有安杏果、30歳の誕生日当日に約5年ぶりとなるバンド編成ライブ“サクライブ”を開催!様々なチャレンジの成果と成長が見えた特別な夜をレポート

ライブレポート | 2025.03.24 18:00

有安杏果 サクライブ 2025
2025年3月15日(土)KT Zepp Yokohama

有安杏果が自身の30回目の誕生日当日である3月15日(土)に神奈川・KT Zepp Yokohamaにて、ワンマンライブ『有安杏果 サクライブ2025』を開催した。バンド編成による“サクライブ”名義のライブはソロアーティストとして活動を再開した2019年3月に始まり、毎年春に行う恒例のライブとなる予定だったが、翌春からコロナ禍に突入し、延期や中止を余儀なくされ、2020年11月に東京・LINE CUBE SHIBUYA公演のみを開催。当時はマスク着用の上に声出しは禁止され、客席の制限もあったため、フルキャパシティでのバンドライブは2019年夏の全国ライブハウスツアー「有安杏果 Pop Step Zeppツアー」まで遡ることになる。その間に単身でのアコギやピアノでの弾き語りライブやピアノとのデュオ、ピアノトリオを従えたジャズライブなど、様々なチャレンジをしてきた有安だが、実に5年半ぶりのバンドライブであり、場内は開演前のBGMに合わせてクラップが起きるほどの期待と熱気で溢れかえっていた。

開演時間を迎えて場内が暗転すると、福原将宜(Gt)、松本ジュン(Pf)、川崎哲平(Ba)、玉田豊夢(Dr)からなるバンドメンバーが登場した。総立ちとなった観客からの温かい拍手で出迎えられたバンドメンバーがそれぞれの位置につくと、ピアノがメロディを奏で、ドラムとベースが加わり、最後にバンドマスターであるギターが音を鳴らし、5年半ぶりとなるバンドアンサンブルを提示。続いて、グループ時代のイメージカラーであるグリーンをベースにしたドレスにハイソックス、VANSのスニーカーを履いた有安がステージに現れ、アコースティックギターを抱えてスタンドマイクの前に立った。1曲目は彼女が作詞だけではなく、初めて作曲にも挑戦した、シンガーシングライターとしての始まりの曲とも言える「ハムスター」。左足でリズムをとりながらアコギをかき鳴らす有安の軽やかで実に楽しそうな歌声と手数の多いバンドアンサンブルが共鳴する中で、有安はアコギの残響音が残らないように素早くミュートして弦の鳴りを抑える仕草をするなど、楽曲全体を構築する音の細部にこだわりも感じた。

冒頭からの場内の盛り上がりに「すごい、みんな元気じゃん」と笑顔を見せた彼女が5年ぶりの開催となったバンドライブに対して、「ただいま」と挨拶すると、会場全体から凄まじい歓声と拍手が沸き起こった。「今日は楽しい1日にしたいと思っています。結構、飛ばしていくけど、みんな、ついて来てくれる?」と呼びかけた後、有安がエレキギターを弾き、ピアノのトレモロが炸裂するロックナンバー「Drive Drive」へ。観客がタオルを振り回しながら声をあげて楽曲を共有して解放感を生み出すと、シームレスで初のソロ曲「feel a heartbeat」へとつなぎ、恒例のクラップとシンガロングが発生。さらに、「Another story」ではより激しさの増したロックなサウンドで観客の高揚感を引き上げてみせた。

「なかなか夢は叶わないけれども、諦めずに頑張ろうという思いを込めて、(2021年の)弾き語りライブに向けて作った曲です」という言葉から彼女のアコースティックギターと歌声に焦点を当てた楽曲を続けた。「指先の夢」「ペダル」からドラムソロを挟み、バンドアレンジでは初披露となる、2022年の新曲「夢の途中」へ。ミニマムなアカペラからバンドアンサンブル、静から動へというダイナミックな構成のサウンドとともに、夢に向かって努力する過程での挫折や葛藤、迷いといった心の内側を吐露する繊細な歌声に惹きつけられた。

