「夢の途中」からは一転して柔らかな笑みを浮かべて女子エリアに近づくと、お馴染みの手拍子やシンガロングも起き、観客一人一人と目を合わせながら、心地よい一体感へと繋げた。

冒頭の2曲を終えたところで、息を切らしながら満員の場内を見渡した有安は「すごいめっちゃ人いるんだけど! ヤバい、泣きそう。……そんなハズない。まだ序盤なんやけど」と喜びの涙を流しそうになったが、すぐにタオルで涙を拭った。ファンの前では思い切り感情を出してもいいとも思うが、ライブで泣かなくなったことも、彼女のアーティストとしての成長の1つだろう。「今年の夏が終わるときに、今日のライブのことを思い出してもらえたら」という言葉から、アコギのアルペジオから始まるバード「ナツオモイ」で哀愁のこもった切ない歌声を届けると、抑制の効いた歌声が胸に迫る「ペダル」へ。胸が締め付けられるようなファルセットやハイからローへという2曲を繋いだ展開は、ヴォーカリストとしてのダイナミズムを堪能できる流れとなっていた。この日、3本目のアコギ(全部で4本だった)に替えた「Do you know」ではギターを荒々しく掻き鳴らしながら、ストローク奏法、オクターブ奏法で厚みのあるコードも響かせた。

ここで、「次の曲はみんなにピアノでやるか、ギターでやるか、決めてもらいます」と観客に呼びかけ、拍手の音の大きさでピアノに決定。有安は「ツアーは全部、ピアノでした!」と笑いながらキーボードのペダルを踏むためにブーツを脱ぎ、当日リハーサルでは念のためにアコギも弾いていたことも明かした。ガットギターの出番がなくなったのは残念だったが、「約10年前に初めて自分で作った曲で。当時、毎日すごく忙しくて、目まぐるしい日々を送っているときに、このままやと大切なものを見落としてしまいそう、でもちゃんと一つ一つ大切にしたいなという思いを込めた曲です」と語った「ハムスター」は、やはりピアノで聴きたいファンが多いのだろう。有安の力強いタッチにクラップが起き、場内は歌詞に合わせて光で満ちていくと、ピアノバラードとなった「虹む涙」へ。歌詞の言葉の1つ1つに自分の信念を乗せるかのように歌う姿には、自分の道を自分らしく歩んでいく決意と覚悟も込められていたようだった。

7月3日から11日の8日間で全国6ヶ所を回ったツアーを振り返り、「先週、ほぼ毎日、ライブやってん。強なったやろ」と笑顔を見せた彼女は、「feel a heart beat」で泣きそうになりながらも泣かなかったことに対しても、「私、だいぶ、強くなってきました」と胸を張った。そして、「もう1曲、ピアノでやります。ライブ前の緊張や葛藤を詰め込みました」という言葉の後、昨年のバレンタインデー近くに開催したピアノのみの弾き語りツアー「ピアノオト」で披露した「Prelude」では場内にミラーボールの光が回る中で、恋に落ちていく前奏のようなストーリーを展開。再び(4本目の)アコギに持ち替えた「オレンジ」(歌詞にはピアノの音が出てくる)では叙情的でノスタルジックな風景を描き、「指先の夢」では何があっても歌い続けていくんだという切実な思いをエモーショナルに歌いあげた。

この2曲は、コロナ禍となり、初のアコースティックによる弾き語りライブを始めた2021年から歌ってきているが、それ以前に完成していたというニューアルバム『雫ノ音』には未収録の楽曲。「こうやって少しずつ自分の楽曲が増えていくのが嬉しい」と話した有安は、バンドライブが決定したというお知らせのあと、今年作った新曲を持ってきたことを報告。「テーマは青春です。何かに向けて一生懸命頑張ってるのってすごく青春だなと思って。私の人生やと、小さい頃に毎日、ダンスレッスンに通っていたのも青春だと思うし、一番はももクロが大きな大きな青春なんですけど、ギターを持って全国にツアーで行ってる今も青春だと思うし」と話した後、「みんなにとっては、私が青春かな?」と照れながら語りかけると、大きな拍手と歓声が湧き上がった。「これから何かを始める人もいると思うし。色んな青春を詰め込んだ曲です」という言葉を添えて、新曲「青が鳴る」を初披露。“ユニフォーム”や“揺れるスカート”の風景から始まるミドルテンポの良質フォークソングで、青春の真っ只中にいる人はもちろん、年齢を重ねた人もいつかの青春時代を思い起こさせるような楽曲となっていた。ライブで泣かなくなったこととも繋がるが、今の有安は自身の思いをぶつけるだけでなく、聴き手が自分の感情や経験を重ねられる余白も残してくれている。これから生まれる曲たちは自らの生き方や愛し方ではなく、聞き手の生活の中にすっと入り込んでくる等身大の息吹に満ちた、ストーリー仕立ての曲も増えてくるのではないかという予感をもたらせてくれる新曲となっていた。

