女王蜂主催対バンライヴ「蜜蜂ナイト3 ~私が売る春、僕は青い春~」
2017年10月12日(木)LIQUIDROOM
ゲスト:SUPER BEAVER
TEXT:兵庫慎司
PHOTO:西槇太一
女王蜂の対バン企画『蜜蜂ナイト』シーズン3の4本目、場所はこのイベントのホームグラウンド(と言っていいと思う、もう)リキッドルームで、今回のゲストはSUPER BEAVER。当日朝「我々のツアー中でございますが、出たかったので出ます」とボーカル渋谷龍太はツイートしていた。
まずSUPER BEAVER。4人がステージに出て、ドラム藤原“29才”広明がキックを踏み始めるとそれに合わせてハンドクラップが起きるも、それがどんどん速くなっていってキックのスピードを追い越してしまうという、つんのめり気味なほど熱いオーディエンスの期待の中に、ギター柳沢亮太とベース上杉研太が加わって1曲目「27」がスタート、たちどころにさらなる熱狂にフロアが包まれる。「初めての方もそうでない方も、真正面から、一対一でぶつかれますように」という渋谷の言葉から始まった「歓びの明日に」のドラマチックなメロディで、その温度がさらに上がっていく。
「やっと女王蜂とツーマンできてます!」
「俺はね、華がある人たちが好きなのよ。女王蜂って華しかないじゃない?」
という言葉をはさみ、「まずはあなたのお手を拝借、よろしくお願いします」とハンドクラップを要請してそれにのっかってアカペラで「美しい日」を歌い始め、続く「irony」では渋谷のあおりのうまさと、跳ねるようなシャッフルのリズムに、女王蜂ファンもどんどん巻き込まれていく(誰が女王蜂ファンなのかがわかりやすいのです、手にジュリ扇持っているので)。
「正攻法」後半のファスト・ビートでさらに踊らせ(ギター柳沢亮太「騒げー!」と絶叫)、「人として」で重たくて真摯で切実なメッセージを届け、「残すところ我々あと2曲でございますけれども、全員の手、見せてもらっていいですか!」と掌を掲げさせて「青い春」を歌う。ラストは「女王蜂をひきずり出すためのシンガロングを聴かせてください! さっきの100倍聴かせてください」と、フロアをいっぱいの歌声で満たしてから「秘密」になだれ込んだ。全8曲、40分弱が10分くらいに感じる、まさに駆け抜けるようなステージだった。
そして女王蜂。いつものようにルリちゃん、やしちゃん、ひばりくん、サポート・キーボードのみーちゃんの順でお立ち台に上がってあいさつ、いつものように逆光ライトがステージから放たれる中「ヴィーナス」のインストでスタート、しかしアヴちゃんが現れるなりさっき演奏されたばかりのSUPER BEAVER「秘密」を歌い始め、たちどころにフロアが掲げられたジュリ扇で埋め尽くされるのが、「いつものように」じゃないこの『蜜蜂ナイト』の特色。
で、そこからもすごかった。「秘密」を ワンコーラスで終えて演奏がブレイク、「どうもこんばんは女王蜂です!」とおなじみの挨拶をあのドスの効いた声でアヴちゃんが発するや「ヴィーナス」に突入、そしてそのまま7曲目の「失楽園」までノンストップ。
ダンス・ビート響きっぱなし、踊らせっぱなし、フロアがジュリ扇で埋まりっぱなし。「金星」のイントロのピアノで大歓声が上がってみんないっそう弾けるように踊り出したり、超ヘヴィな歌詞の「売春」ではAメロでフロアがシーンと固まってサビでバアッとジュリ扇が上がったり、「失楽園」ではアヴちゃんがあおる前から「Where is paradise?」のシンガロングが起こったり──と、オーディエンスみんな身も心も完全に音楽に乗っ取られている、かつ1曲ごとに正しい反応を返してくるさまも、なんだかすごい。
……って、いや、音楽にどう反応しようが聴く側の自由なんだから、本来は「正しい」なんてないんだけど、お祭り騒ぎみたいに盛り上がるだけじゃなくて、曲を自分なりに理解してリアクションを返している、ひとりひとりの深いところに曲が突き刺さっている感じがこの場にいると伝わってくるもんで、ついそういうことを書きたくなるのでした。
「対バンでバラードをやるのは、心を開く行為なので。でも、今日はできるかなと思って」と、アヴちゃん、ラストに「雛市」をぶちかまし、オーディエンスを凍りつかせてからステージを下りた。
そしてアンコールでは、SUPER BEAVERとの関係を説明。昨年暮の『COUNTDOWN JAPAN』のステージのあとに、渋谷龍太が「ライブすごいかっこいいですね」と話しかけてきてくれて、自分も彼らのステージを観に行って、後日会ってお茶した、酒も飲まずにすごい長時間話した、お店にとってはイヤな客だったと思う、とのことでした。
「かっこいいなと思うバンドには、かっこいいお客が付いてるんやな、と『蜜蜂ナイト3』でわかりました」「渋谷くん、『女王蜂はヒリヒリする、出て来たら空気がピリッとする』って言ってくれる」という言葉に続いてアヴちゃん、「最後に1曲バラードを。ヒリヒリするかどうかはわかりませんけど、ぶっ刺しにいきます!」と、このバンドのファースト・インパクト曲「告げ口」を歌い、ステージをしめくくった。ステージを去る時に「次は『売旬』しようね。ありがとうございました、女王蜂でした」という言葉を残した。
8月6日『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』、8月8日東京キネマ倶楽部、9月14日ここリキッドルームで『蜜蜂ナイト3』の2本目、そして今日──と、ここのところ頻繁に女王蜂のライブを観せてもらっているが、本当に、1本ごとに、どんどんすごくなっている。
で、アヴちゃん、何かもう、異世界から来た人みたいな、我々と同じように東京に住んでいて普通にスーパーとかで買い物したりしているとは思えないようなカリスマ性を、どんどん身につけつつある。宇宙人のような。妖精のような。悪魔のような。天使のような。アニメやゲームのキャラクターのような。
以前インタビューした時に、「あたしの将来の夢のひとつが格げーのキャラになること」と言っていたのを思い出した、観ていて。もうステージの上でそんなふうになりつつあるじゃないか! と。
そのインタビュー、こちらです。
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