THE MODS×THE COLTS「LITTLE SCARFACE FESTA 2017」
2017年3月30日(木) 赤坂BLITZ
TEXT:横山シンスケ
PHOTO:-朋-
今回のツアータイトルにもある「SCARFACE」とは、モッズが1991年に作った「SCARFACE RECORDS」というレーベル名で、コルツやジャックナイフなど、モッズの後輩にあたるバンド達がモッズとともにそのスカーフェイスから作品をリリースをしていた。
今はもう無いし、今も活動を続けるバンドもモッズとコルツだけになってしまったが、僕ら古くからのモッズファンにとっては、モッズがメジャーレーベルから独立し、武道館ライブやいくつものリリース、そしてこのスカーフェイスの仲間達との「SCARFACE NITE TOUR」など、凄くアグレッシブに活動をしていた時期なので、今もとても印象に残っている。
ここ数年のモッズとコルツのボーカル・KOZZY IWAKAWA(岩川浩二)との深い交流と、両バンドにとっても「SCARFACE NITE TOUR」から25周年という節目もあったのだろう。「SCARFACE NITE TOUR」が「LITTLE SCARFACE FESTA」として突如復活し、この3月にツアーが行われた。そのツアー最終公演の赤坂BLITZを観に行った。
ホールに入るなり、当時のスカーフェイスを思い起こさせるデザインのバックドロップが目に入り、いきなりグッときてしまった。そうか、あれからもう25年も経つのか。
開演前に森山達也プロデュースによる若手バンド、LUV-ENDERSがフロントアクトとして登場。この後ライブ中のMCで森山が「(自分達のような)こういうロックをもっと色んな人に届けたい」と言っていたが、森山自身のその思いと、そんな自分達のロックを次の世代にもつなげていきたいという思いできっと起用したのだろう。とってもチャーミングなロックンロールを聴かせてくれた。
そしていよいよ開演。コルツのライブがお馴染み「LIFE IS A CIRCUS」からスタート。
色んなロックバンドに必殺のオープニングナンバーというのがあるが、コルツのこの曲を超える「ライブの始まり」「お祭り騒ぎの始まり」に適したゴキゲンなナンバーはない。強面のお客さんも多いフロアだが、みんなの顔が瞬く間に笑顔に変わった。
コルツは今回のモッズとのスプリットCDのナンバーや11年振りとなるニューアルバムに収録されたモッズのカバー曲「ブルースに溢れて」などをどんどん披露。集まったお客さんもみんなとても楽しそうだ。ライブが進む中、隣のオールドパンクファッションに身を包んだ男性客二人がコルツの服装を帽子から靴まで、くまなくチェックトークしていたのが微笑ましかった。そうなのだ。25年前のスカーフェイスツアーのドキュメント映像はDVD化されていて当時の様子が今もわかるが、昔からスカーフェイス系のライブ会場はバンドメンバー同士も集まったお客さん同士も、伊達男たちの真剣なオシャレの競い合い、互いのファッションチェックの戦場でもあったのだ。
あのオシャレで粋がった不良達はみんな今どうしているだろう。きっと今は服装も見た目も変われども、この中に沢山いるんだろうな。そんなスカーフェイスの懐かし事に思いをはせながらライブを楽しんだ。
コルツは「銀行強盗」で恒例の札束の雨を会場に降らせ、最後に「NIGERO」で大盛り上がりし、終了した。
そしてセットチェンジを経て、ギャング風SEが流れる中ついにモッズが登場。
いきなり36年前のデビューアルバム収録曲「ONE MORE TRY」からスタート。オールドファンのボルテージがアガり大合唱となる。去年、森山のケガによるライブ中止からの野音での復活やツアーの再開など、本当に色んな事があったので、また今ここで再び元気に歌う森山の姿を見る事ができるのが何よりも嬉しかった。
しかし、そんな安堵な雰囲気を吹き飛ばすように、2曲目に初期の最も早いナンバーのひとつでもある「ご・め・ん・だ・ぜ」が始まると、突如会場の空気は張り詰め、危険な匂いが充満した。これだ。やっぱこれなのだ。僕にとってのモッズのライブの最大の魅力はやはりこのスリリングなロックンロールの空気感なのだ。ほかのアーティストはみんな年齢に応じて落ち着いた曲とスローなパフォーマンスに変わっていくが、モッズは36年も経ち、ケガで何度かのストップまでしても、今もその安全な道を選ぼうとしない。36年前に初めてモッズのライブを見た時に感じたあの「ヤバい感じ」のままだ。僕らは今もそれが忘れられなくて、今でもそれを感じたくて、モッズのライブに通い続けているのだ。
