THE MODS 森山達也、突然のアクシデントでツアー延期・中止。復帰に向けた現在の日々、その想いをすべて語る。

インタビュー | 2016.06.23 18:00

THE MODS

インタビュー/宮本英夫
LIVE PHOTO/斉藤ユーリ

35周年を迎えたTHE MODSに降りかかった突然の試練。3月にニューアルバム『HAIL MARY』をリリースし、Round1とRound2に分かれたツアー開始直後、森山達也の膝が悲鳴を上げてツアーは中断。Round1は延期、Round2は中止という思わぬ展開に、ファンの心は揺れた。森ヤンは大丈夫か?その声に応えるため、このインタビューは6月半ば、THE MODSの事務所ロッカホリックにて行われた。森山は部屋に入ると、彼を待っていたプロサッカー選手の山田卓也としばし会談。膝のリハビリに使う道具を持参したらしい。意外に思える交友関係だが、それはこれから語られる物語の伏線だった。4月10日以降のツアー中断から現在、そして10月15日の日比谷野外大音楽堂を目指す思いについて、森山達也がすべて語る。

4月8日、名古屋のライブのアンコールで、ジャンプした時に痛みが走ったんですよ。

すいませんね。自分のアレで、いろいろとご迷惑かけてしまって。自分もガッカリなんですけども。

——そんな。僕らの使命は、ファンの方に、正確に状況を伝えることしかないです。森山さんに一体何が起きたのか。

4月8日、名古屋のライブのアンコールで、ジャンプした時に痛みが走ったんですよ。あれ?っと思ったけど、その時はアドレナリンも出てるし、まあ大丈夫だろうと。次の日、神戸に移動だったんですけど、これはいつもと違う痛みだなと。ちょっとひねったぐらいだと思ってたら、そうじゃなくて、歩くのも辛い感じ。で、さっきいたヤマタクが奈良のフットボールチームにいるから、神戸のホテルから電話して、“神戸に知り合いのトレーナーはいないか”と聞いたんですよ。そしたら奈良から来てくれた、トレーナーと一緒に。

——ありがたいですね。

ホテルの部屋でいろいろやってもらったら、だいぶ楽になった。それで神戸のライブはできたんですよ。痛かったけど、なんとかできた。でも次の日は痛みが倍になって、東京に戻ったら、もう歩ける状態じゃなかった。それで病院に行ったら、膝の半月板が損傷していて、軟骨も炎症を起こしていると。これは時間がかかるから、ツアーやばいね、ということになったんだけど。

——そういう経緯があって、今このお話をしているのは6月の半ば。今はどんな感じですか。

それからずっと、リハビリ&筋トレをやってるんですけど。たぶん年齢のこともあって、若い人に比べると治りも遅いし、長く積み重ねてきた消耗もあるし。今はワンランク上の筋トレを始めてるけど、きついですね。地獄ですよ、俺には(苦笑)。でもそれをしないと、またすぐに戻ってしまうから。膝をプロテクトするために筋肉をつけないと、じーっとしてるライブはできても、今までみたいなああいうライブは難しいですね、って先生も言うし。じゃあできるだけ筋力をつけて、人前である程度のパフォーマンスができるぐらいまではなんとか回復させましょうと。今はその途中です。

——はい。

本当は、7月からのツアーに間に合わせてもらえませんか?って言ってたんですけど。ギリギリできたとしても、すぐにぶり返す。そうなるともっと長くなるから、そこは森山さんの選択で決めてくださいと。そう言われるとね。一発勝負ならいいけど、長いツアーだから。最低限、何か月かツアーができるところまでは回復しないと、という状況ですね。

——患部を治しつつ、周りの筋肉をつけてプロテクトする。二つを同時にやってるということですか。

最初はとりあえず安静しかなくて、炎症が収まるのを待ってたんだけど。そうすると筋力が弱る。だから、立って膝に負担をかけるのは良くないから、寝て筋トレをやる。重力をかけたり、衝撃を与えるのはダメだから、寝ながらガンガン足を使う筋トレをしてる。もうスポーツ選手ですよ。わかりやすく言えば。

