昨年11月から4か月連続で配信リリースされた「Storyteller」シリーズの楽曲(「Storyteller」「senseitoseito」「Virtualistic Summer」「STARLIGHT」)、TVアニメ「虫かぶり姫」エンディングテーマ「革表紙」を含む全10曲を収録。“本”をモチーフに掲げ、10の物語を堪能できる作品に仕上がっている。
さらに11月から12月にかけて東名阪ワンマンツアー「主人公を訪ねて」を開催。本作『魔法を聴く人』の制作プロセス、ツアーへの意気込みなどについて聞いた。
そうですね。スタートは、ちょっとイレギュラーな形だったんです。今年の2月から5月にかけてツアーを開催したんですが、そのときに提案したのが、配信シングルを続けてリリースして、AIで描いたイラストを使ったジャケット、MVを作るというアイデアだったんですよ。それは予定外のことだったんですが、振り返ってみると「そのときに必要なストーリーが起きるんだな」という感じがあって。たとえば喉の手術もそう。手術する前はめちゃくちゃ悩みましたけど、今、まったく声も枯れていないし、歌い方も変わってないんです。俯瞰してみると、「あのタイミングで手術を受けてなかったら、自分の人生はひどいことになっていたな」と。今回のアルバムも最高のスタートというわけではなかったんですけど、出来上がってみると「素晴らしい作品になった」と思っているし、めちゃくちゃ納得していますね。
そうですね。「Storyteller」という楽曲がアルバムの軸になっているんですけど、起承転結がないと面白味が少ないというか。山も谷もない凪のような人生を望む人もいると思いますけど、僕はそうじゃないし、山も谷も生まれやすい人生だなって(笑)。本気で音楽をやってると、信じられないようなことを体験できるんですよ。「こんな気持ちになるんだ?」「こんな景色になるんだ?」という、全身の細胞が震えるような経験を何度もしてきて。嫌なこともいっぱいあったんですけどね。バンドのメンバーとかにも「おまえの人生、なんでそんなトラブルばっかりなの?」と言われるくらいなんですけど(笑)、その一方で、とんでもない幸せも得られる。なのでバランスが取れているんだと思います。
それ以上ですね。まず僕は「音楽は魔法である」と思っていることを伝えなくちゃいけないという気持ちが強くて。エンタメとして音楽をやっている人もいて、それはそれでいいと思うんですけど、僕自身はアートとして音楽をやっているんです。それは本当に魔法だし、僕の中では「息を吸わないと生きていけないよね」と同じくらいの感覚なんですよ。それは今回のアルバムにも出ているし、この先も自分がやるべきことなのかなと。
この曲はE.S.E.さんという方に作曲、編曲をお願いして。僕は歌詞を書いたのですが、路上ライブで北海道を回っていたときに、札幌の街を歩きまわりながら、汗だくになって歌詞を考えてました(笑)。テーマは“バンド”ですね。
そうですね。この曲はあるバンドマンを主人公にしているんですけど、その人を通して、バンドというものの楽しさや大変さ、実態みたいなものを描けたらなと。バンドが出てくるマンガや映画がありますけど、どれも僕にとっては少しキレイな物語なんですよね(笑)。ある程度ファンタジーにしないとたくさんの人に観てもらえないからだと思うんですが、いつも「多くのバンドってそんなもんじゃないな」と思ってしまって。メンバーとは家族よりも長い時間を過ごすし、「いやだな」も越えて、一緒にいるのが当たり前になっていく。ドラマなんて起きないし、“ぶつかり合った後に奇跡みたいな曲ができる”ってこともないんですよ(笑)。音楽を続けるってこういうことなんだって、曲を通してちょっとでも感じてもらえたらいいなと。
「senseitoseito」はタナカ零さんに作っていただいたんです。「Virtualistic Summer」「STARLIGHT」もそうなんですが、「Storyteller」シリーズは作家の方に「あなたの好きなように、自由に作ってください」とお伝えしていたんです。「senseitoseito」も自分で絶対に書かない曲だし、歌うのは大変なんですけど(笑)、すごくいい曲になったと思っていて。「senseitoseito」というタイトルにも深い意味が込められているんですが、じつは“先生と生徒”ではないんです。ただ、僕は『家庭教室』という小説も書いているし、アルバイトで家庭教師をやっていたことも公表しているので、ファンのみなさんは「senseitoseito」と聞くと“先生と生徒”を想像することもあるんじゃないかなと。
そうですね。これは本当に偶然なんですけど、以前、自分が教えていた子が引きこもってしまって。親御さんから連絡をいただいて、久しぶりに会いにいったんですよ。その子の部屋の窓を“コンコン”ってやったら、部屋に入れてくれて。でも、引きこもってる理由は複雑だし、すぐに解決できるような話ではない。どうしようかなと思って、車で移動して、星を見に行ったんです。車のなかでその子が「先生、前も“星が好き”って言ってたよね。変わってない」なんて言い出して。その経験もあったので、完全に“先生と生徒”の歌詞になりましたね。
そうですね……。さっきも言ったんですけど、僕の人生は山あり谷ありで。ここ数年も本当にいろんなことがあったんです。もちろん音楽は大好きだし、人生をかけてやっているんだけど、自分が生きていたい世界と現実の世界のギャップがすごすぎて。そのことはずっと悩んでいたんですけど、それがさらにひどくなってたんですよね。でも、誕生日にファンの方々から、あるプレゼントをいただいて。それを見たときにめちゃくちゃ感動したんです。「こんなにも自分の楽曲を愛してくれてるんだな」と実感したし、ファンのみなさんへの感謝を改めて感じて。その後に書いたのが「singer.song.writers.(alpinist.)」なんです。
星を見るために山に登ったときの経験ですね。ファンの方々がくれたプレゼントが星に関するものだったから、しっかり星を見てから歌詞を書こうと思って。結局、天気が良くなくて見られなかったのですが、そのときの思いも込めたかったので、曲名に(alpinist.)を入れました。
補うどころか、「これだけでいい」という感じです。それくらい大きな出来事でしたね、自分にとっては。
イラストレーターの“みっ君”さんにお願いしたんですけど、僕からは「こういう思いで作ったアルバムです」「曲ごとに物語があって、『Storyteller』という曲が表紙の役割です」とだけお伝えして、あとは全部お任せしました。こっちから「こうしてください」というのはおこがましいと思っていて。自分は音楽家、ミュージシャンなので、ジャケットやアートワークは絵師の方、デザイナーの方にお任せしたくて。ミュージックビデオもまったく同じ考え方ですね。
考察のしようがないくらい、わかりやすいツアータイトルですよね(笑)。「音楽という魔法を聴いてくれたあなたのところに、僕が訪ねていきますね」というだけなので。すべてのタイトルにしっかり意味を込めているんですけど、今回はめちゃくちゃシンプルです。
そうですね。紆余曲折を経て、本当にいいアルバムが出来たし、気持ちよくツアーに行けそうだなと。3か所だけのツアーなんですけど、それもまたストーリーじゃないかなって思ってますね。
PRESENT
サイン色紙を2名様に
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