そして、ギターを激しく掻き鳴らし、胸の奥に閉じ込めていた思いを解き放つように歌った「遠吠え」では、テンポや間を自由自在に操りながら、ライブハウスという空間を完全に掌握。「まだまだいけるよね?」という煽りから、「Drive Drive」では観客の手拍子と、本ツアーの途中から始まったというコール&レスポンスは演奏の一部と言っていいほどのヴォリュームと熱量を帯びていった。さらに、「靴ひも」ではこのまま次のライブに一緒に連れていくような勢いで観客のテンションを引き上げ、最後の「Runaway」ではこの日一番と言っていいほど大きなクラップが打ち鳴らされ、会場が1つとなったところで、有安はステージの最前まで足を進めて満面の笑顔でギターを弾いて本編を締め括った。

アンコールではピアノの弾き語りで「ビー玉」を届けると、そのままピアノで演奏し始めたのは<涙で誘うほど 弱くはない>というラインを体現し、<窓を濡らす雫>という「雫ノ音」にも通じるフレーズが入った「LAST SCENE」だった。この曲のピアノ演奏が、この日の最大の驚きだった。イントロからスリリングでジャジーなムードはあったが、右手でコードのバッキングを鳴らしながら、左手は4ビートでベースラインを弾いていたのだ。一瞬、オケかな?と思い、有安の手元が見たくて背伸びをしてしまったほど。さらに、スキャットを繰り出しながら、全く同じメロディを弾いてみせ、演奏後にはその技術に対する感動の拍手が沸き起こっていた。

万雷の拍手喝采を受けた有安は、「私は弾いたぞ!」とガッツポーズ。「カッコいいぞ!」という声も上がる中、「めっちゃむずいって。この曲をやるのが怖くて怖くて」と心境を吐露。「10年前の自分はピアノとギターを始めたばかりだったので、その時の自分から考えたら、ちょっとどう?」とドヤ顔を見せた。そして、「初めてソロをやった横アリからちょうど10年。頑張ってきたことは全部繋がってると思うので、これからの10年もまた、10年後にドヤ顔できるようにもっともっと成長していけたらいいなと思います。これからも一緒についてきてくれたら嬉しいです」と感謝の気持ちを伝えた。「明日からもみんなが頑張れますように心を込めて歌います」という言葉から、「サクラトーン」でエールを送ると、最後はマイクを通さず、アカペラで一人一人の思いを拾い集めて確認するかのように生の歌声を届けた。「ラストにもう1曲だけ、どうしてもこの夏に歌いたい曲があるので。あの夏の日があって、今があるなと思います」と涙を堪えて語り、「ヒカリの声」では手拍子を鳴らしていた観客の手がステージに一人で立つ有安に向けられる中、彼女の<光浴びよう>というフレーズと伸びやかなロングトーンに合わせるかのように場内に光が広がっていった。全曲の演奏を終えると、笑顔で深くお辞儀をした有安。後ろの観客とも目が合うように飛び跳ねながら手を振った彼女を見送った拍手の響きは、彼女がこの10年で成し遂げてきた驚くべき成長と進化に対する感動が込められていた。

なお、有安杏果は2026年12月22日(火)にZepp DiverCity(TOKYO)にて、バンド編成によるワンマンライブ「有安杏果2026 雫ノ音」を開催する。

SET LIST

01. 夢の途中
02. feel a heartbeat
03. ナツオモイ
04. ペダル
05. Do you know
06. ハムスター
07. 虹む涙
08. Prelude
09. オレンジ
10. 指先の夢
11. 青が鳴る
12. 遠吠え
13. Drive Drive
14. 靴ひも
15. Runaway
ENCORE
16. ビー玉
17. LAST SCENE
18. サクラトーン
19. ヒカリの声

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