「ゆとりくん本気の独演(奏)会」は、道なき道を進んできた彼の人生を凝縮する、オリジナリティあふれる空間に

ライブレポート | 2026.07.21 20:00

ゆとりくん本気の独演(奏)会
2026年7月18日(土)DAIKANYAMA UNIT

アパレル企業yutoriの代表取締役・ゆとりくんの、2冊目の書籍『自分の言葉で話せるようになりましょう』と2nd EP『ミラーボールを消して』のWリリースを記念してDAIKANYAMA UNITにて開催された「ゆとりくん本気の独演(奏)会」は、道なき道を進んできた彼の人生を凝縮する、オリジナリティあふれる空間だった。知性と感性を織り交ぜた語り、ジャンルレスな音楽、学生時代の音楽仲間、アパレル業や音楽を通じて得た縁で構成されたステージは、観客一人ひとりの固定観念を崩す新鮮な体験となっていた。

ゆとりくん直筆のライブタイトルロゴが大きく映し出されたステージのスクリーンを背にし、ストリートファッションに身を包んだゆとりくんが、「TAO!」と彼のお馴染みの挨拶で呼び掛けながら単身登場する。すると「今日は語りあり歌ありで、様々な角度から皆さんの感情を揺らす」と宣言し、Keynoteを使うプレゼンスタイルでトークパートへと入った。

自身の著書最新作の話題に始まり、世の中がオーディション化していること、本当の意味での正解や不正解はほとんど存在しないこと、人間を人間たらしめるものは何かという話題に続き、「自分の揺らぎや感覚、感想などをぜひ感じてほしい」と瞑想を呼び掛ける。そして「自分はどんなことが気になっているのか、自分の内なる声が聞こえてくると人間らしさを取り戻せる」「急かされる日々の中で、もう少し誰かから出てくる声を待ったり、自分自身に対してももう少し待ったらひらめくんじゃないか、生み出せるんじゃないかと自分を信じてみてもいいんじゃないかな。もっとそういう世の中になったらいいなと思っています」など、自分の感覚や心の声に傾聴する重要性を語った。

「“正解”に人生を預けすぎると、その正解に自分の人生をひっくり返されることもある。せっかくの人生、ひっくり返す側でありたいよね、と思っています」と告げると、バンドメンバーの演奏に乗せて最新EPの1曲目を飾る70sライクなロックナンバー「fashion」を歌い始めた。マイクスタンドを握りしめて言葉に熱を灯すように歌う姿は一抹の憂いを纏いつつも、満員の観客に迎えられた喜びを感じられる。続いての「スピってる」ではトラップビートに乗るユーモラスなリリックを豪快に届け、その堂々たる一挙手一投足は観客の感情を大いに掻き立てた。

タンゴのテイストを用いた「turn go」のイントロが流れると、この日1人目のゲストであるYOSHIKI EZAKIをステージに招き入れる。メランコリックかつダークな感情を綴った楽曲でありながらも、ゆとりくんもEZAKIもふたりでステージに立つ喜びを噛みしめるように、表情は非常に晴れやかだ。そこからなだれ込んだ「VintageTee☆」は無邪気かつ自然体の高揚感が生まれる。時代を切り開くようなフレッシュかつポジティブな空気が華やいだ。

EZAKIが去ると、ゆとりくんは2nd EP『ミラーボールを消して』が生まれた経緯について話し始め、同作を作るなかで抱えきれない感情は何かを生み出すエネルギーに変えるのがいちばんいいという結論に至った旨を明かした。芸術は痛みやネガティブな感情から生まれること、商売は消費者の役に立つことが、芸術は自分がいま何を思っているかが大切であることなどを述べると、「“意味のない遠回り”を許してくれるほど、東京は優しい街ではない。だけど“意味のある遠回り”だったら、巡り巡って自分が豊かになる。意味のある遠回りぐらいしていきましょう」と経験から得た人生の豊かさを説く。そして自分の痛みから生まれた音楽により観客の痛みが和らいでほしいと、少し照れくさそうに告げた。

ここからしばらく、ボーカルユニット・69(無垢)の相棒であり、ゆとりくんが大学時代に組んでいたアカペラグループにてリードボーカルを務めていたKOHEIをステージに招き、ライブを繰り広げる。ゆとりくんの痛みが生々しくしたためられた「feel real me」ではKOHEIがそれを優しく慰めるようにソフトなハイトーンボーカルを響かせる。リリックのインパクトが強い楽曲でもあるが、ライブという場ではトラックやボーカルが織りなすグルーヴィで洗練されたムードが際立ち、軽やかさが生まれていた。

ここから「junk(ey)」「Y2N」「FRANKIE」と69の楽曲をたたみ掛け、KOHEIのボーカルとゆとりくんのラップで、長きにわたる信頼関係が育むコンビネーションを発揮する。少年の悪だくみのような好奇心に富んだ躍動感や純度の高さは、フロアを心地よく揺らした。続いての「PARADOX」では曲中でアバンティーズのSoraが躍り出る。2人のコンビネーションにSoraが鋭くラップで切り込み、3人が互いのバイブスを高め合う様子は若き大人たちの青春とも言うべききらめきを放っていた。