「ご・め・ん・だ・ぜ」が終わり、森山がマイクに向かい挨拶のMCをしようとした時、客席から自然発生でハッピーバースデーの大合唱が巻き起こった。そう、この日は森山の61歳の誕生日でもあったのだ。
森山は照れながら「今まで何回か客席からバースデーを送られた事がありましたが、今回が一番ヒドイです(笑)」とおどけてそれに応え、お客さんからも笑いと祝福の歓声が広がった。
さっき「大人になる前にくたばってしまった方がましさ」と歌った森山はこの日61歳になったのだ。
立て続けにデビュー当時の2曲を聞いた後だったので、それはモッズを見続けてきた自分にとってもなんだか不思議な光景であり、胸にくるものがあった。
ライブは続く。途中、森山はギターを外し、ライブで恒例の赤いエドワードジャケットを羽織り、軽快なスカダンスナンバー「スカでぶっ飛ばせ」を披露。この曲もそうだが、去年の復活の野音から森山はギターを外して歌う曲が多くなった。しかも、それが全部凄くイイ。マイク1本になると、あらためて森山の声と歌の素晴らしさが際立ち、ひとりの素晴らしいボーカリストであるという事を再認識する。この曲でも昨年ケガで休止してたとは思えないほど踊りまくりながらガンガンに歌っていて驚いたが、こういう風に、36年目にして今後もモッズのライブはまだまだ新たな展開や進化をとげていくのだと思うと本当にわくわくした。
前記したようにMCで森山は自分達のようなロックバンドへの思いやコルツへの感謝、今後こういう形でもまたライブをやってみたいという事を語り、そして「GOOD FELLOWS」を歌いだした。
“何もかも全てうまくいかない” “俺達は同じ夢を分けあった” “どうせゼロから全て始まった”・・・。
この夜の「GOOD FELLOWS」は本当に泣けた。
森山は自分達とコルツと、そしてここに集まった僕達の為に今回この曲を選んだのだと思った。きっと今回のこのツアーのテーマ曲なんだと思った。
コルツも今まで何度かの活動休止や色んな困難がありながらもバンドは続き、今日ここにいる。モッズは去年どころか、もう困難だらけの36年だが、今もここにいる。そして僕らも、それぞれ今まで色んな事があり、いま色んなものを抱えているが、この二つのバンドを観る為に集まり、今もここにいる。
ここにいる全員が傷顔(スカーフェイス)の仲間達(グッドフェローズ)なんだと思った。
そんなみんなが今もこうやって集まり、一緒にライブを楽しめているという事は、本当に貴重で、何ものにも代えがたい、大切な瞬間なんだと思った。
本編が終わり、アンコールではモッズとコルツが合体し、「I WANT YOU BABY,TONIGHT」「BLACK DICE」というモッズの珍しいダンサブルなナンバーにより、突如として大所帯バンド(ベースの北里は最後にこの夜急遽キーボードをプレイした)によるファンキーなライブショーが繰広げられ、パーティーのような雰囲気でライブは終了した。
最高に楽しいライブパーティーだった。
この夜、ライブの帰り道。場所が赤坂なので、仕事帰りの沢山のサラリーマン達と、僕らライブ帰りのリーゼントで革ジャンのオールドパンクス達は地下鉄のホームで重なった。その重なったサラリーマン達より、僕達の方がもはや年上だったりもするのだ。
僕は少し苦笑いし、「TWO PUNKS」を口ずさみながら一緒に押し合いへし合い地下鉄にもぐった。
THE MODS×THE COLTS
渋谷の東京カルチャーカルチャー店長・プロデューサー。その前10年間くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。36年前のモッズデビュー当時から今もTHE MODSのライブに通い、いつもかなり前の方で泣きながら踊ってる。東京カルチャーカルチャー http://tcc.nifty.com/ 横山シンスケ ツイッター:https://twitter.com/shinsuke4586