TOMOO、3台の鍵盤で「6月から7月の空気感」を鮮やかに描いた、FC限定ライブをレポート

ライブレポート | 2026.07.17 18:00

TOMOO OFFICIAL FAN CLUB LIVE "Itʼs YOU!" vol.4
2026年7月4日(土)昭和女子大学人見記念講堂

今秋に初のアリーナ公演を控えるTOMOOが7月4日(土)に、東京・昭和女子大学人見記念講堂にて、「TOMOO OFFICIAL FAN CLUB LIVE "Itʼs YOU!" vol.4」を開催した。
“Itʼs YOU!”はFC限定のライブ。2023年8月に吉祥寺STAR PINE'S CAFÉで“vol.0”というナンバリングでスタート。2024年3月に渋谷PLEASURE PLEASUREでvol.1、同年9月に大阪・サンケイホールブリーゼでvol.2、2025年5⽉に吉祥寺ROCK JOINT GBでvol.3と回を重ね、今回がvol.4にして、約1年ぶり5度目の開催となり、当日はFC限定での生配信も行われた。

2026年7月4日の東京の天気は曇り。最高気温は約27℃で、最低気温は20℃。野外ではなく、ホールでのライブレポートでどうしていきなり当日の天気の話を始めたのかというと、“天気”や“季節”を感じるライブだったからだ。終演後には、観客にTOMOOの手書きによるポストカードが配られた。表面には猫のイラスト、裏面にはこの日のセットリストとメッセージが書かれていた。カタツムリのイラストとともに「6月→7月なセトリでした」という言葉が記されていた。

また、この“It's YOU!”には、彼女が自宅から生配信している弾き語りのYouTubeライブの特別版という意味合いもある。ステージ奥には観葉植物やチェスト、ルームランプが置かれており、前面には左からステージキーボード、グランドピアノ、ローズピアノという音色の異なる3台の鍵盤が並んでいた。そして、開演時間の直前にTOMOO本人よる影アナが流れ始め(気づいていない人もいたかもしれない)、彼女はそのままバインダーとハンドマイクを持って、原稿を読みながらステージに姿を見せ、「まもなく開演です」と観客の方を向いて笑顔を浮かべ、ローズピアノに座った。

最初の曲は、夏の太陽が沈む夕暮れの温かさと切なさを描いた「LUCKY」。“去年とは違う夏”の到来を予感させる楽曲を歌い終えると、グランドピアノに移動し、あなたの太陽になりたいというささやかだけど切実な願いを込めた「レモン」と“太陽”にフォーカスした曲を連発。観客への贈り物としてライブでお馴染みの「Present」では、TOMOOの呼びかけで手拍子が起きたが、裏打ちのリズムが合わず、だんだんとビートが加速。「2000人は無謀だったか……」と苦笑したTOMOOは、「今までで一番大きな場所ですけど、心の中は変わらず“It’s YOU”という感じでお届けしたいと思います」と挨拶した後で「shiosai」を弾き始めるが、「違うこと考えちゃってた」と演奏をやめて、気持ちを整え直した。このラフさはFC限定ライブならではだろう。

最近は日本武道館公演や全国ホールツアーなど、大編成のバンドスタイルのライブが多かったが、この日のステージ上はTOMOOただ一人。彼女の原点とも言える鍵盤の弾き語りスタイルで、普段の彼女のままでいるような言動がとても新鮮に映った。2016年6月にインディーズからリリースした1stミニアルバム『Wanna V』のオープニングを飾っていた「shiosai」で波の音が聞こえる街に越してしまった“君”と夏が来たら海に行こうと約束し、未リリースの「冷たい花火」で雨上がりのバス停を出発。水を入れたバケツに手持ち花火を入れた瞬間の音が聞こえたような気がしたが、初恋の終わりが表現されただけで、それは空耳かもしれない。

グランドピアノから立ち上がり、ローズピアノへ移動したTOMOOは、間違えていたことに気づき、ステージピアノへ。「リリースされてない古い曲もいっぱいやります」と小さな声でつぶやくように語った後、はじまりそうではじまらない恋のもどかしさを詰め込んだ未リリースの「好きっていって」で瑞々しく伸びやかな歌声を響かせた。2ndアルバム『DEAR MYSTERIES』に収録され、先のツアーのセトリに入っていたためにこの日は演奏していない「Lullaby to my summer」「雨粒をつけたまま」も、かつてYouTubeライブで披露し、長らく音源化が待たれていた夏の雨の曲。「冷たい花火」「好きっていって」の2曲もぜひ次のアルバムで音源化してもらいたいところ。

「梅雨生まれ(6月28日)の人間として、最近は雨がちな日々で誕生日が過ぎることはあまりなかったんだけど、今年の6月は古き良き6月、梅雨らしい梅雨だった。今日は、私がイメージしている6月から7月の空気感を出来るだけやりたいと思います」