——完全にそうですね。アスリートのリハビリ。

スポーツ・トレーナーの人だから、余計にね。でも、なんたって60だからね。先生ちょっと勘弁してくださいよ、っていうのはある(笑)。それぐらいしないとダメみたい。ただあまりやりすぎると、どこかに歪みが出るから、いい感覚でやっていかないと。そういう意味では、どうしても時間がかかるんですね。中途半端な形でツアーに出るのは、俺にとっても良くないし、ファンにとっても良くないんじゃないかな?と思って、決断したということです。

——それしかなかったと思います。

とりあえず日にちがあいたぶん、少しでも良くしていこうというのが、今日現在の感じですね。

——すでに2か月ほどたちますけど、日々少しずつ前進している感じですか。

それが難しくてね。一番ひどい時と比べれば、全然楽になってるけど。最初はまったく歩けなかったんですよ、痛すぎて。で、無理して歩いてたわけ。筋力つけたいと思って。そしたら今度は腰に来て、これは良くないなと思って、歩きのトレーニングは避けて、足だけの筋トレに切り替えた。だいぶ楽にはなってきたんだけど、何て言うか、三歩進んで二歩下がるみたいな感じですね。調子いい時と調子悪い時が交互に来る感じもあるし。ただ先生は、焦っていっぱいトレーニングしたって意味ないからって言うんですよ。俺はもう、信頼してやり続けるしかないかなと思ってます。

——このまま回復していって、最初の目標は、10月15日の日比谷野音ですよね。

自分も、そこまでには絶対回復させようと思ってます。よっぽど変な、俺がしくじったらわからないけど、とりあえずそこにはたどりつくはずです。

——病の話ばかりしたくはないんですけど、最近、続いてしまいましたね。あれは去年、おととしでしたか。脊髄終糸症候群をやったのは。

そういうのも、悪かったんだと思う。ある程度安静にしなきゃいけない病気だったから、そこで筋肉が多少落ちた。それでツアーをやったから、余計に負担が膝にかかって、というのはあるみたい。今は膝の治療はもちろんなんだけど、背中、股関節、そのあたりをバランスよく鍛えないといけない。そこをなんとかしないと、すべての負担が膝に来てるから、腰の使い方や股関節の使い方をアジャストしないとダメですよと。だからきついんですよ、トレーニングが(笑)。結局スポーツ選手と同じことですね。

——まさに。

60歳で、30何年もギターぶらさげて同じ姿勢でやってるから、筋肉が固まってるんですよ。そこを楽にさせるために、先生も困ってるみたい。これはかなりしつこいですねって。でもできる限りのことをやっていくしかないですね。大丈夫です。

——大丈夫です。森山さんのその笑顔を、ちゃんと伝えます。

精神的には、全然大丈夫。一時期すげぇ落ち込んだ時期もあったけど、それは乗り越えました。仕方ないんだから、もう前向きに。

“今日は座ってやります”と言ったら、ファンはきっと許してくれると思う。でも、それは見せちゃダメだと俺は思ってる。

——ただ、この間のアルバム『HAIL MARY』、本当に瑞々しい、純粋なロックンロール・アルバムだったので。その曲を今ライブで伝えられないのは、もったいないとは正直思いますけど。

俺もすごく悔しい。あのアルバムのツアーが、3か所でしかできなかったわけだから。その時は落ち込んだね、さすがに。やっぱりアルバムを出した時は、自分たちも一番フレッシュで、“歌いたい、伝えたい”と思っている一番のピークだから、その時にツアーをやるのが一番いいわけで。そこで一瞬テンションが下がったのは、すごく残念だったなと思います。

THE MODS TOUR 2016 “HAIL MARY” Round 1 2016.4.1(金)CLUB CITTA’

THE MODS TOUR 2016 “HAIL MARY” Round 1 2016.4.1(金)CLUB CITTA’

——あらためて、あのアルバムは、どんな思いで作った作品ですか。

たぶん俺の中で、35周年というのがひとつあって。35周年ということ自体が俺にとってはびっくりだし、ひょっとしたら40年はないかもわからない。これから先、わかんないじゃん?病気とか、ヘタしたら死ぬとか、そういうことがあってもおかしくない年齢に来てるのは事実だから。そう考えたら、絶対に思いが伝わるアルバムを作りたいよね、というのはありましたね。今までもちろん、精一杯思いを伝えようと思って作ってきたけど、それとはまたちょっと違う、35周年という、ここまで来たんだというものを、自分たちのストーリーという意味では、自然に考えましたね。そういう思いを持ったアルバムにはなったと思います。

