川村結花「duoでデュオ vol.1」
2023年7月14日(金) duo MUSIC EXCHANGE
シンガーソングライターの川村結花が、ゲストを迎えてお送りする「duoでデュオ vol.1」が7月14日、東京・duo MUSIC EXCHANGEにて開催。川村のオリジナル曲に加え、「あとひとつ」や「夜空ノムコウ」など提供曲のセルフカバーを披露した他、第一回目のゲストである渡辺美里と名曲「マイレボリューション」をデュエット。様々な思い出が蘇る名曲の数々と、ゲストとのウィットに富んだトーク。粋で小洒落た極上のライブに、観客は思い思いに酔いしれた。
ライブ序盤はピアノの弾き語りで川村の楽曲を堪能した。まずは、周りがどんどん大人になって行く中で、一人いつまでも夢を追いかけ続けることの尊さや悲哀を歌った「夢を続ける町」を、しっとりと歌い上げた。約28年音楽シーンに身を置く川村だが、“そんな人生もまたよし”といった風にそれを朗々と歌い上げていたのも印象的だ。
また2月にリリースされたFUNKY MONKEY BΛBY'Sの新曲「YOU」など、これまでに数多くの楽曲で共作詞作曲をして来た川村結花×FUNKY MONKEY BΛBY'Sの楽曲から、「この季節(高校野球シーズン)に歌わずしていつ歌うのか!」と前フリして、「あとひとつ」のセルフカバーを演奏した。その際には「先日ファンモンの加藤くんとメールして、『あとひとつ』で日本中を熱くしてきます!という、ものすごく暑苦しい返事が来ました」と、今も交流が続いているからこそのエピソードを披露した。
中盤、ゲストの渡辺美里が登場。実は大学生の頃に幼馴染と行った早稲田の学祭で渡辺のステージを目撃し、「あの泉谷しげるさんと対等に渡り合って歌っていてすごかった!」と、出会いのエピソードを明かした川村。一方渡辺も「川村さんがデビューした時の“あったかさみしい”というキャッチコピーを見て、“いつかご一緒するんだろうな”と薄々思っていた」と、不思議な縁を感じていたことを話した。
気心の知れた二人だけにトークも弾みまくる。「(川村さんは)あったかさみしい歌を作る人だけど、たまにどこかギラッとした、ロックでやんちゃなところがある」と渡辺が言えば、「それは河内の血だから」と返す川村。終始笑いの絶えないトークに、二人が作るのは音楽だけでなく、明るく和やかでみんなを
笑顔にする空間もそうだなと実感した。
また「こんな奇跡みたいなことが、この世には本当にあるんだよって言いたい。もしも生きている中で“何だかな〜”みたいなことがあっても、みんなにもきっとこういうことがある。あの時は考えもしなかったようなことが、必ずあるから!」と、この日の共演の気持ちをまとめて「いずれこの気持ちを曲にするから」と決着したところは実にシンガーソングライターらしい。
川村と渡辺は数多くの楽曲を共に制作しており、その中から「ココロ銀河」、昨年リリースした「愛がお仕事」、「青い鳥」の3曲と、渡辺が5月にリリースしたデュエットカバーアルバム「Face to Face 〜うたの木〜」から、キャンディーズのカバー「やさしい悪魔」を披露した。
川村の軽快なピアノに、真っ直ぐで力強い歌声を乗せた渡辺。会場には二人をはやしたてるようにクラップが広がり、楽曲を一緒に口ずさむファンも。「愛がお仕事」では「ハートを送って!」と呼びかけ、手でハートマークを作ってステージに掲げたファン。MCでは楽曲を制作した時のエピソードとして、渡辺が「この数年、思うように仕事ができなかったり、会いたい人に会えなかったりした、そんな思いを込めて作った」と話した。
また「やさしい悪魔」は、「三人で歌う曲だけど、二人でも十分悪魔度は高いだろう」と話して会場を爆笑させた渡辺。キャンディーズの大ファンだったという川村は、渡辺から同曲のデュエットの誘いを受け、椅子から転げ落ちるほど驚いたという話も。ホンキートンク調のピアノアレンジという意外性と共に、巧みなハーモニーを交えながらブルージーに歌い上げた二人。そこからは、自由に楽しく遊ぶような同曲の制作現場の様子がうかがい知れた。
ライブ後半は、SMAPに提供した「夜空ノムコウ」のセルフカバー、クラシックのイタリア歌曲からイメージが広がって制作したしたという「pietà, pietà, pietà!」などを演奏した他、亡き祖父母との思い出を歌った「カワムラ鉄工所」。自分が自分らしくいられる場所を歌った「home」といった、心に訴えかけてくる川村の名曲も披露された。人はみんな何かしらの寂しさを抱えていて、普段はそれを胸の奥にしまいこんで日常生活を送っているもの。川村の歌には、そんな固く閉じた心の鍵をたやすく開けてしまう力がある。今は会えなくなってしまった人との時間、大切な誰かとの思い出、思い出せば涙が溢れ出てしまいそうな思い。静かに開けられた扉からは、みんなの様々な思いが堰を切ったように溢れ出し、切なくも愛おしい気持ちが会場に溢れかえった。
アンコールでは川村のリクエストに応え、「じゃあ暑気払いということで」と、渡辺の代表曲「My Revolution」をデュエットで披露した。〈さよならSweet Pain 頬づえついていた夜は 昨日で終わるよ〉という、聞き慣れたフレーズが心地よく耳に飛び込み、会場には観客のクラップと一緒に口ずさむ歌声が響く。「川村さんのピアノで新しいMy Revolutionになりました」と渡辺。コロナ禍を経て街に活気が戻り始めた昨今、今この瞬間に聴いた「My Revolution」は、今という時代の中で未来に向けた一歩を踏み出す人のための応援歌といった風に受け取ることができた。そんな新しい使命を帯びた「My Revolution」には、割れんばかりの拍手と歓声が送られた。
向かい合ってがっつりと手を取り合い、「未来にちゃんと残るものを作りたい」とお互いの意思を確認し合った川村結花と渡辺美里。想像していた以上の深みと新しい発見、そして感動があった「duoでデュオ」。「忘れられない最高の夜になりました」との川村の言葉に、会場にいた誰もが「いやいやいや、こちらこそですよ!」と本心で思ったことだろう。「次は誰だろう?」。早くもvol.2のゲストが気になってしまった。
SET LIST
01.夢を続ける町
02.後半もお楽しみに
03.エチュード
04.あとひとつ
05.ビューティフル・デイズ
06.ココロ銀河
07.愛がお仕事
08.やさしい悪魔
09.青い鳥
10.夜空ノムコウ
11.pietà, pietà, pietà!
12.カワムラ鉄工所
13.home
14.知らないままじゃなくてよかった
15.いっぽんみち
ENCORE
01. My Revolution
02. 乾杯のうた
03. 五線紙とペン