Soraがステージを去ると、ゆとりくんは「自分を信じることが難しくても、自分を信じてくれる友達を信じることは簡単だったりもする。そんな曲を歌います」と告げ、バンドメンバー紹介を挟み「pool」を披露する。しなやかなラテンのムードがゆとりくんとKOHEIの持つナチュラルでホットな上昇志向を魅惑的に映し出し、そこからつないだ「TAO」はふたりの声に一切の迷いのない熱が宿っていた。大学時代に同じグループで活動していたふたりが、卒業後にそれぞれの道を歩み、再び音楽でつながり合い、満員のフロアの前で肩を組んで歌っている。そんなドラマに胸を震わされると同時に、この曲がふたりにとってだけでなく観客にとってもアンセムになっていることが伝わる、非常にエモーション溢れる空間ができあがった。

KOHEIがステージから去ると、ゆとりくんは「俺はサブカルチャーがめちゃくちゃ好きなのに、なぜか声がでかすぎる」という導入から、「自分が好きな世界と自分のキャラクターが合わないことってあるじゃないですか。それはすごく悲しかったり、合う人が羨ましかったりもするけれど、その“合わない”ことが自分のオリジナリティを作るきっかけになるんじゃないかと思っているんです」と切り出した。

アパレル市場で最年少上場を実現させ、それによって様々な苦悩を抱えるなどの制約を得た結果、この制約のおかげで自分自身のオリジナリティが生まれ、面白さが増していると自己分析をする。さらに「みんなも自分の制約が自分を輝かせてくれるきっかけになっていると考えると、意外と毎日が面白くなったりするんじゃないかなと思います」「僕は文化的なことも資本主義的なこともずっとやり続けて、自分だけの循環を作りたいと思います。“記号”に閉じ込められても抗えない自分の感情を見つけて、そこから何かを作り出して、記号を利用して、記号を追い越して、記号からはぐれ続けてください」と続け、ソロデビュー曲「ハグレモノ」を歌い出した。

彼が多くの功績を成し遂げたのは、仲間を信じ、一つひとつの物事に丁寧に向き合ったうえで大胆に行動に移し、尋常ではないほどの努力を欠かさなかったからに他ならない。そう痛感するほどに、歌詞に綴られた優しさと誇りを持ち合わせた凛としたメッセージが響き、言葉の一つひとつと佇まいに説得力がほとばしっていた。本編ラストは最新EPのラストを飾る「バブりたい」。カラフルなライトとキャッチーなサウンドに乗せて、大いにフロアを盛り上げた。

アンコールではまず、最近作ったという未発表の新曲「bootleg」を初披露する。ブートレグ/ブート品とは、ファッションの世界において非公式に生産された独自性のある模倣品を指しており、ヴィンテージや古着市場で取引されている。「語っているだけの段階の夢は偽物のように見えるが、それを信じ続ければブートレグのような本物になる」という意味が込められた同曲は、軽快なロックンロール。ゆとりくんの愛嬌や少年性を映し出したサウンドや、この日彼が話していた内容に通ずる歌詞は、アーティストとしての新たなフェーズを感じさせた。

そして「発表がございます!」と告げ、ソニー・ミュージック内のレーベル、Echoesに所属することを発表する。ゆとりくんは「本当に大丈夫!?」と笑いを誘いながらも、「ここからEchoesさんで歌手活動も頑張って、資本主義と文化の両方をやっていきたいと思いますので、今後とも応援よろしくお願いします」と呼びかけた。その後は観客からその場で募ったお悩み相談に答え、ラストの楽曲は恒例となる観客からの投票制で決定する。「VintageTee☆」「TAO」「バブりたい」から選ばれたのは「バブりたい」。「甘やかされ合っていきましょう!」と呼びかけてこの日を締めくくった。

仲間とともに2024年にyutoriを上場させ、2025年はその勢いにブーストをかけるために様々なメディアに出演して会社の知名度を上昇させ、それにより得た苦悩が昨年12月の69ワンマンや2nd EPへとつながり、この独演(奏)会を作り上げ、メジャーデビューという未来を切り開いた。前代未聞の経歴を持つ彼は、音楽事務所だけでなくメジャーとタッグを組み、二足の草鞋を履くなかで何を感じ、どんな展開を見せていくのか。ジャンルにとらわれず人生を音楽にするアーティスト性や、彼の人生という物語の行方に期待すると同時に、自分自身に湧き上がった思いを大切にしよう、自分の置かれている状況を面白がっていこうと健やかな気持ちに包まれる、充実感に富んだ時間となった。

SET LIST

01. fashion
02. スピってる
03. turn go feat.YOSHIKI EZAKI
04. VintageTee☆ feat.YOSHIKI EZAKI
05. feel real me feat.KOHEI
06. junk(ey) feat.KOHEI
07. Y2N feat.KOHEI
08. FRANKIE feat.KOHEI
09. PARADOX feat.KOHEI, Sora
10. pool feat.KOHEI
11. TAO feat.KOHEI
12. ハグレモノ
13. バブりたい

ENCORE
01. bootleg
02. バブりたい

公演情報

DISK GARAGE公演

Cloud Nine Fes 2026 『滴音録-Tekinroku-』

2026年9月19日(土)恵比寿ザ・ガーデンホール

【出演】アヤセミサキ / 大宮陽和 / 梟note / shallm / 栗林みな実 / IVYJCT / ファントムシータ / 夜々 / ゆとりくん

チケット発売中

INFO

ゆとりくん、ソニー・ミュージック内レーベルEchoesに所属決定!

YOASOBIやキタニタツヤ、パペットスンスンやAoooなどが所属し、今月には謎の覆面作家・雨穴も所属が発表されたことで大きな話題となっているEchoes。
ゆとりくんの音楽活動がより本格化し加速していく見込みなので注目してほしい。

  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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  • 撮影

    小林弘輔

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