——まさに。時代を撃つ姿勢はずっと変わらないですけど、自分たちのことを歌ってる感じは強くしました。

そこは、できたんじゃないかと。だから余計に、ツアーで聴かせたいと思ってたんですけどね。

——これは半分ジョークですけども、たとえば足を骨折したアクセル・ローズが椅子に座ってライブをやったりとか。ああいうのを森山さんで想像したんですけど、無理でしたね。ちょっと想像がつかなくて。

キャラもあるしね。座ってやることも一瞬考えたけど、ツアーに関しては、このアルバムを伝えたいわけだから。そのためには、座ってどうのこうのじゃない。もう一つイヤなのは、お客さんに“大丈夫か?”と思って見られることは、決して健全じゃないというか。お金を払って、楽しもうとして来てるわけだから、最低限度のことができないと、プロとしてステージに出ちゃダメだと思うのね。そこに納得するまでは出れないよね、ということが自分の中にあるから。もしも“足が悪いから勘弁してね。今日は座ってやります”と言ったら、ファンはきっと許してくれると思う。でも、そうじゃない。それは見せちゃダメだと俺は思ってる。人それぞれだとは思うけど。俺が80のブルースマンなら全然いいけどね(笑)。でも今現在はそうじゃないから。いつも通りに近いTHE MODSの形として、できるところまでは持っていきたいよね。

あの現象の中にみんながいたことは、今でも鮮明に覚えてる。

——そして、10月15日の野音。こういう状況になる前には、選曲や演出について、ある程度考えていましたか。

ツアーをRound1、Round2とやって、野音へつなげるために、ある程度の曲順は考えてたんだけど。これで全部白紙ですね(笑)。だからある意味、新作はもちろんやるとして、ベスト・オブ・ベストで行くしかないかなと思うよね。そうなるんじゃないかな。古いのばっかりというわけじゃなく。そういう想いで野音をやれたらいいのかなということを、今現在は思ってます。

——THE MODSにとっての野音というのは、あのデビュー2年目の、いまだに語り継がれる“雨の野音”もそうですし、ファンにとっても思い出深い場所です。森山さんにとって野音とは、どんな場所ですか。

最初の野音は、俺たちがデビューしたばかりで、夢中でやってた頃ですよ。東京行ってロンドン行って、わけわかんないまま進んできて、1年たった時に野音をやったら、あの感じでしょう。雨が降ったこともあったけど、お客さんのあの熱気。俺も歌いながら、一緒に体験してしまったというか、ステージの上も下も関係なしに、あの現象の中にみんながいたことは、今でも鮮明に覚えてる。それから野音をやるたびに、ずっと引きずってきたよね。いい意味でも悪い意味でも。そういう意味で、特別な場所になってしまったという感じはあります。個人的には、まだ明るい時からだんだん夜になっていく、自然な照明がたまんないよね。ビルは見えるし、森っぽいし、いい意味のアンバランスさがあって、やっててすごく気持ちいい。音的な部分ではやりにくいところもあるんだけど、空気感はいいですね。

——あれは6月でしたか。

そうです。今考えたら、梅雨だもんね(笑)。単純にデビューアルバムが6月21日だったから、1年目の記念ということでやったと思うんだけど、よりによって梅雨かよというのは、今思うとありますよ。だから最初の頃の野音は、けっこう雨降りましたね。最近わりと救われてるけど。

——今回は10月。雨の心配は少ないと思います。

野音が改装になるとか、そういう噂も聞いたんで、だったらその前にやりたいというのもあったし。個人的な思い入れとしても、今やっておきたいという気持ちはありましたね。

——無理しないで、無理してください。変な言い方ですけど。

その通りなんですよ(笑)。無理しないで無理してください、だよね。焦らないで焦ったらいいって、トレーナーにも言われてますよ。とりあえず、精神的に追い込まれないようにしてくださいねって。それは大丈夫だから、何でも言ってくださいといって、やってます。

