兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第195回[2025年10月前半・粗品、ユニコーン、宮本浩次、羊文学、『TOKYO ISLAND』等の9本に行きました]編

コラム | 2025.11.26 15:00

イラスト:河井克夫

音楽ライターの兵庫慎司が、音楽も音楽以外も含めて自分が生で観た(時々配信も)、すべてのライブのレポを書く月二回連載の195回目=2025年10月前半編です。今回はとにかく、粗品と花火が「こんなの観たことない」ものでした。

10月1日(水)18:00 『オクノマサヒコのDJ Dinners−季節が変わる前に−』 @ 押競満寿

奥野真哉とグレートマエカワ、お忙しいふたりがそのスケジュールの合間を縫って、年に二回ぐらいかな、代々木八幡のお酒と魯肉飯の店、押競満寿にて、ポータブルアナログプレーヤーと7インチシングルを使って行っている、DJのイベント。
基本、お客さんは着席で、音楽は聴いているような聴いていないような按配で、飲んだり食ったりしゃべったりして楽しんでいる、という、グレートさんが昔から「こういうのがやりたい」とよく言っていたやつを遂に実現したのが、これです。うつみようこさんが、カウンターの中でバーテンをやっていたりもする。
昭和歌謡や80年代の洋楽ロックなどがかかっていて、とても楽しい。ミュージシャン仲間もよく遊びに来るイベントで、この日僕が行った時間には、YO-KINGとTOSHI-LOWがいた。

10月2日(木) 19:00 粗品 @ Zepp Haneda(TOKYO)

9月10日に出たセカンド・アルバム『佐々木直人』のタイミングで、雑誌BRUTUSでインタビューをした(後日ウェブにも上がりました。≫ お笑いでは伝わらない、名前のついていない感情のための音楽。粗品がパンクロックに挑む理由 )。というので、「ライブも来られます?」(レーベルのスタッフ)「あ、行きます行きます」ということで、おじゃました。10月の1ヵ月間でZepp5ヵ所を回る『粗品 全国5大都市ツアー 新世界より』の1本目。
メンバーは、ボーカル&ギター粗品、ベース藤本ひかり(ex.赤い公園)、ドラム岸波藍(ex.セプテンバーミー)。2023年11月に配信リリースした曲「宙ぶらりん」から、バンド編成で音楽制作とライブを始めて以降、ずっとこの3人だそうです。ステージでは、左が藤本ひかり、まんなかが粗品、右が岸波藍、というフォーメーションである。
音は、ファースト・アルバムもそうだったが、ザ・ブルーハーツ直系の日本のストレートなパンク・ロック。ただし、いわゆる青春パンクではない。
で、さすが粗品……と言えるほど、彼に詳しいわけではないが、他のバンドは、なかなかやらないであろうことをやっていて、とても刺激的だった。何をやっていたか、3つ書きます。
・1階のスタンディング・フロアの左側が女性専用、右側が男性専用に、ばっきり分けている。痴漢防止のためですね。お客さんの男女比が半々ぐらいだから、可能なのかもしれない。
・2〜3曲に1曲ぐらいの割合で、歌わない・演奏だけ、の曲が入る。元からインストゥルメンタルの曲なのではなく、ボーカルはオーディエンス、ということだ。もうみんな歌う歌う。
・アンコールの「毒棘スウィングノート」で、オーディエンスを三分割して、メロディも歌詞もそれぞれ違うボーカル・パートを歌ってもらう。曲が進むごとに、それらのどれかが・もしくは同時に出て来る。粗品はそれにのっかって、その3つのどれとも違うリード・ボーカルのパートを歌う──ということをやった。みんなに丁寧に教えて、しっかり練習もしてから、実行。つまり、オーディエンスが一緒に歌わないと成立しない曲をやった、ということだ。
というわけで、何かいろいろ、目からウロコでした。また観たい。アンコール以外はMCしない、というのも、よかった。

10月4日(土) 12:30 rockin’ star Carnival @ 国営ひたち海浜公園

ROCK IN JAPAN FESTIVAL(以下RIJF)、COUNTDOWN JAPAN、JAPAN JAMを企画制作しているロッキング・オンが、かつてRIJFを開催していた茨城県ひたちなか市・国営ひたち海浜公園で新しく始めた、いわゆる「音楽花火」のイベント、なのだが。
DJ和のセレクトによる楽曲に異様にぴったりシンクロした、すさまじい質とすさまじい量の花火がどんどん上がる、そして花火だけでなくステージではムービングライト(照明)とレーザーと特効(火柱)も使いまくる、それが75分間続く──という、体験したことのない、とんでもないものだった。自分が体験したことがなかっただけではなく、こんなのこれまでどこにも存在しなかったのではないか。
立って観るスタンディングゾーン(ステージの前)、立っても座ってもいいフリーゾーン(まんなかあたり)、座って観るシートゾーン(後方)の3つに、客席エリアが分けられていた。
で、スタンディングゾーンがもっとも混み合っていた。エリアの後ろに下がれば、なんぼでも座れるのに、この日の入場者の2万人のうちの半分以上が、75分の間、立ったままだった。というのは、花火大会としては異常だが、音楽フェスなら普通だ。そうか、これ、音楽フェスなのか。と、納得した。
ここに集まった2万人、「来年はもういいや」って人、いないだろうな、みんな「絶対来年も来る!」だろうな。と、思いながら帰りました。