その後のMCで、「今日、30歳になりました!」と報告すると、場内は「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」の大合唱となった。「皆さんにお祝いしてもらってすごく嬉しいです。30歳もよろしくお願いします」と感謝の気持ちを伝えると、バンドメンバーと「ハタチの頃、何してた?」という思い出を語り合った。そして、グランドピアノに移動した彼女は、「初めてのサクライブでピアノで弾き語りをした曲です。ソロでこれから頑張っていくという強い思い、決意表明を込めてます」と語り、弓弾きのウッドベースに導かれた「虹む涙」と吐息で空間を埋めていく「裸」は有安のピアノ演奏にキーボードが加わるスタイルで届けられ、5人の演奏者が息を合わせるキメの多さも含めて、アレンジの更なる広がりを感じた。一方で、続く「心の旋律」はピアノバラードだが、楽器を離れて、ハンドマイクで熱唱。声が出ないという絶望的な状況に苦しめられながらも、<握ったマイクは離さない>といフレーズに辿り着く。身体を思い切り伸ばし、足を踏み鳴らしながら確かなエモーションをステージ上で解き放つ姿は圧巻で、シンガーとしての魅力がはっきりと伝わってきた。

そして、このライブで特に印象的だったのは、「私がジャズに興味を持つきっかけになった曲」と紹介された「愛されたくて」からのジャズナンバーだろう。ベースがエレキからウッドに持ち替えた「愛されたくて」ではピアノソロから引き継ぐようなスキャットによりボーカルソロを展開。「遠吠え」ではピアノとハミングでデュエットしたかと思えば、イントロからファンクジャズのような新たなアレンジが施された「LAST SCENE」の後半では、エレキギターとエレキベース、グランドピアノ、ボーカルの4声が同じメロディを歌う合奏を展開。この3曲の演奏を終えた後、バンドメンバーはガッツポーズを見せ、「みんな、頑張ってきた甲斐があったね」と充実した表情を浮かべた有安とハイタッチ。改めて、有安のライブパフォーマーとしての表現力の多彩さを堪能できる時間となっていた。

再びエレキギターを弾きながら歌った「ヒカリの声」では観客が高く掲げた手に向かって、この日1番となるロングトーンで光を届けると、ギターロック「Runaway」では“一人じゃないよ”というメッセージを真っ直ぐに伝え、ライブはクライマックスへ。本編の最後は、この時点では最新の曲である「靴ひも」だった。エレキからアコギに持ち替えた有安は「みんなの想いがうまく結ばれますように」という願いを込めて歌い、夕暮れのオレンジのような風景を引き連れる中で本編はエンデイングを迎えた。

アンコールでは、「虹む涙」とともに、2019年の「サクライブ」のために作った「サクラトーン」を優しく穏やかな表情で演奏。「私にとってライブは大切な場所です。ライブがあるから練習も頑張れる。自分が頑張る目標になってます」とライブに賭ける思いを語ると、「またみんなに会える日までコツコツ練習して頑張りたいと思いますので、30歳の有安杏果もよろしくお願いします」という言葉には大きな拍手が送られた。そして、「何気ない日々の幸せを描いた」というピアノバラード「オレンジ」を通して、会場に集まってくれた観客全員への感謝の気持ちを伝えると、ミラーボールが回った「Catch up」では突然、表情が一変したかと思いきや、まさかのダンスを披露。タイトなロングスカートではあったが、彼女が歌って踊る姿を見れるとは思ってなかった観客は沸きに沸き、嬉しすぎるサプライズとなった。歌、アコギ、エレキ、ピアノ、ジャズ。そして、1曲だがダンスまで解禁された(「TRAVEL FANTASISTA」「愛されたくて」も少しだけ踊った)。この先のライブへの期待が増さずにはいられないライブとなった。

ライブ終演後にはDI:GA ONLINE独占でバンドメンバーへのインタビューを実施。バンドメンバーの楽屋では「裸」の楽曲提供者であるシンガーソングライターの小谷美紗子さんにも遭遇。束の間ではあるが、ライブを終えたばかりの皆さんに感想を聞いた。