——職業病と言ったらいいのか。ずっとつきあうことになるかもしれないので、しっかり治してほしいです。待ってます。

長年ギターをぶらさげて、ガキの頃からやってるけど、決していい姿勢じゃないですからね。ギターは重いし、腰をやられたり、首をやられたりする人も多いから。俺も結局は腰や股関節に問題があるって言われたしね。だから、ミック・ジャガーですよ、変な人は。あれだけスマートで、あれだけ動けて。

——あれは普通じゃないですね。

異常ですよ。何年か前にストーンズが来た時に、見に行ったけど。ちょうど脊髄をやってた時だけど、どうしても見たいから行ったら、めちゃめちゃ元気でさ。脱帽したね、ミック・ジャガーには。ロックというシーンで、すごいパフォーマ―だなと思った。一つのお手本ではあるんですよ。あの人たちがあれだけやれてるんだから、俺たちもあの年齢まではロール(転がる)できるんだ、というのはあるよね。目指すところが、とは思ってるんだけど、やっぱりミックはおかしい。

——参考にならない(笑)

ならないね(笑)。あれを俺たちがやると、つぶれちゃうよ。あれがプロなんだろうけど、ずば抜けてるよね。お金のかけ方もあるだろうし、特にミック・ジャガーは自分大好きだから、ナルシストであることの良さもあると思うよ。ある意味、目標にはしてるよね。俺たちがガキの頃に好きだったアーティストで、亡くなる人もだんだん出てきたし、それが自然だしね。俺も今できることをやっておかないと、後悔だけはしたくないから。どうせぶっ壊れるなら、納得してぶっ壊れたいというのはありますよ。年齢を重ねると、音楽とは関係ない部分でのいろんなものが出てくるから。人間として普通に弱ってくる部分もあるから、それをちゃんと受け入れつつ、音楽をやっていければいいのかなって、今は思ってますね。

THE MODS LIVE "HAIL MARY" Final

2016年10月15日(土) 日比谷野外大音楽堂
17:30 開場 / 18:30 開演
7月2日(土) SALE

GET TICKET先行抽選受付

お申し込みはこちら
受付対象公演:10月15日(土) 日比谷野外大音楽堂
受付期間:受付中〜6月27日(月) 13:00

「THE MODS フィルムコンサート」

「THE MODS TOUR 2016 "HAIL MARY" Round 2」の中止に伴い、開催を予定していた各会場にて、2011年~2015年の未発表映像を中心としたフィルムコンサートを開催。
7月1日(金)新横浜NEW SIDE BEACH!!
7月3日(日)名古屋DIAMOND HALL
7月8日(金)札幌PENNY LANE 24
7月10日(日)山形ミュージック昭和
7月14日(木)長野CLUB JUNK BOX
7月16日(土)金沢EIGHT HALL
7月18日(月・祝)大阪BIG CAT
7月29日(金)東京LIQUIDROOM
8月5日(金)山口Shunan RISING HALL
8月7日(日)長崎DRUM Be-7
8月20日(土)埼玉HEAVEN'S ROCkさいたま新都心VJ-3
8月26日(金)広島CLUB QUATTRO
8月28日(日)福岡DRUM LOGOS

※各公演のチケットをお持ちのお客様は、そのチケットで当日入場可能。チケット記載の会場でのみ有効。
詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。

THE MODS TOUR 2016 "HAIL MARY” Round 1

2016年11月28日(月) TSUTAYA O-EAST
7月2日(土)SALE
※5月8日(日)TSUTAYA O-EASTの延期公演。

※情報は急遽変更となる場合がございます。最新情報はオフィシャルサイトにてご確認下さい。

関連リンク

RELEASE

◆Brand-new Album「HAIL MARY」
(ROCKAHOLIC Inc.)
NOW ON SALE

◆ALBUM&DVD BOX「RATTLESNAKE BOX THE MODS Tracks in Antinos Years」
(Sony Music Direct (Japan) Inc. )
7月27日(水)発売予定!

◆DVD BOX「THE MODS Triple Footage in SCARFACE Years」
(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
8月24日(水)発売!