10月5日(日) 17:00 ユニコーン @ 横浜BUNTAI/BS10プレミアム

EBIの還暦を祝うライブ「UNICORN EBI60祭『60回目のエビだっピ』」横浜BUNTAI・2デイズの2日目。というわけで主役はEBI。1曲目が「フーガ」で始まり、「黒い炎」「ペケペケ」「BLACKTIGER」「西の外れの物語」「米米米」「夢見た男」「スライム プリーズ」「君達は天使」など、EBIが書いた曲もしくはEBIがボーカルの曲が中心。EBIの詞曲でもリードボーカルでもないが、バックボーカルをやっている「パパは金持ち」なども演奏された。
本編は「バイカーズパラダイス」で終わり、アンコールはまずEBIがひとりでベース弾き語りで「水の戯れ〜ランチャのテーマ〜」を歌う。OT(奥田民生)曰く「はなわ状態」。で、最後は「大航海2020」改め「大航海2025」で締め。
とにかく主役がいきいきしていることもあり、終始爆笑と失笑に包まれた、ただただ楽しい2時間15分(ぐらい)でした。
しかし、アンコールでバースデーケーキが出て来る、というのはこの手のイベントのセオリーだが、そのケーキを、客前で、5人がかりで、あんなに真剣にいっぱい食うバンド、初めて観ました。
あ、BS10プレミアムで生中継もありました。

10月8日(水) 20:00 宮本浩次 @ 下北沢シェルター

宮本浩次の新しいプロジェクト『俺と、友だち』。この日に下北沢シェルターで宮本浩次・キタダ マキ・冨永義之の3人でのライブ(ファンクラブ限定)、そして10月27日(月)に日本武道館で、宮本浩次・名越由貴夫・奥野真哉・キタダ マキ・玉田豊夢の5人でのライブを行う、という2本。
シェルターのライブが終わった後に、宮本浩次のファンクラブサイト「H.M.」の掲載のためのインタビューを行いました。FC会員の方は、そちらをぜひ。≫ 【H.M.会員】ログインページ

10月10日(金) 19:00 羊文学 @ 日本武道館

9月15日(月祝)に大阪城ホールで始まり、ソウル・上海・北京・広州・台北・バンコクを回って来たアジア・ツアーのファイナル、日本武道館2デイズの2日目。
と言っても、このあとそのままヨーロッパ・ツアーにつながるんだけど(10月15日パリから24日ロンドンまで7本)、ご本人たち的には一区切り感が強かったようで、ライブ・パフォーマンス全体に、ファイナル感が表れている、ように感じた。最後のMCで塩塚モエカ、感極まって涙ぐんでいたし。
あと、1年前にこのバンドの大会場ワンマン=東京ガーデンシアターを観た時は、ライブの途中までステージ前にシルク・スクリーンみたいなのが下りた状態で、こんなに大きなハコなのに、メンバーを映すビジョン(画面)はなし、という仕様だった。
が、今回は、ステージ左右に巨大な縦型ビジョンが設置され、かつ、ステージ上部に円状トラスが3つ重なったでっかい照明が組まれている。この照明がすごかった。前半〜中盤〜後半で、下がったり上がったりして高さが変わるのだが、武道館の2階席からだとメンバーが見えないくらい、低くまで下がったりするのだ。
もともとステージ上が暗くて、メンバーの姿はビジョンじゃないとよく見えないんだから、2階席から直接見えなくてもいいじゃん、姿は画面で観てもらえばいい、それよりも武道館全体が──そう、ステージ上だけじゃなくてホール内全体が、ということだ──照明によってどうなるかの方が重要。というふうに、考えたのだと思う。
そうか、こんな手があるのか! と、勉強になりました、とても。考えた人、すごい。

10月11日(土)11:00 TOKYO ISLAND 2025の1日目 @ 東京・海の森公園

開催4年目&4回目にして、遂に、初めて、会場である海の森公園が完成した状態で行われた(それまでは完成前でオープン前の状態の公園を使っていた)、東京湾無人島フェス『TOKYO ISLAND』の初日。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。アップされたらリンク貼ります。
なお、初日の天候は、雨。ただし、大雨ではなく、じわじわと降り続くやつだったので、そんなにしんどい状況にはなりませんでした。

10月12日(日)11:00 TOKYO ISLAND 2025の2日目 @ 東京・海の森公園

その2日目。同じく、レポ、アップされたら貼ります。なお、2日目は晴れ。暑くも寒くもない、かなり理想的な天候だったのでは、と思う。

10月13日(月・祝)11:00 TOKYO ISLAND 2025の3日目 @ 東京・海の森公園

その3日目。この日は曇りで、風が強い日だったが、そのせいで中断等はなかった。が、終わってからきいたのだが、このフェスの大きな名物である「音楽花火」、強風のため、この日は上げることができないかも、という危険性が、かなりあったそうだ。
無事に上がってよかった。そのさまが、3日間の中でもっとも、もう大変に、感動的だったので。
レポ、アップされたら貼りますので、詳しくはそちらを。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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