川村結花「duoでデュオ vol.2」
2024年7月5日(金)duo MUSIC EXCHANGE[渋谷]
ゲスト:城 南海
シンガーソングライターの川村結花がこれまでに楽曲を提供したり、彼女自身が“会いたい”ゲストを招くライブ企画「duoでデュオ」。昨年7月に渡辺美里を招いて行われたvol.1に続く「duoでデュオvol.2」が7月5日、東京・duo MUSIC EXCHANGEで開催された。
今回のゲストは城 南海(きずき みなみ)。デビュー曲「アイツムギ」をはじめ、川村が数々の楽曲を提供してきた城とともに、この日、この場所でしか生まれない、豊かなセッションが繰り広げられた。
ライブのはじまりは、川村結花の弾き語りから。
夏の流れ星を想起させるような美しいピアノのフレーズに導かれたのは、「遠い星と近くの君」。〈僕は君を何とか元気にしたいだけなのさ〉という率直な歌詞(作詞はYO-KING)、洗練されたピアノのアレンジ、心地よいフロウが響き合う。続いては「ヒマワリ」。流麗にして力強いピアノグルーヴと切ないメロディ、〈あなたこそがわたしの/わたしの太陽なんだ〉というフレーズが広がり、瞬く間に彼女の音楽の世界に引き寄せられた。
この日の東京の最高気温は35.5℃。
「むちゃくちゃ暑い中、本当によくいらしていただきました。私も夏は苦手です。でも、そんななかにも七夕だったり、ロマンティックな事柄が多い季節でもあります」
そんなMCを挟んで届けられたのは「home」。心から安心できる“あなた”へと向けられた歌に全ての観客がしっかりと耳を傾けている。彼女の歌を受け取り、それが一人ひとりの心にある“大切な人”へとつながるーーそんな実感が確かに伝わってきた。
さらに城 南海と同郷、奄美大島出身のシンガー・中孝介に提供した「空が空」、渡辺美里への提供曲で、「NHKみんなのうた」で放送された「愛がお仕事」(作詞は川村結花、渡辺美里の共作)をセルフカバー。
抽象派のクラシックのようなフレーズを奏でるなか、城 南海がステージに登場。〈一つ願い 一つ叶え 一つ坂道を越えたとき〉というフレーズから始まったのは、「ヒカリあれ」。郷愁、切なさ、愛しさがたっぷり含まれた歌声、そして、歌に寄り添いながら、楽曲に込められた感情や風景を際立たせるピアノ。2人の声が重なる瞬間にも強く惹きつけられた。
城 南海のデビュー5周年、10周年のタイミングでも共演している2人。
「今日は来てくれてありがとう。そして、15周年おめでとう」(川村)
「ありがとうございます。『アイツムギ』ではじまり、結花さんにはいつも支えられています」(城)
という会話からも両者の“近さ”が伝わってきた。
続く「行かないで」は、〈行かないで 心はこんなに叫んでるのに〉に象徴される大人のラブソング。誰にも明かせない感情を胸に秘め、“あなた”への痛みにも似た思いを映し出すボーカリゼーションからは、歌手としてのさらなる深みを感じ取ることができた。シックなジャズの要素を色濃く反映したピアノ、楽曲の世界観に美しい陰りを加えるコーラスも素晴らしい。
記念すべきデビュー曲であり、川村結花、城 南海の出会いのきっかけとなった「アイツムギ」は、川村による海を感じるインストからはじまり、曲中では城が三味線を演奏。普遍的な魅力を備えた楽曲に新たな命が吹き込まれた。演奏前に川村は「南海ちゃんは『アイツムギ』をずっと歌ってくれていて。しかも愛でるように歌ってくれて。こんなに可愛がってもらっている子(曲)はおらへんなと思います」と話していたが、その言葉通り、一つひとつの言葉、フレーズを丁寧に紡ぎ出す城の歌声は、すべての観客の心にしっかりと刻まれたはずだ。
ラテンのテイストを取り入れた「アカツキ」の間奏ではピアノとボーカルのセッションが繰り広げられた。二人のフレーズが響き合いながら、心地よい高揚感へと結びつき、観客も手拍子で応える。そこにあったのは、まさにこの日だけの音楽だ。
ここで城はバックステージに下がり、再び川村の弾き語りへ。まずFUNKY MONKEY BABYSと共作した「あとひとつ」(作詞/作曲:FUNKY MONKEY BABYS・川村結花)。人生の深みを感じさせる歌唱は、ファンモンの熱さとはまったく違う魅力が宿っていた。
川村の祖父母が暮らしていた町工場をモチーフにした「カワムラ鉄工所」では家族のつながりの強さを描き出し、「みなさん、こんな思い出があるんじゃないかなという歌を」と紹介された「恋してた」では、吉祥寺を舞台にかつての恋愛の思い出を綴る。そして、小田和正のプロデュースによるウェディングソング「ビューティフル・デイズ」。美しく、切ないメロディとともに〈長い長い夜を越え 今たしかに誓うよ/あなたのとなりで 生きてゆこう〉というフレーズがゆったりと広がり、それはやがて大きな感動へと結びついた。
本編の最後は、「その後の『ビューティフル・デイズ』はどういう感じだろう?」というテーマで制作された未発表の楽曲「ビューティフル・モーメンツ」。ドラマティックな旋律とともに、長い月日を共にしてきた2人の姿を描き出すバラードナンバーは、現在の彼女の充実ぶりをはっきりと示していたと思う。
アンコールでは川村、城が揃ってステージに登場。1曲目は「私の父がずっと携帯の着信にしています(笑)」(城)という「夢待列車」。さらに「夜空ノムコウ」をセッションし、最後は川村の弾き語りによるライブの定番曲「乾杯の歌」でエンディングを迎えた。30周年を目前にして、シンガーソングライターとしてさらに豊かな時期を迎えつつある川村結花。今後の活動にもぜひ注目してほしい。
SET LIST
01.遠い星と近くの君
02.ヒマワリ
03.home
04.空が空
05.愛がお仕事
06.ヒカリあれ(with 城 南海)
07.行かないで(with 城 南海)
08.アイツムギ(with 城 南海)
09.アカツキ(with 城 南海)
10.あとひとつ
11.カワムラ鉄工所
12.恋してた
13.ビューティフル・デイズ
14.ビューティフル・モーメンツ
15.知らないままじゃなくてよかった
ENCORE
16.夢待列車(with 城 南海)
17.夜空ノムコウ(with 城 南海)
18.乾杯の歌