福原将宜(Gt)30歳の節目のライブに参加させていただけて嬉しかったです。タイトなスケジュールの中でしたが、これだけ作り込むことができて、とてもいいライブだったなと思います。
松本ジュン(Pf)すごく演奏が難しい曲が多いので、とても疲れたんですけど(笑)、お客さんの熱量の高さに助けられました。ただ、今は、杏果ちゃんの誕生日ということもあり、難しさよりも楽しんでできた実感と達成感があります。
川崎哲平(Ba)僕は最初のソロライブからベースを弾かせてもらっているので、その頃からの進化の度合いに驚いてます。歌はもちろん、ギターもピアノも上手くなっているので、これからもどれだけ進化していくのかが楽しみでしかないです。
玉田豊夢(Dr)杏果ちゃんのライブがコロナ禍で何度かできなくなって。5年ぶりのバンドのライブだったので、緊張感がすごかったんですけど、それ以上に、できなかった分の思いが溢れてきて。杏果ちゃんもバンドメンバーもお客さんも良い一体感と盛り上がりがあったなと、ライブをやりながらしみじみと感じてました。また、5年前まではバンドライブの中でピアノやギターの弾き語りをしていたんですけど、会えない期間に弾き語りライブをやってたから、めちゃくちゃスキルアップしてて。いろんなことにチャレンジするだけでなく、一つひとつを突き詰めていく姿勢をいつも感じていて。頑張れっていう思いにもなるし、僕たちも刺激や影響を受けてます。しかも、今日は誕生日でハッピーな雰囲気もあったし、濃いライブになったなと思いますね。
小谷美紗子私の自宅に個人レッスンに来た時にちょっとしたコツを教えたらすぐにマスターして。ライブ前に本人は「緊張する」って言ってたけど、本番ではとても安定してできていて。毎回、成長を見せていただいているのでめちゃくちゃ嬉しかったです。もう私なんかより全然すごいと思います!
有安杏果(Vo&Gt)無事に終えられて本当に良かったです。小さい頃から大事な日に限って風邪を引くタイプだったので…(笑)。本番当日はバタバタで、数日経ってようやく「ライブやったんだ、しかも誕生日だったんだ」と実感しました。それくらい夢中でした。

今回のライブは盛りだくさんでした。バンドライブでは初めて逆再生メドレーをやらなかった分、曲数も多くなり、カバーを入れるか迷っていたところ、豊夢さんと福原さんが「オリジナル曲だけでいこう」と提案してくれました。さらに、リハーサルでは豊夢さんが「夢の途中」の前にドラムソロを入れるアイデアを出してくれたり、私が「愛されたくて」のスキャット部分の新アレンジを弾き語りで聴かせたら、そこから曲全体のアレンジにも広がったり…。みんなで丁寧に作り上げていく過程がまさにライブならではで、嬉しい緊張感の中で仕上がっていくのが幸せでした。

以前よりもボーカリスト・リーダーとして引っ張る意識が強くなって、色々と提案したり質問できるようになった気がします。どの曲もバンドメンバーとしっかりアンサンブルを考えて演奏できたし、ジャズや弾き語り、デュオの経験がちゃんと活きたのも嬉しかったです。

良い意味で誕生日を忘れるくらいライブに集中できたのも良かったですね。久しぶりのバンドライブだったので、弾き語りでは表現できないサウンドでオリジナル曲をしっかり届けられたことが何よりでした。

生音にこだわり、誰一人欠けては成立しないライブ。みんなで一致団結してお客さんに届けられて本当に良かったです。バンドメンバー、スタッフの皆さんに心から感謝です!

SET LIST

01. ハムスター
02. Do you know
03. TRAVEL FANTASISTA
04. Drive Drive
05. feel a heartbeat
06. Another story
07. 指先の夢
08. ペダル
09. 夢の途中
10. 虹む涙
11. 裸
12. 心の旋律
13. 愛されたくて
14. 遠吠え
15. LAST SCENE
16. ヒカリの声
17. Runaway
18. 靴ひも

ENCORE
19. サクラトーン
20. オレンジ
21. Catch up

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