そんなMCから、「次の曲は夏の曲というわけではないけど、初夏に今日は夏くらい暑いなと思ってできた曲」という「Grapefruit Moon」で空気の重い梅雨時期の夜空に浮かぶ2つの奇妙な月を想起させると、「Super Ball」ではその2つの丸がスーパーボールとなって勢いよく弾んだかと思えば、スリリングなバラード「泳げない」では一転して、海の中へと一人沈んでいく心象風景が描かれた。

ここで、生配信を見ている視聴者のコメントに答えるリクエストコーナーに突入。タイムラグに苦戦しながらも、「17」や「あめ玉」、「ハックルベリー・フレンド」「地下鉄モグラロード」と新旧と問わず幅広いリクエストに応えた彼女は、目の前の観客に向けて「いつもこんな感じでYouTubeライブやってます」と語り、「初心を忘れないでおきたいねってことでやらせてもらいました」と続けた。

さらに、「初心といえば、私が人生で初めて、ライブらしいライブ、セットリストのあるライブをした時に何を演奏したかは流石に忘れられなくて。せっかくなので、10代の頃にライブハウスで1曲目にやった曲を聴いてもらおうかなと思います」という言葉から、未音源化の「River」へ。できるだけ飾らない心でピアノを弾こうと思うという、彼女の音楽に向かう姿勢を込めた、まさに初心にして原点の曲。2022年8月にLINE CUBE SHIBUYAで開催されたワンマンライブ「Estuary」の1曲目でもあった。River(川)から、Estuary(河口)を経て、後のPuddles(水溜り)やAnchor(碇)へと繋がっていくのだが、彼女の音楽の根底には水が循環するように、言葉も循環するという共通した考え方が流れている。蒸発した水が雲から雨となり、土に浸透して川に流れるように、自分が発した言葉もやがて形を変えて自分に返ってくる。海や川は、その水=言葉が集まる心であり、それは透明でもあるし、鏡のように反射したり、映したりすることもできる。つまり、TOMOOが雨や川や海や水の曲を歌うということは、自らの原点を見つめ直すとともに、彼女の本質を顕にすることにも通じている。

私は今どこにいるのか?と自問自答する「スコール」ではピアノのタッチの強弱で雨の勢いが増したことを見事に表現して見せると、<私はここにいる!>という意思表明に続く「ナイトウォーク」では力強い足取りで夜の真ん中を闊歩。最後に、「ここまで、今の季節なりの夏を感じてもらえてたらいいなと思ってます。夏が得意ではないけど、好きだから、夏の曲が多くて。私はあんまり外に出て行かないし、アクティヴな人間ではないし、雨に濡れるのも嫌だけど、夏の雨の曲も多くて。梅雨とか、絶妙などんよりしてる季節も悪くないなって思う。現実だけじゃなくて、私は心の中の景色も半分、現実だと思ってます。そんな季節をみんなにも共有してもらえてたらいいなと思います」と観客に呼びかけ、夏の海やお祭りを想起させる「雨でも花火に行こうよ」で今日、この日という思い出を聞き手の心に刻むと、「Ginger」ではこの日1番の大きな手拍子だけでなく、大合唱も巻き起こり、楽しく開放的な一体感を生み出した。

晴天から曇天、雨上がり、スコールと様々な心模様を歌で描いた彼女は、終演後に衣装について触れ、「この服も気に入ってる。曇りっぽいけど、爽やかでプールみたいなブルー。よく見たら、草も生えてる。今って感じ。今日の私のライブのイメージはこれです」と語り、「夏の初めをこうやってみんなと過ごせてよかった。このあとも一緒に過ごせたらいいなと思います。これからも音の中で会いましょう」と両手を広げ、手を振りながらステージを後にした。そして、冒頭でも書いたように、会場の出口では手書きのポストカードが配られた。会場を出ると、空は曇りのままだった。この日の天気予報は曇りのち雨。カバンに入っていた折り畳み傘の出番はなく、雨は翌日の日曜日に持ち越された。今年はどんな夏になるのだろうか——。

なお、TOMOOは、7月29日(水)に「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ〜ション」の主題歌「大人になったら」をリリース。また、今年11月には、神奈川・ぴあアリーナMM、大阪・大阪城ホールにて、『TOMOO Arena Tour 2026』を開催する。

SET LIST

01. LUCKY
02. レモン
03. Present
04. shiosai
05. 冷たい花火
06. 好きっていって
07. Grapefruit Moon
08. Super Ball
09. 泳げない
10. River
11. スコール
12. ナイトウォーク
13. 雨でも花火に行こうよ
14. Ginger

  • DI:GA ONLINE 10周年

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